第51話 実験結果
《Side???》
いつの間にか身体の中にあった不快感がなくなっていて、暖かい何かが身体の中に入り込んでくる。
少し前は異物が入り込んで気持ち悪かったのに、全部排除できたのかな?あれ、子供達が生み出せない。
新しいご飯が捕まえられない……でも、お腹がいっぱいで新しいご飯はいらないかな?それに凄く幸せ。
「バル?バル?どうだ調子は?」
誰? 誰かが呼んでる。
バル? バルって誰?
「魔力は十分だと思うんだけどな?……あとはボクとの意識をリンクさせるだけで終わるはずなんだけど……どうしてリンクできないんだ?」
バル? あれ……なんだろうこれ? 格闘技? 戦う技術? 魔法の知識? 人の名前……ああ、そうだ。私はバルなんだ。
♢
《Sideリューク》
研究は思った以上に難航した。
課外授業から、テスト勉強以外は完全に無視して、半年が過ぎてしまった。
リベラが実験の手伝いをしてくれて、寮に戻れば、カリンが食事を食べさせてくれる。
お風呂やトイレもカリンに連れて行ってもらったのは恥ずかしい。
ミリルはボクの代わりに基礎学のノートを取ってくれて、テスト対策まで作ってくれた。
研究の手伝いと掃除まで手伝ってくれた。
ルビーもミリルノートには助けられたようだ。
たまに部屋にやってきて、ボクが考え事をしていると膝に座ってくるので、撫でると気持ちが落ち着いて癒やされる。
こうして半年間はあっという間に過ぎていった。
何やらシーラス先生から話を聞きたいと言われたが、今は忙しいと断り続けた。
バルにボディーを作ろう計画は、大詰めに差し掛かっていた。
「よし、最後の仕上げだ……ボクの意識とバルをリンクさせる」
ボクは最大限魔力吸収を行って、自分の魔力へ変換してから、自身の身体の中にある魔力をレアメタルへと注ぎ込む。
これを行うことでレアメタルへボクとの意識をリンクさせられるはずなんだ。
「いくぞ!」
体内に存在する魔力をレアメタルへ注ぎ込む。
全てを注ぎ込むと、ボクは力を失って倒れてしまいそうになる。
カリンが慌てて支えてくれなかったら、倒れていたことだろう。
「バル?バル?どうだ調子は?」
魔力を注いだのにリンクが出来てない?ボクはバルに呼びかける。
今までは「(^^)/」と返事をしてくれたバルから返事がない。
「魔力は十分だと思うんだけどな?……あとはボクとの意識をリンクさせるだけで終わるはずなんだけど……どうしてリンクできないんだ?」
ボクが呼びかけるとピクリとレアメタルに反応があった。
「バル?」
もう一度呼びかけると、レアメタルが光り出した。
紫色の光はボクの魔力を表しているような感覚を覚える。
魔力吸収で体内の魔力を回復させながら、バルの変化を見守る。
「(^^)/」
光が収まると、ミスリルで作った羽を生やした子犬程度の紫クマ?が空を飛んでいた。
フワフワした見た目のクマは有名なぬいぐるみにも見える……不思議な生物?が飛んでいる。
「えっと、バルか?」
「(^^)/」
紫クマが片手を上げて顔文字と同じ動作をする。
「リューク様……これは成功?なのですか?」
リベラも何が起きたのか理解できなくて戸惑っている。
「可愛い!」
ボクを支えていたカリンが声を出す。
ミリルが用意してくれた椅子へボクを座らせてカリンが近づいていく。
「カリン!」
危険かも知れないので、止めようよとしたが、すんなりとバルがカリンの腕の中に収まった。
そして、気づく……意識のリンクが成されていることに……カリンの胸の感触が柔らかい。
「カリン様、大丈夫なのですか?」
「ええ、ミリルちゃん。触ってみますか?」
「いいのでしょうか?」
ミリムが戸惑いながら、バルへ手を伸ばす。
「うわ~フワフワで気持ちいい」
「私も触りたいにゃ」
女子の手が伸びて、身体を触られるような不思議な感覚を覚える。
くすぐったくはないが、少し変な感じだ。
「リベラ」
「はい」
「どうやら成功したようだ」
「えっ?そうなのですか?」
「ああ、あれはバルだ。意識というか、感覚がリンクしている」
三人の女性にもみくちゃにされている変な感覚を共有している。
「バル!フォルムチェンジ」
「(^^)/」
ボクが呼ぶとバルはいつものクッションへと姿を変える。寝心地も変わらない。
魔力を注いでいないのにバルの感触がする。
「うん。間違いない、バルだな」
このまま寝てしまいたい……。
「リューク様、やりましたね!!!」
「おめでとう。リューク」
「リューク様、さすがです」
「凄いにゃ!なんか凄いにゃ!」
四人から成功の祝福と喝采を受ける。
ここまでミスリルをどれだけ失敗して使えなくしてしまったことか……どれだけの紙と魔法陣をダメにしたことか……。
「みんなありがとう。みんなが居たから成功できた!それぞれ礼をしたいと思う。ボクが出来ることがあれば出来るだけ叶えよう。なんでも言ってくれ」
ボクの申し出に四人の顔が驚きから真剣に悩むものへ変貌していく。
「……リューク様、それはなんでもいいんですか?」
「ああ。ボクに出来ることならね」
リベラが質問をすると女性たちは四人で話し合いを始めてしまった。
ボクは待っている時間で、バルに身を預けて眠りについてしまった。
夢の中に……バルが現われる。
「私はバル……あなたがマスター?」
夢の中に現われたバルは、紫色のクマではなく……光の玉?だった。
「マスター?まぁそうか。ボクがバルのマスターだ」
「ありがとう。マスターが連れ出してくれたから、私はお腹いっぱいで幸せ」
「うん?連れ出した?お腹いっぱい?バルが幸せなんて思うのか?」
「私はバル……マスターと共にいる」
これは夢……だけど、バルに意識があるように感じて楽しかった。
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