310 宝玉

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/26 20:00


「あ、あれ?  随分早かったんですね」

開いた扉に目を向けると身近な荷物からタオルを掴み


急いで主の元へと駆け寄る


「ん、王には話つけて来たからお前らも行かなくて良いぞ 無駄足になる」

少し湿り気を付けた布を受け取る

つもりは無いらしく「拭け」とばかりに軽く顎(あご)だけを上に向ける

、、事すらもしない


そんないつも通りの態度は特別気にもせず


「浄化 した訳では無さそうですね」

従者は後ろの赤鬼をちらりと見てから巫女の腕を確認する


「カカカ、大丈夫じゃよ シエルはなんもしとらんってかあっしら二人共に何も出来とらんなぁ」


「珍しい、少しも分からずでしたか?」


「龍が消えちまったんでのぉ幾つか擦り合わせるのに戻って来たんじゃよ」


「消えた?」


「あー良い良い、全部私から説明するからてめぇは黙ってろ  確認したい事もあるんだが今日はもう面倒臭ぇし、、とりあえず酒よこせ」

巫女は手に持った赤い球体を見せつける様にし、眺めながら身近な椅子へと腰をかける


「それは?何やら高価そうな物を持って帰って来ましたねぇ王からの褒美ですか?  あ、お酒だったらバルが「念の為」ってさっき買いに行きましたんで少々お待ちを」


「お~気が利くのぉ 優秀優秀」


「てめぇコレ知ってんのか」


どう見ても高価そうな物、その筈なのだが気にする事は無く


雑に放り投げる


「わわっちょっと! 傷付いたり壊れでもしたらどうするんですか~」


「そういうのは良いっつの、どうなんだ?」


「いえいえ単純に宝石にしか見えてませんよ? 食い気味に来てくれるのは大変嬉しく思いますが手に入れた状況も詳しく見えません、その辺に落ちてたって訳でも無いでしょうし」

「ドラゴンの灰燼(かいじん)からだ、魔力の様な力も感じる」


「ドラゴンの? う~ん、貴重な宝石の類には魔力の様なものがあるとは聞いた事ありますけど、、あのドワーフはなんと?」


「んだよ期待させやがって  ヤツは「出来た」とか意味不明な事ほざいた後は一切情報吐きゃしねぇ とりあえず王に共有してコレだけは預かって来た感じだ」

従者から宝玉的な物を返却され再びソレを眺め見る


「それ以外の事はペラペラ喋りおるのにのぉ」


「牢にでもぶち込んで気長に待つしかねぇな」



「あ!でも昔お嬢様の所持されていた書物で似た様な物語を読んだ様な?」


「ぁ? ちんちくりんの書物だ?」


「くっふふ、っちゅうと絵本くらいしか思い浮かばんのぉ」


「いえ、元は旦那様の私物だそうですのでしっかりした物だった、、と思います」


「ちっ、はっきりしねぇな、その様子じゃドチビに聞いても覚えてねぇってオチか」

珍しく断言しない従者の様子を読み取りながらも舌打ちは欠かさない


「申し訳無いです、何分自分も拾って頂いたばかりの事でしたので注意してませんでした」


「まぁしゃあないのぉ お?丁度良くバルが帰って来たから続きは飲みながら話すとしようじゃないか」


赤鬼は後方の足音に「おかえり」と言葉には出さず

青年の荷物を軽々と受け取り近くのテーブルへと並べて行く



「お二人も帰ってたんですね」


「あ~今さっきじゃ、腕輪の方は順調かの?」


「いや~それがどうにもこうにも、そもそも魔法なんてモノを使うって事自体がどういう感覚なのかも分からないですし」


「だろうな」

並べられたアルコールを一本取る少女?からは意地の悪い台詞が聞こえる


「手法も考えたんですけどタイミング的にどうなんでしょうか? 手っ取り早く魔法学校にでも足を運んでみようかなぁと思ったんですが、、ってあれ?巫女様はまたお菓子ですか? 一応ツマミも買って来ましたよ?あまり美味しくなさそうですけど」

もう片手に持っていたキーボードサイズの大きな串焼き、、の様な食べ物をシフの用意した長皿へと乗せる


「はっ、菓子じゃねぇっつぅの、、だが良く見ると確かに美味そうではあるな」


「、、シエル様?」


ポロっと名を呼んだ従者の予感は当たった



巫女は飴玉程のソレをジッと見つめ




パクッ




小さな口の中へと入れる



「なっ!??」


「ぷっはっ! あっはっは流石に貝みたいには噛み砕けんじゃろ!」






ゴクン






・・・






その後、直ぐに吐かせようと動いた従者は頭の可笑しい少女?から平手打ちを食らった


「大丈夫だ、魔力量が増幅してるのが 分k、、」


と呟いてから何度か瞬きをすると周囲を見回し


一分と経たないうちに鼻から流血を始めた


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