38 銀色
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
8/15 13:30
「ふぅ、こんなものかな」
キーロは自分の荷物を馬車へと詰めている
「ねぇ、あたしも手伝おうか?」
アルはキーロに先程買ってもらったアイスクリームを食べ終えるとジンから預かったお金で購入した何枚かの洋服を鼻歌交じりに何度も袋から出して を繰り返している
「いや、そんなに量があるわけじゃないから大丈夫だよ ははは、そんなに気に入ったの?」
「ほら!ここ見てよ可愛いでしょ?」
「うん うん」
仲の良い兄妹
もしくは若いカップルの様に見える
平和な光景だ
「ソレにしてもキーロのオジサンも驚いてたね、そんなに似てるんだ?」
「似てるとかそういうレベルじゃないくらいにね」
「ふ~ん、、ってかさ 本当に引っ越しちゃうの?」
ディーン王国は大陸内でトップクラスに機械科学が発展している
キーロは日頃からスカウトされていたディーン王国の工業地帯に単身で引っ越しをする事を決めたのだ
「ん? あ~うん、父さんも落ち着いてきて、、色々と良い機会だし」
ある程度片付いたのかアルの横に座る
「アルの足を見た時に痛感したんだよ、何にも出来なかった 巫女様は機械なんか関係無しに治しちゃったし 今のままじゃただの機械好きで終わっちゃう」
「ギルドとかから通え~、、ないよね」
ディーン王国は王都から北へまっすぐ5時間といった所だ
「ちょ~っと無理かな~ いや、でもジンさんや巫女様と色々情報共有も出来たら力になれるかな~とも思っててね」
「あ~ うん そうだよね、、、」
「ふふ、少し生活に慣れたらギルドには顔出しに行ける様に頑張るよ アルも皆さんと仲良くするんだよ? 危ない事はしないんだよ?」
少し俯くアルの髪を優しく撫でる
「 大丈夫だよ、あたし ホラ!この足だからさ走るのだけは速いんだ もしかしたら馬より早いかもしれないよ? きっとなんやかんや 役に 立てるし、、」
「あ、そうだ ちょっと待ってて」
アルの頭を2、3度軽く撫でると広場の方へと向かう
と思ったら5分もせずに戻って来た
「良かった、あったあった それと~」
そして自分の荷馬車の中を探る
「出来た はい、どうぞ」
アルの膝の上に水色のリボンを首に巻いた少し大きい兎のぬいぐるみが置かれた
「ぬいぐるみ、欲しいって言ってたもんね? リボンは他の人にあげるハズだったんだけどこの方が良いかなって思って」
「ぁ ありがと」
兎に顔を埋め
声を殺す
「さ~てと、夕方になる前にジンさんの所へ戻ろうか ふふ、多分あの人もビックリするだろうな~」
鋼の足を持つ二人は王都を後にする
8/15 19:00
「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
亭主の悲鳴とも言える声が鳴りやまない
「まって、うっそええええええええええええええええええええうっそ」
「うるさいな~、、」
少女が呆れ顔で三十路を見る
「ハハハ、でもジンさんあっちからの依頼も流行ったら良いと思いませんか? 手紙はちょくちょく送りますから」
「そんなん二の次だよ~まじかよお キーロいないのはやべええええよおお」
カウンターに突っ伏す腕を左右に揺らす
「そういうのはジンがやっても可愛くないぞ? はぁ~なっさけないのぉ、最悪一日あれば行ける距離じゃないか ほれ!むしろ祝いじゃ飲め飲め!!」
赤鬼が酒を何本か持って席へと座る
「ありがとうございます! 明日出発するんで控え目に飲ませてもらいますね」
いかにも強そうな酒をグラスに並々と注がれ苦笑いである
「そうなんだけどさああ急過ぎない? はぁ、え あっち行ってすぐに寝泊まりなんか出来ないでしょ?」
「あ、いえ ありがたい事にいつ来ても大丈夫と言われていて、結構待遇良いんですよね」
「ナニソレ、やっぱキーロも凄い子だったんだ~ウワーン何も出来ないのは僕だけなんだ~」
明らかにふざけた声をあげるが
「えぇ」
「流石に酷いのぉ」
「あ、、アハハハ なんかすいません」
「待って、本気でヒかないで ボケだよ、わざとだよ おっちゃん本気で泣くぞ? くそ!俺ももう飲み始めるわ」
「あ、じゃあ あたしにm」
「それはダメ!」
未成年飲酒は絶対に許さない亭主はお茶を置く
四人の宴会は次の日の朝まで続いた
8/16 9:30
「そういえばさ、なんって会社 いや企業? 学校?の所に行くの?」
亭主は飲み過ぎて若干の当日酔いが残っている
「あぁ、えっと ここです、天才と呼ばれている先生がいるんですよ」
住所の記載されたパンフレットの様な紙をジンに渡す
【キドナ総合ラボ】
「想像つかないけど、、色々作ってるんだろうな~? あ、そうだ!俺持っててもしょうがないしスマホ持ってってよ」
ポケットに常に入れてある電池の切れたスマホを渡す
「手土産的にも面白いかもですね あはは、何かあれば手紙でも下さい では、行ってきますね!」
普段柔らかい物腰の優しい目をした若者
背中が大きく見えた瞬間だ
「ねぇ、ジン!この兎なんだけどさ ここに飾って良いかな」
「さんを付けなさい! ん~? あ、あぁ ハハハ 良いじゃんか」
今日からカウンターの端に青いリボンをした兎が加えられた
クマのぬいぐるみと一冊の本の隣に
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