第151話 エリーナ様、こんなところで何を?

《sideアンナ》


 またまた私は危機を感じております。


 リューク様から確かにお恵みを頂きました。

 それは、エリーナ様を成長されることに繋がったと思っております。

 しかし、エリーナ様の性格を変えることには繋がっておりません。


 どんどん素敵に成られていくリューク様の周りには女性が増えています。

 エリーナ様は、リューク様に与えられることが当たり前と考えておられます。

 ライバルたちの存在にちっとも危機感を持っておられません。


 私の調査では………


 カリン様

 シロップ様

 リンシャン様

 アカリ様

 リベラ様

 ルビーちゃん

 ミリルちゃん

 クウちゃん

 メルロさん

 シーラス先生


 などの強敵たちがリューク様をお慕いしていると私は思っております。


 それなのに我が主は剣帝杯で、リンシャン様に負けた後は、リューク様への挨拶もそこそこに長期休みに入ってすぐに王城へ戻られました。


 休みの間にどんなアプローチをするのかと思えば………


「アンナ~やっぱり王宮はいいわね。私、学校が始まるまではのんびりするつもりよ」


 引きこもりを選ばれました。


 はい。アホです。


 あっ、間違えました。天然です。


 我が主たるエリーナ様は、ご自身がリューク様にとって空気となっていることをご理解されていません。

 前回は、たまたまリューク様が欲しい情報をエリーナ様が持っていたに過ぎません。


 私はリューク様によって眠らされていたので、起きてから聞いた話になります。

 リューク様は御自らお茶を入れ、エリーナ様をもてなしたそうです。

 お茶を飲みながら、「兄とは仲がいいのか?」第一王子様の話を聞いて帰られたそうです。


 そのあとにユーシュン様と密会なさったそうです。


 リューク様は、エリーナ様に会う目的がなければ、会いに来てはくださらないのです。


 それは………女性としてどうなのですか?このままではいけません!


「エリーナ様。最近、妙な噂を耳にしました」

「妙な噂?」

「はい。なんでも王都に住んでいるはずの上位貴族たちが、領地に戻ってしまっているというのです」


 エリーナ様を慕っているセシリア様も領地に戻られてしまいました。


「上位貴族が領地に?当たり前のことじゃないのかしら、彼らも領地の運営を任されている身でしょ。何がおかしいの?」

「……エリーナ様。上位貴族は下級貴族に領地を任せているのです。そのため滅多に領地に戻ることはありません。マーシャル家のように物理的な危機が迫っていれば頻繁に帰ることもあります。ですが、他の領地は帰らなくても下級貴族から税を集めるだけで上位貴族は十分に領地の運営が出来てしまうのです」

「それは知っているけど、だからと行って戻らないというわけじゃないでしょ?」


 エリーナ様は決して地頭が悪いわけではありません。

 むしろ、勉強や魔法については賢い方です。


 ですが、人の機微に関しては、どうしても疎いと言いましょうか?理解が乏しい方なのです。


「それとデスクストス家が改装していて、リューク様が家を追い出されたという噂も」

「えっ!リューク、家を追い出されたの?それは困るわ。私と結婚するのであれば、家同士の格という物を大切にしなければいけないのに、それでは私が下賜されるのが難しくなるわ。最低でも伯爵以上の地位にいて貰わないと!」


 もう、そういう問題ではないと思いますよ。

 エリーナ様の結婚話など、今はどうでもいいのです。

 一度腹パンで意識を飛ばしましょうか?


「なっ!アンナからスゴイ圧を感じるわ!何かするつもり?ただでやられると思わないで頂戴!」


 何故か臨戦態勢に入ったエリーナ様に深々と息を吐きました。


「リューク様は婚約者であるカリン様を頼り、カリビアン領へ向かわれたようです」

「ああ、なんだ。それなら問題ないじゃない。カリン姉様は素敵な方よ!リュークも安心ね」


 確かにカリン様は素敵な方でした。

 ですが、あの胸に搭載した兵器と、丸顔の可愛くて優しい雰囲気が、リューク様の怠惰な心を癒やしているのが傍目からでもわかります。


 エリーナ様には絶対に持ち合わせていない、カリン様の素晴らしさ魅力です。


「エリーナ様。カリビアン領とは言いません。チリス領へ視察に向かいませんか?」

「はぁ?なんでよ。私最初に言ったじゃない!学園が始まるまではのんびりしようかなって。行かないわよ!」

「リューク様に会えるかもしれませんよ」

「!!!」


 先ほどまで顔を背けていたエリーナ様が反応しました。


「カリビアン領とチリス領はお隣同士です。それもチリス領は侯爵家。カリビアン領は伯爵家です。問題が起きたとき侯爵家によってリューク様に危害を加えることになれば、チリス家と仲がいいエリーナ様が疑われて、嫌われるかもしれませんよ」

「!!!!!!!!!!」


 私の言葉にエリーナ様の方がガタガタと震え出しました。


「なんでも、チリス家のセシリア様はリューク様に宣戦布告のようなご迷惑をすでにかけているとか?」

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!アンナ。支度をしなさい」

「どちらへ?」

「チリス領へ向かいます。そこからカリビアン領に入ります。あくまでこれは視察です。決してリュークに嫌われたくないから行くわけではありせんからね!」


 ツンデレなエリーナ様は可愛いです!

 この姿をリューク様に見せれば可愛いと思って頂けるはずです。

 だって、エリーナ様は容姿ではダントツで一位に選ばれる美貌の持ち主なのですから。


「急ぎましょう!アンナ!」

「はい。お嬢様」


 思惑通りにエリーナ様が動いてくださいました。


 リューク様、待っていてください。


 長期休みであっても、推し活動は続くのです!


 推しのプライベートを見に行きます!!!

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