第40話 ヒロインたちの会話 その3
《Sideミリル》
私の名前はミリルと申します。
リューク様、カリン様のお陰で元気な身体、勉強出来る環境を得たお陰で特待生としてアレシダス王立学園に入学することができました。
学費を心配することなく勉強に専念できています。
いつかリューク様やカリン様に恩返しが出来るようになりたいと思っています。
勉強が好きな私は現在、医療についての勉強をすることにしました。
弟の病気はリューク様の回復魔法でなければ治せなかったと、施設長に言われました。
もしも、リューク様のような方が側にいなければ、弟は助かりませんでした。
命の恩人であるお二人がご病気で困ったとき、医師としてお力になりたい。そう思うようになりました。
医療を勉強して、お二人だけでなく、弟のような困った人、苦しむ人に医療を提供出来るようになりたい。
今の私の目標は医師になることです。
ですが、今の私は少しふて腐れています。
恩人であり、憧れの人であるリューク様と同じ0クラスになれたときは心から喜びました。
同じチームとして発表されたときなど、部屋に帰ってからは飛び上がって喜びました。
早速カリン様の下へ向かって、リューク様のお世話をする許可をもらったほどです。
チームで行動する間はリューク様のお世話係の役目を、リベラちゃんに代わって勤めることもお受けすることができました。
それなのに……課外授業が始まってから、リンシャン様ばかりリューク様と話してズルいです。
ずっと、リューク様のことを嫌っていたはずなのに、ルビーちゃんに負けてからリューク様のことを目で追っているんです。
その気持ちはわかります……リューク様を見ているだけで癒やされますから。
見た目が良いのはもちろんですが、優しさを知り……眠そうな瞳を見て……やる気のない態度に癒やされ……全てがほっこりとしてしまって……ハァ~好き。
それなのにリンシャン様が話をするから私は話すことができません。
リューク様が出してくださった天幕でも、休憩している間、ずっと何か話しかけているので話が出来なくて悲しいです。
そんなときリューク様が私を見ました!!!私の出番です。
「リンシャン様、見張りは不要です」
「はっ?」
「リューク様は、寝ている間も常時魔法を発動できるそうなのです。
ですから、寝ている間も魔物は天幕の周囲30メートルに近づけば寝てしまうので問題ありません」
何度か、ダンジョンをご一緒しているときに教えていただきました。
ふふ、私偉いです。リューク様のお役に立てました。
リンシャン様の相手をしなくてよくなったリューク様はすぐに寝息を立て始めました。
寝ているお姿も素敵です……ハァー好き。
「こいつ!もう寝たのか?クソ」
リューク様が寝てしまったので、私は今日一日の鬱憤を発散することにしました。
相手は公爵家の方です。私なんかが話しかけることも本当はダメな人です。
ですが、ここは学園で……対等な立場だと、自分を奮い立たせます。
「姫様!」
「なっ、なんだ。どうしてミリルが私を姫様と呼ぶ?」
「私の出身はマーシャル領です。姫様のことは知っていますので」
「そっ、そうなのか?ミリルはマーシャル領だったのか!」
同郷に出会えて嬉しそうにする姫様に、私はズイッと一歩踏み出す。
「なっ、なんだ?」
「どういうおつもりですか?」
「だから何がだ?」
「この間までリューク様のことをお嫌いでしたよね?」
「おっ、おい。寝ているといっても本人がいる前だぞ」
慌てる姫様は怪しいです。
「リューク様は一度寝てしまうと一定時間は起きないそうです」
「そうなのか?」
「はい。ただ、防御システム?が働くから、敵意を向けたり、攻撃するような動作をしたら撃退されると言われていました」
「なんだそれは?!それでは達人レベルではないか!」
「そこまでは知りません。そんなことはどうでもいいんです!姫様のお気持ちをお聞かせください!」
自分がこんなにも強気で話ができるなど思いもしませんでした。
リューク様のことになると負けるわけにはいきません。
「いや、あの……気持ちと言われても……ハァーそうだな。自分でもわかっていなかった。だけど、整理するためにもいいかもしれない」
「何にゃ?話す気になったかにゃ」
それまで私と姫様の様子を見ていたルビーちゃんが会話に参加してきました。
「ああ、同じチームなんだ。まずはお前達に言うべきだな。その前に……今まで……すまなかった」
突然、姫様が頭を下げられました。
領主様のご息女であり、貴族のリンシャン・ソード・マーシャル様が平民に頭を下げるなど、とんでもないことです。
「あっ、頭をお上げください!」
「いいや。まずは謝罪を受け入れてほしい」
「何を謝罪しているのかにゃ?」
慌てる私の横でルビーちゃんが問いかけました。
「今までの私の態度だ。傲慢で自分勝手だったと思う」
「そうかにゃ?そう思うならルビーはその謝罪を受け入れるにゃ」
「わっ、私も謝罪を受け入れます」
「そうか……よかった。お前達はチームだ。仲良くしてもらえたら嬉しい。どうか私のことはリンシャンと呼んでくれ」
ズルいです。普段、偉そうにしている人が態度を変えるなんて、なんだかこっちが悪者みたいです。
「友に叱られたんだ……誰かに聞いた話を信じるんじゃなく、自分で見たことを信じろって……だから、私は奴を見ている。ここ数日は奴の行動を見ていた」
リンシャン様はどのような答えを出したんだろう?
「奴は呆れるぐらい無害だった」
肩を落とすように息を吐くリンシャン様。
その姿が面白くて、私はルビーちゃんと目を合わせて笑ってしまいました。
「ふふふふふ」
「にゃはははは」
「なっ、なんだ?なんで笑うんだ」
「無害って……なんですか?なんだか悪い人の方がよかったみたいに聞こえますよ」
私の発言にリンシャン様は困ったような顔をする。
「そうなのかもしれない。私にとっては悪い奴でいてくれた方が敵としてラクだった。無害であるが故に……戸惑ってしまう」
「お前は本当にバカな奴にゃ」
「なっ!」
「無害ならいいにゃ。リューク様は強いにゃ。メスは強い男を好むものにゃ。お前はリューク様を見張っているうちに気になり出したにゃ」
「ちょっ、ちょっと待て!誰があんな奴を好きに、それとこれは別だ!わっ、私はダンのことが……」
リンシャン様は、ダン君が好きなのかな?それならライバルじゃないから良いけど。
「ハァ~気づいてないにゃ?教室にいるときも、ダンジョンにいるときも……お前はダンよりもリューク様を見てるにゃ。それに私は好きとは言ってないにゃ。好感を持って気になるっていっただけにゃ」
ええええ!!リンシャン様がリューク様を!!!でも、リューク様はリンシャン様のことをめんどうだとよく言っているので大丈夫かな?
「むむむ、ハァ~、私も分からないんだ。
こういうことは初めてだからな。ダンに対しては確かに好感を持っている。
父上からは、いつかはダンを婿としてもらうと言われていたんだ。私はダンと結婚するって思ってきた。
だが、ダンは学園に来てから自分のことに夢中で、エリーナやリベラと魔法ばかりで私の相手をしなくなった。
リュークはなんだかんだと言っても、私の相手をしてくれているから……今日だって、嫌そうな顔をしているのにずっと話してくれて……」
なっ、なんだこいつ!めっちゃ乙女やないかい!
「ミリル、顔が崩壊してるにゃ!落ち着くにゃ」
男勝りなリンシャン様の乙女変化……これは絶対にリューク様に見せてはいけない!!!私の任務はリンシャン様からリューク様を守ることだ。
必ずやり遂げて見せますカリン様!!リベラちゃん!!!
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