第134話 ミリルの恋愛相談
返事が貰えないシーラス先生について、ボクなりに思案してみた。
ゲームの知識を思い出してシーラス先生がどんな人だったのか考えてみれば、シーラス先生はダンと結ばれたとき初心だった。
女性として、男性との交際経験がないという描写があった気がする。
歳を重ねても男性と付き合ったことがない。
それは警戒心も強くなるはずだ。
心に鍵をかけているのでは?
ボクが発した言葉は重荷になって避けられている?
これは断られる前兆なのか?
これは仮説だ。
200年の時を男女の付き合をしないで過ごしたシーラス先生。男の悪いところを聞いて、耳年増になって警戒を強く持っているかもしれない。
ボクとしては目的は契約だが、警戒を解くために好意が必要となるなら、かなり厄介なことになる。
ボクの言い方がシーラス先生の警戒心を強くしたのか?身も心も欲しいと言うのではなく、言わさなければならなかった!
これからボクはどうすればいい?
道は二つだ。
このまま勘違いを押し切って、いっそ恋人として落としてしまうか…… ダンが得るはずだった力をボクが使う。別にダンはシーラス先生との契約がなくても、ヒロインを守るようになれば覚醒は出来る。
ただ、現在でも四人の女性と付き合っているボクとしては、シーラス先生も加われば大変なことになる。
それは後々めんどうなことになりそうなので避けたい。
では、もう一つの道……
正直に契約だけしたいと伝える。
恋愛ではありませんと言ってしまうか?
なんだろう……
凄い怖いことになりそうな気がする。
誰かに相談したい。
カリンやアカリに対して、他の女性のことを聞くのは申し訳ない。
リンシャンやエリーナは、貴族という立場でシーラス先生の心情を考えられるとは思えない。
リベラ、ミリル、ルビーの三人が思い浮かぶが……
リベラは最近、自分の研究を始めたので忙しい。
ボクの世話をクウが従者になってしてくれるようになったので、魔法の勉強に力を入れている。
アカリもリベラに協力しているので、近々二人の共同研究で面白い発明が見れるかもしれない。
ルビーとミリルだが…… ルビーに恋愛のことを聞くのは何か違うような気がする。
「えっと…… 私はなぜ呼ばれたのでしょうか?」
クウに給仕をしてもらいながらミリルと向かい合って座る。ミリルと二人で話をするのは初めてかもしれない。
「少し話したいことがあってな。ミリルは、好きでもない男に言い寄られたときはどうするんだ?」
自分でも何故、そんな質問をしたのかわからない。
シーラス先生がボクを嫌っていて、言い寄られて嫌がっていると考えているのかもしれない。
「えっ!どうしんたんですか?変な女がリューク様に何にかしたんですか?それなら私に任せてください。
すぐに抹殺してきます」
「抹殺って!!!いや、そんな奴はいないぞ。心配しなくていい」
「そうですか、それならばいいのですが……
本当に私に好きでもない男が言い寄って来たらですが…… 正直に興味がありませんと素直にお伝えします」
まぁ当たり前だな。
好きでもない男から言い寄られて喜ぶ女性はいない。
では、今から考えるとシーラス先生は保留にしている間は嫌ってはいないのか?
「それでは逆に気になる相手から、身も心もほしいと言われたらどうだ?」
ボクが発言した言葉の意味が、ミリルの反応で分かるかも知れない。
「それは…… 例えばリューク様が私の身も心も欲しいと?」
「あっいや、まぁ例え話だ」
「わかりました。それでは例え話としてお伝えします。すぐにでも捧げます」
「はっ?」
「あっ、すみません。驚かないで聞いてください。
私はリューク様に助けられた過去があります。
ですが、それを差し引いてもリューク様は男性として魅力的なので喜んで捧げたいと思ったからです」
ミリルだからではないと前置きして話し出した。
「リューク様」
「うん?どうかしたのか?」
「リューク様はご自身の魅力にお気づきですか?」
「えっ?ボクの魅力?」
外見は、容姿は昔から頑張ってきたからそれなりに自信はある。
魔法力、勉強、実技では、上位に食い込む程度には出来ているので優秀には見えるだろう。
内面はどうか?基本的にやる気がなくて横柄な態度を取る。自分勝手で我儘。
もしも、ボクが女だったらめんどうなので、絶対に嫌なタイプだと思うだろうな。
「う~外見はいいが、中身がめんどうそうかな?」
「ふふ、ご自身のことを面倒と客観視する人は珍しいと思いますよ。ですが、私からお伝えできることがあるとすれば、男性としてとても魅力的だと思います」
「どの辺がそう思うんだ?」
自分ではわからない魅力が女性の視点からならあるということだろうか?
「容姿や家柄、学歴や魔力に関してはリューク様も言われた外見という意味で魅力的に映ると思います」
「まぁそうだな」
それはボクでもわかる範囲だ。
「では、内面ではどうか?先ほどリューク様ご自身で言われましたが、めんどうと……」
「ああ、ボクは【怠惰】だからね」
「はい。ですが女性はお世話をしてあげたい生き物なのです。自分がいないと生きていけない。
自分を必要としてくれる殿方を支えたい。
そのために自らの身を投げ打ってもいいと考えるのです」
めんどうな男の世話をしたい?それは随分と酔狂なことだ。女性は優しいんだな。
「これは優しさではありません」
「そうなのか?」
「はい。女性に世話を焼かれるとは、女性を必要としているということです。
それは…… 男性が自分を魅力的に感じているということが立証されます。そして自分自身の価値を証明していることになるのです」
ミリルとは思えない饒舌な語りに圧倒されてしまう。
瞳も鬼気迫るものがあり、飲み込まれてしまいそうだ。
「はっ!申し訳ございません。少し熱くなってしまいました」
ミリルの言動はさておき、男女の付き合いを知らないシーラス先生に、身も心も捧げてくれと告げた言葉を訳すと……
【お前が必要だからボクの物になれ】と言っているようなものなのか?
これは取り返しが付かないのかもしれない。
「ありがとうミリル。頭の整理が出来たようだ」
「お役に立てましたでしょうか?」
「ああ、ミリルの頭脳はボクにとって役に立っているよ」
「お褒めに預かり光栄です」
「今後も相談事があったら、頼んでもいいか?」
「もちろんです。リューク様のためなら!」
「ありがとう」
嫁たちに相談出来ないことを相談出来る異性がいるのはありがたいな。
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