39 治癒

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/15 10:00


「あ~、くそ  眠ぃ」

銀髪の少女?が不機嫌そうに首を揉みながら馬車を降りる


「着くまで寝てたじゃないですか~」

くせ毛の従者はあくびをしながら伸びをし、その後を歩く



二人は大聖堂にたったの今到着したところだ

入口付近は本日も変わらず、門の辺りまでがちょっとした行列になっている



「、、面倒臭そうだし裏から入って寝るわ」


「いやいやいやいや! 何言ってるんですかダメですよ、ゼブラ様にちゃんと診てもらいましょう」


「後で良い後で」

「あ! みこさまだ!」

子供の声で一斉に注目が集まる


「わ~みこさま~」


「シエル様だ」


「巫女様~」


「ご活躍聞いてますよ!」



「ほらみろ」


「人気者で何よりじゃないですか」


口の悪い巫女ではあるが聖堂に通う者達からは信頼も厚く人気も高い


「あ~うっと~しい、暑苦しい、邪魔、帰れ」

群がる人々に対し息をする様に毒を吐く


「ごめんなさいね~、シエル様大分お疲れなので通してあげて下さい~」

(これだけ言われてみんなも懲りずに寄ってくよな~)


「巫女様!」

一人、歓声とは違う声が聞こえる

ふと目をやると中学生程の男の子、、とその手に引かれ高校生くらいの女の子が行列の最後尾に並んでいる

「姉ちゃんを  助けて下さい!!」


「あん?」

自分より背の高い二人を下からじっと確認する

「急患には見えないが」


「きゅ、急患とかじゃ、、ないんだけど」


「じゃあ並んで順番まで待て」


「で、でも」


「お前らだけが特別じゃないんだ待て」


「あ、、、は い」


「ごめんね~、ちゃんと順番まで待ってたらきっと何とかしてくれるから ね」

従者は膝を折って二人の目線に合わせる


「う、うん ごめんなさい」








「巫女様だ!」


「シエル様~」


「うるせ~、触るな、引っ付くな、殺すぞ?」

聖堂内の行列からも歓声を受けつつ神父ゼブラの前まで到着する


「おぉ! シエル、シフ無事だったか! 宿先様には迷惑をかけていないかい?」

神父ゼブラは丁度今一組の話をまとめたところだ


「めんどい喋んな、頭いてぇから治癒しろ」

ゼブラの前の椅子にドカっと座る


「ゼブラ神父様ただいま戻りました  あ、シエル様は連日魔法を使用してましてですね~」


「うんうん、相変わらずな子だ シエルの様には出来ないからね?」


「知ってる、さっさとしろ」





魔法の使用には自分自身の生命力を使う

しかも、シエルやゼブラの使用する治癒魔法は特殊で他の魔法よりも負担が大きい

そして


自分自身に使う事が出来ない





「ふぅ、どうだろう少しは良いかな」


「あぁ」

二人して首と肩を回す


「シエル様 腕も」

従者が巫女の右腕の包帯を解く


「いや、こっちはもう大丈夫」

咄嗟に腕を引っ込める


「ダメです! だいぶ綺麗になって来たのに、跡が残っちゃったらどうするんですか、夏場は化膿しやすいんですよ? なんで毎回そんなに嫌がるんですか! そもそもですね・・・」

あ~でもないこ~でもないと始まる


「あ~はいはい、うるせ~分~かった!」

眉を寄せながら右腕を素直に上げる


「では!ゼブラ様お願いします」

巫女の細腕を神父に向かせると手際良く治癒後の準備を始める


「うん、帰還の度に綺麗にはなってるから感染症とかにはなって無さそうだ シフが日々診てくれてるおかげだね」




ゼブラの治癒はシエルと違い微弱であり、すぐに傷が治る等の効果は無い

その為シエルの右腕にはいまだに『あの日』の、、戦いの跡が生々しく残っている







「さてと、じゃあ要件を聞こうか お前は何かが無いと帰ってこないからね?」

数分光を当て終わると神父は一度椅子へと腰を下ろす


「アホか? 目の前も見えなくなってきたか? 先にこの行列をなんとかしろよ」

従者に右手を向けながら毒を吐く


「後でも大丈夫そうかい? じゃあ二人は部屋で休むと良い」


「いい」


「ふふふ、約束しちゃいましたもんね」

自分の目の前で丁寧に包帯を巻き直すが

「あ?約束なんかしてねぇだろが」

理不尽な包帯越しの裏拳が鼻に入る


「はぶ!  ふおおおこれは痛いいいい  鼻! 取れてないですか!?」


「本当に無くすぞ? お前は後ろの方の連中の要件聞いてまとめておけ」


「は、はいぃ」

シフは逃げる様に外に駆けて行く





「はぁ、、、じゃあ次の奴からは私が話聞くから、ジジィじゃないとダメな要件はそっち列に並べ~」

名物にもなっている『大聖堂の巫女様』は気だるそうに並ぶ者達へと顔を向ける






そこからはあっという間だった

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