第126話 ヒロインたちの会話 その9

《sideカリン・シー・カリビアン》


 本日は、リュークの正妻として、お茶会を開くことにしました。


 アイリス様の開くお茶会には参加したことが何度かあります。ですが、私が主催してお茶会を開くのは初めてなのです。しかも、今回集まった方々は、最上級の貴族様と、礼儀作法を知らない平民の子が同じ席に着きます。


 彼女たちは、リュークに関係する女性たちです。


 本来であれば、リュークが参加してもよかったのですが、私の方から遠慮して頂きました。

 最近仲良くしている、アカリに協力してもらって、準備しました。お茶やお菓子などは私が用意して、テーブルなどの装飾をアカリが手伝ってくれています。


「カリン姉さん。この辺でええんちゃうかな?」

「そうね。そろそろ時間が近づいているわね」

「そないに緊張せんでええと思うよ。みんないい子ばっかりやし」

「そうなのだけど、私よりも位の高い方もおられるので、どうしてもね」

「もう、それは学園の外の話やろ。あかんで、カリン姉さんは、リュークの妻として、正妻なんやから一番らしく、ドンと構えてや」

「ふふ、そうね。わかっているわ」


 アカリに励まされて、私は招待した人たちを出迎えました。学園で開かれるお茶会は制服で参加します。

 服装での優劣はありません。


 何よりも、ここへ招待した意味を皆さん理解しています。


 位の低い私が主催では、気分を悪くされないか不安でしたが杞憂に終わりそうです。

 今回のテーブルは、長椅子ではなく円卓の椅子を用意しました。リュークが選んだ女性は、平等であるという意味を込めました。


 私を含めて8名が集まっています。

 アイリス様が参加したそうにしておりましたが、今回はご遠慮頂きました。

 リュークの女性問題に首を出すなど、小姑と思われますよと言いましたが不服そうでした。


「皆さん。本日は私の呼びかけに応じて頂きありがとうございます。主催をさせて頂きます。カリビアン伯爵家のカリン・シー・カリビアンでございます」


 私は自己紹介をして、皆さんを見ました。

 アイリス様に負けぬほどの美しい銀髪をしたエリーナ様。

 引き締まった身体に女性らしい美しさを合わせ持つ、アンバランスな輝きを放つリンシャン様。

 エリーナ様の従者で子爵家の令嬢、アンナさん。


 以上の三人が初対面です。

 私が緊張する相手でもあります。


 リベラ、アカリ、ミリル、ルビーは見知った顔なので少しだけ安心です。


「もう、お気づきだとは思いますが、普通のお茶会ではありません。今後、リューク・ヒュガロ・デスクストス様をお支えする意志がある方だけにお声掛けさせていただきました。参加して頂いたということは意思があると思わせて頂きます」


 私の言葉にエリーナ様やリンシャン様も頷いてくれました。位が私よりも高いお二人ですから、配慮について考えてしまいます。


 私がなんとか自己紹介を終えたところで、リンシャン様が手を上げました。


「はい?」

「発言を許してもらっていいだろうか?」

「どうぞ」

「随分と緊張されている様なので、まず我々は先輩よりも年下なので、名前を呼び捨てにしてもらって構わない。私のことはリンシャンと呼んでほしいのです。

 エリーナもそれでいいな?」

「もちろんです。カリン様、正妻はカリン様です。それは私たちもリューク様から言われております。

 私たちの位を気にすることなく、この場では長であるとお考えください。どうか、私のことはエリーナと呼んでくださいませ」

「ありがとう、リンシャン、エリーナ、私のこともカリンと呼んで頂戴ね」


 上位貴族のお二人が名前呼びを許してくださいましたので、緊張がほぐれた気がします。

 私が作ったお菓子は好評でした。皆さん、甘い物がお好きでよかったです。


「こうして皆様と交流が持てて、本当によかったと思います」


 どの子も良い子で本当によかったです。


「少しよろしいでしょうか?」


 末席に座っていたアンナが挙手をして立ち上がりました。


「なんですか?アンナ」

「正妻はカリン様だとリューク様が明言されたので、それは承知しました。ですが、その他の序列はどうなるのでしょうか?」


 アンナの発言にピリッとした空気が流れました。


 貴族とは、メンツを大切にする生き物です。

 それに対して、平民は権利を主張します。


 それは似て非なるものであり、序列とは、貴族にとってはメンツを保つためにもっとも重要視されるものです。


「あの~アンナさん。序列って必要なんですか?」


 アンナの目の前に座るミリルは平民なので、貴族の価値観は理解できないかもしれませんね。

 ですが、エリーナ、リンシャン、リベラ、アンナさんの四人からすれば貴族として当然の疑問です。


 ただ、この場で単純に貴族の序列で決めてしまってもいいのか、それは私の判断では難しいところなのです。

 リュークが明言したのは、正妻は私。次いでシロップです。そして、決まっているのはアカリが妾であること。


 そうなれば、第一夫人は私で、第二夫人はシロップになります。そして、側室にアカリということになります。


「必要です。貴族にはしきたりがあり、他家に対しても第一夫人や、第二夫人を明言して、公表しますので」

「そうなんですね」


 アンナの発言に私はどうすればいいのかわかりません。ここで、明確に序列を言い渡しても良いのか……


「そんなんウチはどうでもええけど。

 決めなあかんねやったら、カリン姉様、エリーナ様、リンシャン様、リベラちゃんやないの?」


 アカリ!!!なんて出来る子なの、そうよ。それが一番安心安全な序列ね。


「まぁエリーナ様が二番であるなら、私は何もございません」


 アンナも引き下がってくれたわ!アカリ、ありがとう。


「ちょっといいでしょうか?私は四番目は不服です」


 リベラちゃん!!!どうしたの?今、丸く収まりそうだったじゃない!!!


「私もリューク様の寵愛を受けたい一人ですが、現在リューク様から正式な相手として認められているのは、カリン様、シロップさん、アカリの三人だけです。

 他の者はスタートラインに立っただけです。

 ですので、序列はリューク様に認められた者順にしてほしいです」


 リベラちゃん。それは正論だけど、今は穏便に話しをするためにはアカリの案でよかったんじゃないの?


「面白い。リュークに決めてもらうと言うことだな」


 リンシャン様!!!なんで乗っちゃうの?戦う女性は争いが好きなの?


「いいですわ!女のプライドと貴族のメンツ。それはリューク様に決めて頂きましょう」


 エリーナ様まで……まぁ彼女たちがいいなら、もうそれでいいでしょう。


「私は、リューク様のお役に立てればいいなぁ~」

「ウチらは平民やから、成れても側室やで。だから、役に立つのは当たり前や」

「そうにゃ。私たちにやれることをやるだけにゃ」


 平民の子たちが良い子でよかった。


 なんだかんだ皆さんも話が盛り上がって、これはこれで成功かしら?


 ――パンパン


「皆さん、話は尽きないけれど。こうしてリュークを支えるために集まれたことは喜ばしいことです。これからもリュークのために皆が力を合わせて頑張りましょう」


「「「「「「はい!!!!!」」」」


 私はなんとか話を仕切ることが出来ました。

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