312 心眼

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/26 20:15


「ほぉれ、お望み通り大馬鹿者の到着じゃ」

赤鬼は扉を開けると掴んでいたミイラ男を乱暴に放り投げる


「ああああああぁ、ぐ、ぐぁあ 痛いっ、うああ痛いー」


「早かったですね~」


「うわっ、馬車で引き回されたみたいになってますけど  良いんですか?」


米俵の様に抱えられてもおらず

手首でもなければ服でも無い、掴みやすかったのか二の腕部分を握ってからの全力疾走

自分でルートを確認する事も出来ない体勢であちこちをぶつけてはそのスピードに足を取られ、膝やら腹を擦った

丈夫な筈の防寒具と作業ズボンは所々が破れており膝小僧からは滲む、、どころかかなりの出血が確認出来る


「はっ、大した距離でもねぇから拷問としては優しめってとこだろ」

少女?が立ち上りバタバタと転がるソレを見下す


「あっあああ ひ、ひぅ な、治して  くれません?」



・・・



「  はぁ  」


少しだけ間を置いた巫女は何処かボヤっとした瞳で大きな溜息を吐いた


「シエル様? 黙らせますか?」


「いや良い そういうんじゃねぇ し、大体分かった、、もう『ソレ』返して来て良いぞ?」


「「 え? 」」


「へ?」


ポカンとする周囲の様子を余所に

巫女はしっしと追い払う仕草をしながら片手に持った瓶の中身を飲み干し、アルコール類の置いてある場所へと歩き出す


「お~なんじゃなんじゃ、折角『持って』来たのになんもせんで、、あっしに対する嫌がらせかの?」

本気で言っている訳では無いのだが面白くなさそうな表情を浮かべ、赤鬼も同じテーブルの方へと向かう


「ぁ?ちげぇよ、、とりあえず近くに『ある』だけで気ぃ悪いんだ どっか捨てとけ」


「あ~、じゃがそんまんまにしてどっか行ったら王が困るんじゃあないんかのぉ?」


「平気平気、『ソレ』にそういった事は出来ねぇよ お前が考えてた通り、一生涯」




「小物だ」




その冷たい態度と言葉に男は表情を崩し


火が付いたかの如(ごと)く癇癪(かんしゃく)を起こした


醜い程に口元をひん曲げ駄々っ子の様に奇声を上げて地を叩く

拘束されていないにも関わらず両手を握り揃え、何度も何度も額と共に打ち叩く姿は土下座をしている様にも見える、、が、コレが八つ当たりなのだとしたら少々弱弱しくも感じる程度


そんな取るに足らない所を含め、もはや生物としても認識されていないのかもしれない『ソレ』を仕方なしに相手をしなければならないのは従者だ


主の為、耳障りな不快音を抑える為に一度空瓶を床に落としてからもたつく虫を摘まみ出す


「言われなくても分かるとは思うのですがアナタの存在自体が不愉快です、金輪際(こんりんざい)関わらない様にと願うばかりですが例の件もあります、、ですのでそれ以外の事で私達の五感に影響しない対応をしてもらえると助かります」

それは目視すらせずの少し長い独り言


近しい感情であれば恨みや憎悪、、いや、それ程大袈裟になど思われていないだろう


例えるのなら





それと対峙した感覚が一番しっくり来る



外へと出された男は黙り込んだまま何かするでも無く

自らの入るべき檻(おり)のある方へと帰っていった






「ほんで? シエルは何がしたかったんじゃ?」


「あぁ簡単な事だ、まず私が飲んだ玉  あれはドラゴンオーブっつぅらしい」


「ほう? ロゼが好きそうじゃの?」


「ドラゴンオーブ、、それって!?」

従者が何かを思い出した


よりも先に


「龍の血を舐めるだとか心臓を食らうっつぅ話に書き換えたってとこか」


「なっ! シエル 様!?」


「お~? 何の話になっとるんじゃ?」


「私自身整理しながらだが組み立てられなくもねぇ 例えばカセン、てめぇはオサキつぅヤツを救う為に動いてるのは良いが、、色々迷ってるっつぅトコか  神様も万能じゃねぇんだな?」


「おおお?なんじゃなんじゃ」


「神?」

追加の酒を買って来た青年が首を傾げる


「バルはー、、今は復讐的なのも色濃くねぇし、特にねぇか」


「えー雑ぅうう」


空気を読み、リアクションはしっかり取ってから青年は思った







やっぱりこのメンバーだとハズレ枠俺だわ





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