第178話 覚悟

【sideルビー】


 私のお父さんとお母さんは、凄い冒険者にゃ。一緒にいる時はわからなかったにゃ。王都に言ってアレシダス王立学園に通い出した時は、どうして皆手加減して戦っているのか不思議だったにゃ。

 入学式の時に見た、リューク様の動きは凄かったにゃ。同い年なのに両親と同じ速さで動いていたにゃ。だから、みんな同じように動けると思っていたにゃ。


 だけど、誰も私の速度に追いつけなかったにゃ。リューク様以外は本気で戦わなくても倒せていたにゃ。これじゃあダメにゃ。

 両親が行方不明になるほどの事件が起きたのに、私よりも弱い人とは一緒にいけないにゃ。


 やっぱりリューク様じゃないとダメにゃ。ツガイになるのも助けを求めるのもリューク様じゃないとダメにゃ。両親はもう生きていないかもしれないにゃ。2年経って、マリアさんに聞いても両親は帰ってきてなかったにゃ。


「ごめんなさいね。ルビーちゃんにお願いされていたから、私なりに調査もしているのだけど、ルビーちゃんのご両親。風雷神のお二人は誰も見ていないそうなの」


 高ランクパーティーが迷いの森に調査をしてくれたこともあったそうにゃ。だけど、両親の行方は全くわからなかったみたいにゃ。

 だから、私は覚悟を決めることにしたにゃ。両親は死んでいるかもしれないにゃ。体も魔物に食べられているかもしれないにゃ。でも、両親の身につけている物をなんでもいいから見つけたいにゃ。両親の思い出が欲しいにゃ。


 そんな時、リューク様と一緒に街を見て回れる機会が来たにゃ。私はもしかしたら両親の話ができるかもしれないと思ったにゃ。

 両親の話をしたらリューク様は私を助けてくれるかもしれないにゃ。そんなことを考えていたにゃ。


「私の全てを捧げれば、私の願いを一つだけ叶えてくれるかにゃ?」


 街を一日中一緒に見て回って、最後に訪れた夜景の綺麗に見える城壁で、私はリューク様に聞いてみたにゃ。


 見つめていると、リューク様が近づいて来たにゃ。


「全てを捧げてお前は後悔をしないのか?」

「後悔はしないにゃ! 私はリューク様を心から愛しているにゃ、側にいて落ち着いて、撫でられて幸せを感じるのにゃ。日向ぼっこをしながら一緒に寝られるのも幸せなのにゃ! リューク様が悪の道に進んでも、私はリューク様を守る剣になりたいのにゃ!」


 私が思っていることを告げると、リューク様は私の頭を撫でてくれたにゃ。

 凄く優しくて、気持ち良いリューク様の手が大好きにゃ。


「お前の全てを受け止めよう。お前が望む願いを叶えたい時。力を貸すよ。それがボク自身が選んだ道だとボクも思っているから」


 こんなにも簡単にリューク様が言うことを聞いてくれるなんて思っていなかったにゃ。めんどくさがりで、いつも寝ているか、本を読んでいて、誰か別の女が周りにいて……、私のことなんて見ていないし、大切じゃないって思っていたにゃ。

 

 ちゃんと、リューク様は私のことも見ていてくれていたにゃ。

 気づいたら涙が溢れてきて、止まらなくなっていたにゃ。

 嬉しいにゃ。嬉しいにゃ。


「あっ、ありがどうにゃ!!!!嬉しいにゃ!!!」


 リューク様は私をギュッと抱きしめてくれて、言葉だけでも願いを叶えてくれると言ってくれてにゃ。

 私は満足出来たにゃ。これで一人でも両親のところに行って戦えるにゃ。


 そう思っていたのにリューク様は……。


「わっ、私がまだ名前を呼ばれていないにゃ!」


 マーシャル領へ向かう作戦会議で、やっと迷いの森に行けるのに名前を呼んでもらえてないにゃ。


「ああ、名を呼んでいない」

「どうしてにゃ? 私もリューク様とマーシャル領へ行くにゃ!」

「いや、ここからは危険になる。ルビーは一旦、カリビアンに戻るのも一つだ」


 どうしてそんなことを言うのかにゃ? 願いを叶えてくれるって言ったにゃ。確かに両親のことは話していないにゃ! だけど、私は一人でも両親の元へ行くにゃ。


「そっ! そんなのって無いにゃ! わっ、私は両親を助けるために、リューク様に全てを捧げたにゃ! ここで帰ったら両親がどうなったのかわからないままにゃ!」


 つい、両親を助けたいと言ってしまったにゃ。


「なら、ルビー。この場でお前に問う。お前は何を望む?」


 意地悪だにゃ。こんなに大勢の前でなんて。


「わっ、私は別に一人でも行くにゃ」

「本当に?」

「いっ、意地悪にゃ。どうしてそんなことを聞くにゃ?」

「今なら、大勢の人が迷いの森を目指して動いてくれる。一人で探しても見つからない物も見つけやすくなるだろ?」

「にゃ?!!!」


 リューク様は私のことを、ちゃんと考えてくれているのにゃ。


「……そういうことにゃ。リューク様は本当に意地悪な人にゃ。だけど、最高の旦那様にゃ」


 ズルいのにゃ。もっと惚れてしまうのにゃ!


「私の両親は迷いの森で行方不明になっているのにゃ。お願いにゃ! 迷いの森に行くなら、私の両親を一緒に探して欲しいのにゃ!」


 みんなが優しく受け入れてくれて、探してくれるって言ってくれたにゃ。


「リューク様」


 みんながいなくなった部屋の中で旦那様に声をかけたにゃ。


「なんだい?」

「ありがとうにゃ。まさか、こんなにも早く両親の元へ行けるなんて思ってなかったにゃ」

「そうだね。ボクも来年以降になると思っていたよ」

「ふぇ? そうだったにゃ? 行ってくれるつもりだったにゃ?」

「もちろんだよ。ルビーの願いを叶えるって言っただろ?」


 旦那様はズルいにゃ! もう好きが止まらないにゃ!


「大好きにゃ! 本当に、全部終わったら私の全てをもらって欲しいにゃ」

「そのつもりだよ。ボクのために生きてね」

「わかったにゃ」


 旦那様にいっぱいキスをするにゃ!


 みんなでマーシャル領へ向かって、やっと迷いの森へ行けるにゃ。

 懐かしい森の匂いに両親のことを思うにゃ。やっと会えるのにゃ。


 そう思っていたのに、まさかこんな再会をするなんて……

 

 両親から聞いていたにゃ。二人の力を暴走させたなら、竜巻が起きるって言っていたにゃ。私は絶望したにゃ。あの状態になった両親は、もう……


「ルビー! いくよ」

「何をするつもりにゃ?」

「決まっているだろ? 止めるんだよ。お前の両親を」


 私は絶望して、もうダメだって思っているのに……

 

「無理にゃ! 暴走した力は普段の何倍も力が強くなっているはずにゃ! 私の両親はレベルもカンストして、最上位希少属性魔法を、最大値まで鍛え上げているにゃ。それが暴走しているのは、もう天災にゃ!」

「いいや、あれは人災だよ。誰かが止めてやらなくちゃならない。それはルビー、お前の役目だ」


 私の役目? それに私が諦めているのに、旦那様は諦めて無いにゃ。


「私に何ができるのかにゃ?」

「ボクを信じろ!」

「えっ?」

「ボクを、そして仲間を信じて突き進め」

「わかったにゃ! 旦那様を信じるにゃ!」

「旦那様?」

「そう呼びたいにゃ!」

「ああ。ルビーの好きに呼んでくれ。行くぞ」

「はいにゃ! 旦那様! 大好きにゃ。信じて進むにゃ!」


 私はどこまでも旦那様についていくのにゃ!


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