第277話 王国剣帝杯 20

《side実況解説》


《実況》「王国剣帝杯第二回戦第三試合へ向かいたいと思います。一回戦の攻防とは正反対のように、二回戦があまりにもあっけなく終わってしまったので時間に余裕ができました」

《解説》「決勝リーグに残った者で、ここまでの差が出るとは意外でしたね」

《実況》「それほどの強者を誰が倒すのか?! それともそのまま優勝してしまうのか! 今後の展開も楽しみですね。それでは抽選をしていきます!一人目はこいつだ!流浪の剣士フリー!!!」

《解説》「全てが謎に包まれたローブを纏った戦士は、ここでもその強さを見せつけるのか?!」

《実況》「それでは続けて、二人目の挑戦者です! 吟遊詩人ソレイユ!!!」

《解説》「これは、意外な組み合わせですね!」


 控えの間が開いて二人の人物が現れる。


 全試合をフードを纏ったまま姿を見せないで戦い続けている流浪の剣士フリー。

 対して、麗しき踊り子の衣装を見に纏い、笛を武器にここまで勝ち上がってきた吟遊詩人ソレイユ。


《実況》「それでは王国剣帝杯決勝リーグ第二回戦第三試合を開始します!」


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《sideリューク》


 ボクが駒を引いたことで一本道に、ウィルの兵士が並んでいた。


「次のターンで私の兵士たちが、バル様の陣地に傾れ込みます。次のターンまで牛歩は継続していますので、兵士でも十分にバル様の脅威になり得るでしょう」


 一本道の手前まで領土を増やしたことで、リソースを開始時に5得られる。

 これまでの保有しているリソースと合わせて10になる。


「現在、次のターンに私が使用できるリソースは六つ。ですから、私が動かせる駒は六つということになります。対してバル様が現在所有するリソースは十。駒は十三も存在しているので、全てを逃すことはできません。さてさて、どうするおつもりですかな?」


 ウィルは勝ちを確信したように笑みを浮かべて、ボクを煽るような言葉を吐く。ゲームとは面白いものだ。その人の本質を表している。これほど、心が正直になれる物はない。


 ギャンブルに負けて取り返そうとする者。

 名誉をかけて、勝つまでやめない者。

 相手を煽り見下す者。


 そのような者たちは総じて、熱くなりやすい。


「そうだね。一先ず陣形を整えることにするよ」


 ボクは騎士を三つ、一本道の出口へと配置した。

 さらに、工作兵の特殊カードを伏せた。


「私から奪った騎士を配置して悪あがきですか? それに伏せカードとは面白いことをなさいますね」


 ボクがターンエンドを伝えると、ウィルは意外そうな顔をする。


「伏せカードはあまり使われないのかい?」

「一部では使っている者もおりますが、正当な方法ではありませんな。私は使ったことがありません」

「そう? 案外使えると思うよ」

「そうですな。バル様は最初から配置などもなされない。邪道なことをたくさんされておりますので、それも一つの戦法なのでしょう」

 

 ボクの戦法が気に食わないのか、ウィルは眉を顰めている。


「そうだね。話は変わるけど、ウィルは潜伏やスパイ、裏工作なんて言葉はどう思う?」

「そうですな。卑怯者のすることかと?」

「ほう」

「確かに戦いとは、戦う前に決着がついている方がいい。ですが、そのための仕掛けは華麗にして大胆でなければなりません」

「つまりは?」

「つまりは、この戦場のように私が駒を使うのなら、一気に攻め入る必要があると思います。相手の指揮官を倒すつもりで、一気にです」


 そう言ってウィルは兵士の駒を掴んで一本道を抜けて騎士へ攻撃を仕掛けた。


「バル様、三すくみで確かに騎士はダイスを二つ振ることはできます。ですが、兵士は一つのダイスで六が最大。対して、バル様の騎士はダイスを二つ振っても、一〜三までしか認められない。四〜六の無効です。さて、確率はバル様の方が遥に難しいかと」

「そうだね。ここは運に任せるよ」


 ボクとウィルと同時にダイスを振った。


 ウィルは五。ボク三+三=六が出る。


「なっ!」

「おや? どうやら運はボクの方が良かったようだね。どちらも認められる数字が出てくれたよ」

「まっ、まぐれは続きませんぞ。もう一度」


 二体目の兵士が一本道から抜けて騎士に挑む。


 今度はウィルが一。ボクは一+二=三だった。


「くっ! 今のは私のダイスが悪うございました。今度こそ」


 三体目の兵士が騎士に挑む。


 ウィル四。ボクは一+三=四が出て同点。


「同点の場合は?」

「三すくみの関係で兵士の負けでございます」

「やったね。運がいい」


 三体目の兵士を倒して、ウィルも負けられないと判断したようだ。

 弓兵を持って一本道を抜ける。


「今度こそ!」

「トラップカード発動」

「なっ!」

「落とし穴。このカードが発動した時、その場にいた駒は倒れされたことになる。また、その駒以降、このターンはその場を通った駒は同じように倒れたことになる」

「どっ、どうして最初の兵士で使われなかったのですか?!」

「だって、兵士なら騎士で勝てる可能性があるけど、弓兵は絶対に勝てないでしょ? それに三体の兵士を奪った後に発動した方が、リソースが得だしね」


 ボクは相手のターンで四つの駒を倒して一気にリソースを手に入れた。


 さらに相手の進軍を止めて、リソースを二まで削ったことで特殊カードも使えない。特殊カードを使うためにはリソースを五つ消費する必要があるのだから。


「どうするの?」

「くっ! ターンエンドです」

「そう。ならボクのターンだね。二ターンが終わったから牛歩の効果は切れた。ダイスは通常に戻り。魔導士の特殊カードを発動。罠解除」

「なっ!」


 ボクは自分で置いた落とし穴の罠を撤去して、一本道に残るウィルの兵士をボクの騎士で排除していく。


 ウィルの陣地には、残っていた指揮官を含めた11体の駒がある。


 ボクはターン開始時に得る五のリソースと、兵士と弓兵を倒して得た四つのリソース。さらに元々残していた二つのリソースを合わせて、合計十一のリソースを使うことができる。


 魔導士の特殊カードで五を消費。

 騎士一を動かして、リソースを一消費する。

 兵士一を倒して、リソース一をゲット。

 騎士二を動かして、リソースを一消費する。

 兵士二を倒して、リソース一をゲット。

 騎士三を動かして、リソース一を消費する。

 兵士三を倒して、リソース一をゲット。

 兵士一を動かして、リソース一を消費する。

 弓兵一を倒して、リソース一をゲット。

 兵士二を動かして、リソース一を消費する。

 魔導士を倒して、リソース一をゲット。

 兵士三を動かして、リソースを一消費する。

 商人を倒して、リソース一をゲット。

 兵士四を動かして、リソースを一消費する。 

 工作員を倒して、リソース一をゲット。

 

 届く範囲の相手の駒を倒して、ボクの手元には十三のリソースが残る。


「残ったのは指揮官一体、兵士二体、回復士一体だね。特殊カードを使えるから、伏せておくよ。ターンエンド」


 ウィルの陣地に大きく切り込み。

 伏せカードをしてターンエンドを口にする。


 ウィルが言っていた。

 

 一気に攻め滅ぼす戦法を、カウンターで決めたボクは深々と椅子に座り直した。

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