第83話 崩壊への序章
ブフ家の収入源とは何か?それを知りたいと思ったとき……
「必要だと思って参りました」
タシテ君がやってきた。うん……なんだろう。
君は何にもいわなくても分かると思っていたよ。
「どこから情報を集めているんだろうね。まったく」
公爵家の屋敷なのに、情報漏洩が半端ないね。
「どこにでも人はおります。貴族は誰もが、情報こそが大切だということを理解しているのですよ。それでは私が知り得る情報をお伝えしたいと思います。
ブフ家は教会と関連深い家なのです。
王都中に広がる通人至上主義こそ、ブフ家が広めたものです。亜人を蔑むことで、人々に階級制度を浸透させて、亜人は奴隷というイメージを植え付けました」
タシテ君の解説を聞いているうちに、ついついソファーを一つダメにしてしまった。
「もっ、申し訳ありません」
「タシテ君は何も悪くないよ」
「いえ……続けます。そのため教会が運営する孤児院や、教会への寄付などが資金源になっています」
本当にブフ家はめんどうだね。
国と教会は深い関係がある。
誰もが手を出しにくいところで、破壊するわけにもいかない。
考え方自体は少しずつ変更していけばいいが、今更教会が悪いと言っても通じない。
それほどまでに王国に住む人々の中へ浸透している。
それに教会が悪いんじゃなくて、それを悪用するブフ家が悪いだけなんだから……それを排除する方法を考えなければならない。
「本当に厄介だね」
「はい。教会の信者たちからすれば、ブフ家のシータゲ・ドスーベ・ブフは猊下様と呼ばれているほど慕われています」
「あの巨漢が慕われるか……まぁ、人は自分のみたいものしか見ないものだ。それに全てが悪にならないようにシステムを組んでいるんだろうね」
「はい。シータゲ・ドスーベ・ブフは慈善事業として、教会を利用して人々に救いを与えています。
貧しき者には子供を差し出すことで金品を与え、富ある者には寄付を募り……望みを叶えているようです」
タシテ君が差し出した資料に目を通して頭が痛くなる。
「潰さないといけない家や施設がいくつかあるね」
「はい。シータゲ・ドスーベ・ブフに与する者達です。リューク様がお望みのままに」
本来であればダンが卒業して騎士になるまでは、どの家も動かないはずだった。
どうして、思い通りにならないのかな?ボクがアカリを妾にしたからか?だけど、ブフ家がアカリを狙っているなどゲームの設定では存在しなかった。
アイリス姉様が快楽者となり狂乱する中で、ブフ家が奴隷の美しい男達をアイリス姉様に差し出していた。
ブフ家は奴隷の売り買いしているのを、ダンによって阻止されて、アイリス姉様もブフ家の黒幕として……シータゲ・ドスーベ・ブフがどうなったのか?ダンによって倒されて終わりだ。アカリを誘拐なんて事件は起きない。
「歪みが生まれ始めている。ボクのせいだろうけど……ハァ~めんどうだ」
歪みなど……どうでもいいけど……ボクの物に手を出したんだ。
覚悟はしてもらう。
「リューク様……私は感動しております。カチコミの際は是非、このタシテ・パーク・ネズールをお供にお使いください」
うん。暑苦しい。マイドにしても、タシテ君にしてもマジで暑苦しい。
「ダメ。君には違う仕事をしてもらうつもりだから」
「そっ、そんな!!!」
驚愕するように、両膝と手をついて項垂れる。
リアクションが大きいね。君、そんなキャラだった?
「はいはい。カチコミよりも重要な任務を与えるよ」
「アカリ様の居場所でしょうか?」
「ううん。それはもうわかったから」
「えっ!私でも知り得ていない情報を!!さすがはリューク様です!!!」
「別に大したことじゃないよ。ボクの魔力を込めた装備が、午前中に反応しただけだよ。
すぐに効果を失ったけど場所はわかった。
たぶん、相手はボクの魔力に阻まれたから、すぐに手を引いたようだね」
破壊していたなら、今すぐ向かおうと思ったけど。
その心配はまだ無さそうだ。
そのときはシロップとバル、それにボクの三人で行こうかな。
「重要な任務とは、なんでしょうか?」
「孤児院や奴隷として売られた子の回収だね」
「奴隷たちにはシータゲ・ドスーベ・ブフの属性魔法がかけられています」
「属性魔法?」
「はい。《奴隷》魔法と言われています」
なるほどね。異世界ファンタジーにありがちな魔法だね。
「なるほどね。そっちは回収は急いで、集めたらボクがどうにかするしかないね。
後は、シータゲ・ドスーベ・ブフへ多額の寄付金をしている奴以外の善良な信者さんたちを集めてくれるかい?マイドにもやらせているから一緒に指揮をとってね」
「集めた者達はどうするのですか?」
「それを聞いてどうするの?」
ボクは別に威圧を込めたわけじゃない。
ただ、真っ直ぐにタシテ君を見た。
「もっ、申し訳ありません。リューク様のお望みのままに!」
君は暗躍は得意だし、物事の本質を見極めるのも上手い。ただ、なんでも知りたがる情報魔なところはたまに危ない状況を生み出すかもね。
「深くボクを覗かない方がいいよ」
「えっ?」
「ボクもまた君を見ているから」
タシテ君が唾を飲み込む音が室内に響く。
「さぁ、仕事に取りかかろう。今日一日で全てを終わらせるよ」
「はっ!」
タシテ君が部屋から出て行って、シロップが代わりに入ってくる。
「ご主人様……大丈夫ですか?」
心から心配そうにボクを見るシロップ……そっとボクが手を伸ばすとシロップがボクの前に立つ。
メイドのスカートの裾からフサフサで気持ちの良い尻尾に手を伸ばす。
「んん」
顔を朱に染めるシロップ……やっぱりモフモフはいいね。
ただ、綺麗になったシロップの尻尾を触るためにスカートの中に手を入れるのは凄く背徳的な気分なるのは僕だけかな?
「主様」
切ない顔でボクを見るシロップ。
「ダメだよ、シロップ。待てだ」
ボクは立ち上がってシロップのフワフワの耳に囓りつく。痛くならないように甘噛みをすると、シロップは崩れ落ちた。
「ハァハァハァ、もっ、申し訳ございません」
「別にいいさ。さて、さっさと終わらせてたっぷり寝ようかな」
シロップの頭を撫でてバルに乗り込んだ。
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