263 不審

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/25 15:00


「あ!あの~夕飯の事なんですけど、俺なんか作りましょうか?」


「え?え~?   えっと~?良いよ良いよごめんね~暇しちゃってる?お客さんなんだしゆっくりしてて~その辺に本とかあるでしょ?だから読んでても良いんだよ!」

最初は聞こえにくかったのかとも思うのだが、人の良さそうな対応が裏目に出た

「あ、違う~?そういうんじゃない??あっはっはなんならラフィもぁ、あ˝っ!ああぁあああ  あ~あぁ  えt、あ、あの!すぐ!アルちゃんもすぐ!すぐにそのうち帰って来ると!     思うし~」

全体的に癒され系な色合いの女性は姿を見せず、声だけで反応する


「お、おぉん」


「思うし~」よりももっと前から明らかに、こっちを気に出来てない様な言い方だった


(ラフィの性格のアレな部分とかってこの人譲りなんじゃ? マジでなんかすいやせんッス)



深い森の中

周りには簡素な畑、それと小さな『水源』、、と呼んで良いのか、良く分からない作りの井戸?みたいな水場がある程度


昼を過ぎたくらいに「調合するからこっちの部屋には決して入って来ちゃ~駄目だよぉ」と何処かの昔話みたいな台詞を言われた

ので夕方、そろそろかな~と遠目に声をかけたのだがどうやら気を使わせてしまった様だ

早口に共通の名前を出し、今もガチャンガチャンと派手に音を鳴らしている


・・・


ちょっとじゃないくらいに気になった事があるんだ

なので少しだけ、詳しく記しておこう

到着と同時に思った事なのだが


外の、生活する為の必要最低限なモノに関しては素朴

この人はラフィの件もそうだが行動だけ見ても分かる、多分良い人、ちょっと抜けている所があるので尚更そう見えるのかもしれない


問題は部屋の中、内装やら装飾といった物だ

扉を開くと世界がガラッと変わり、、いや、汚いとかそういう感じでは無い、何と言うか、あまりにも


浮いている


うん、決して重力の話をしたい訳では無い

具体的にまず目についたのは床や壁、コレは衛生環境と言えば良いのか?

『こんな所』 (しつれい)なのに王都より清潔、綺麗と感じる

全部分じゃないし近未来とか俺の居た世界程では無い、が明らかに山や森の中にある施設とは思えない


所々に飾ってある小物も多分その殆(ほとん)どが手作りだと思うのだがどこかモダン風

全然エルフっぽくないと言うか、凄く、全てに関して



違和感があるのだ



(う~ん例えにくい、和洋折衷(わようせっちゅう)とか?いや、多分使い方が違うな、う~ん)


三十路が少し首を捻りながら頭の中を探っていると部屋から手が先に出て来た


「お腹空いちゃったとか?お昼ご飯少なかった~?」


「いやいや十分でした、ありがとうございます」


「それなら良かった、でも昨日も夜やってもらったのに悪いよ」


「全然!それは大丈夫なんです、ってか俺らは客じゃないですし、あれッス、好きなんスよ料理とか家事系」

長い長い一人喋りの様なモノはとりあえず頭の中で終え、腕を捲(まく)って見せる


「そ~お?」


営業スマイルはどうも苦手だが今は自然な流れで笑顔を作れた



と思ってたのだが



「えぇ、なんなら料理しながら考え事すると整ったりするんスよ   しません?」


「本当に~?」

疑われている訳でも無いし意地悪そうな物言いでも無いのだが女性は軽快に近づき顔を覗きこんで来た

思っていたよりも低身長、大きな帽子を少し上向きに上げ、強い眼力で



しっかりと



「え、えっへ?  本当でっすよ?」


「、、、、ふんふん、うん、そっか それならじゃあお願いしちゃおうかな~、ふふふ戸棚とか勝手に開けて調味料関係は好きに使って良いから」


「は、はい~」


気持ち悪い声は出たが腐っても営業あがり、それに上目遣いと言うモノなんて幼女で慣れている!

だから人に不信感を抱かせないくらいの爽やかさで返答出来た (ウソです)


「よ~しな~に作っちゃおうかな~」


三十路は再び気持ち悪い声を出しながらウキウキと足早に、いや、逃げるかの様にキッチンの方へと向かった






そして






(火ぃ焚く前に窓開けないとな~  換気換気)


「あ~ったく!しっしっ、ってしちゃうと良くないんだっけ?」

追い払おうとした手を引っ込める

「どうすんだっけかな~全く、こんなトコまで付いて来てんのかよ」


(いや何日も付いて来てるはずないし流石に別のか?畑のなんか狙って来たとか !? ってあれは? ライアの 知り合いとか かな?)



今見ていたモノとは別の翼



大きな翼を背に携えた






二人の男が空から降り立った



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