91 痕跡
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい。
8/23 15:50
「シエルの感知でいないんだからさ~、もう逃げちゃってると思うけどな~」
ツインテールの少女が少し面倒な顔で折れた木々を拾い眺める
「痕跡に手がかりがあるかもだろうが」
巫女だけは手を動かさず腕組をしている
一同は狼の落ちた周囲の林を調べている所だ
「こっちはフェイクかもですね~」
オレンジ色のくせ毛を撫でながらシフが少し奥から戻って来る
「途中からは破壊跡が一切無く、その場から消えた様にも見えたので別方向に向かったのかもしれません」
「また子供の姿に戻ったんじゃないのか?」
「いえ、本当に小枝が欠けた跡すらもありませんでした 勿論足跡も、、ましてや走って逃げてるはずですし」
「そうか」
巫女はバルからの情報、変化能力を視野に入れるが従者が言うのだからこっちでは無いのだ、とすぐにその方角を対象から外す
(血痕等は無かった、、あの身のこなしからしても怪我人の芸当では無い)
巫女は思考を巡らせる
(咆哮は魔法の類では無い、あれは単純な音、、威嚇だ じゃあ何故攻撃して来なかった? 人数的に不利だと思ったか?)
(そもそもあのサイズであんな声量出るか、、、!?)
狼が落ちたはずの芝生に今一度目を向けると、ある事に気付く
「おい、、バル! ちょっと来い」
・・・
「聞こえる位置にいないんじゃない?」
「あっちの様子見てきますね?」
シフがバル達、山道班側へ足を向けるが
「待て!」
即座に巫女が大きめに声を上げる
「固まって動くぞ、アレは明らかに化け物だ」
シフとアルは巫女の言葉に少し驚くがその目線を辿り、答えに辿り着く
狼が上から落ちたその着地跡は『何かが落ちた跡』
だが巫女の視線は他の三方向を見ている
同じ様な跡が6m程横に1つ、縦20m程の位置に2つ
その『何かが落ちた跡』は 4つで1つの着地跡なのだ
シフの確認した林は途中までの葉が吹き飛び 木々がねじ曲がり、折れ、粉砕されていた
これもフェイクなどでは無く
咆哮、音での衝撃波
単純にそっちの方向へ向かった訳では無くおまけで出来た産物
あの狼は
「巨大化している可能性が高い」
三人は揃って山道班の元へと駆け出す
「このまま進むと山登りコースになってしまいませんか?」
茶髪の青年は赤鬼の傍にぴったりと引っ付いている
「ん~むそうじゃの、しかしこうも見通しが良くなってしまってる以上『おる』じゃろうし放置も出来んじゃろ」
王都と天狗山を繋ぐ街道は基本的に林で囲まれている
そして旧王都城から天狗山は目と鼻の先、、すぐ近くの山道の入口とも言える場所が爆弾でも落ちたかの様に
『見通しが良くなってしまってる』
カセンは咄嗟に掴めなかった子供の身体能力を見た時に思った、そしてあの雄叫びを自ら浴び確信した
危うい
明らかに通常の、、、、、あるべき生物のソレでは無い と
「なんならリッツはジンの所に帰った方が良いと思うのじゃが?」
「うむ、そうだな、、カラス山に足を踏み入れてから明らかに視られている 素人がいて良い場所じゃない」
エルフは珍しくいつでも矢を引ける様身構えている
「え~、入る前に言って下さいよ~」
「あ、、、そんな事言ってられなくなったっぽいよ」
バルがすぐに抜剣し右へ左へと目を向け
「動くな!」
エルフが弓を引く
ラフィは破壊された木々、残骸の影に身を隠す者に気付き 先に弦を引いた
少しだけ睨み合いが続くと四方から声がする
「それはこっちの台詞だ」
「随分と勘が良い様だが、囲まれているのは貴様らだ」
「そうだそうだ」
「今すぐ山を下りて下さい、これ以上進むのなら先程の化け物を連れ込んだと見なしますよ?」
そして 瞬時
ラフィの構える矢の先端、矢じりに小石が当たると忍んでいた者が一気に距離を詰める、、、
が
「よっこいしょ~」
カセンが手首を掴み腰元を押し、地へ伏せる
「!?」
「中々のスピードじゃったがな、バル! ちょっとこの子抑えと、、ってぇ誰かと思ったらももじゃったか? ちゅう事はライア隊か?」
地に押さえつけた者を問答無用に足で踏みつけ
辺りを見渡す
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます