262 懸隔
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
2/25 15:00
「お、どうもどうも毎回すいませんね!言えば荷運びくらい手伝いますってのに」
「あはは、いえとんでもない、少しは鍛えないとなぁとも思ってまして!」
決して嘘を言っている訳では無い
「ふぅ、えっとコレで全部かな」
茶髪の青年は木箱を足元へ降ろし、額に滲んだ汗を一拭きしてから数を確認する
「またまた~、よっこいせっと、はいよ!こっちからのはコレで全部だ」
中身に差はあれど、今しがた行商人が並べた積み荷の横に丁度倍の数が積まれた
「うへぇ流石ですね~私もこれくらいでヒィヒィ言わない様にしないと」
「な~に言ってんの~リッツさんは肉体労働なんかしなくても食ってけるでしょうに」
「そんなそんな、、と言うより借金まみれなんですよ~?」
「まっさかぁ!?アレだろ、どうせ投資的なやつなんでしょ?美味い話あったら俺も乗っかりたいもんだけどなぁ」
「いや~まぁ半分?そうですけど、はははは」
ここはディーン王国
商品の受け渡しをしたのはいつもの広場、知った顧客、、魚介の類だ
今ほど並べた台詞は真実、本当に嘘では無い
借金の件に関しても、少し鍛えたいと言う台詞だって全てが本音である
(港町でもそう、旧都の時だってそう)
ついこの間、四日程前だって目の前で見せつけられたばかりだ
無論、これは誰が考えても比べる相手も悪いのだが、、
それでもこの青年にとって
『役立てた』と言う事と『男のプライド』と言うのは違うらしい
戻った馬車の荷台
その片隅には王都を出発する前にとある少年から譲ってもらった木剣が立て掛けてある
まぁ惚れた腫れた、それだけが理由と言う事でも無い
残念な事にこの青年
行商人であるにもかかわらず一昨日からディーン王国を出れず、次の取引先に向かえないでいるのだ
なんせ未だに著名人であり国宝扱いの研究員キドナが行方不明のまま見つかっておらず関係無い所でも暴動が続いている
王都での一件、魔族の事など気にならない程こちらの方が治安悪化に歯止めが掛かっていない
慎重になってしまうと言うのも無理は無いのだが、住人や他の行商人に護衛を取られ足止め状態なのだ
「、、はぁ」
リッツは馬車にもたれ掛かり、珍しく暇そうに溜息を吐く
(別にあそこまで強くなろうなんて思って無い、だけどせめて守られる側じゃなくて、護衛が要らないくらいに、、あれ、あの人達っ!)
「ど、どうも!奇遇ですね!?こんばんわ」
逃す訳にも行かず咄嗟に声をかけた
「ん~?あんたはえっと確かぁ~」
彼はここでもまた幸運に
「姫様の、いや、ジンさんの店で見た」
「行商人さんでしたっけ?」
あの店での恩恵を受ける事になる
「はい、リッツと言います、折入ってお願いがあるのですが!」
・・・・・・
「あぁなるほどね、良いじゃん良いじゃん俺らも一回戻るかって思ってたんだし丁度良ぶほっ!」
勝手に話を進めていた罰だろう
「だからなんで毎回」
「お前が決めるんだ」
後ろの白黒から強めの制裁を頂く
「おぅぃっ、馬代も浮くし良いじゃね~か、、あっ痛い 痛い痛いってば」
「まぁ確かにね、考えようによっては危ないし」
「うん、早めに知らせておきたいのは間違ってない」
微かな情報を手に入れたエルフ達は本当に一度情報共有に戻ろうと思っていたらしい
やっている事とは別に表情は真剣だ
「カセンさん達、何か危ないんですか?」
「いてて、あぁ実は此処のディーン王なんだけどさ」
「、、なんか行商人さん、いやスティルもか」
「なんで嬉しそうなの?キモっ」
ピンチに再度駆け付けられるかもしれないなんて浅はかだ
だがハラハラ半分ワクワクも半分なのは男の子としてはしょうがないのかもしれない
スティルは白黒の二人を余所に話を続ける
「魔法でカラスにも化けれるらしいんだよ」
どうでも良さそうな情報に
行商人はもう一度似合わない溜息を吐いた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます