388 哀愁
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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周囲が大分闇に染まるもまだまだこんな時間だ
ある者は松明(たいまつ)、ある者はランタン等を片手に灯し、今も聖堂へと集まる人々は後を絶たない
基本的には巫女の帰りを待つ地元民が多く、賑やかで小煩(こうるさ)いのだが昨日の一件がある
その為、救いを求めに来た人達どころか貴族の様な身形(みなり)の良い者なんかも大勢いる
、、だからこそ正規の門を避けたのだろう
神父の墓がある、比較的厨房からは距離の近い裏門にて
「ういーす」
気の遣える初老が軽く手を振っている
「えー? はぁ はぁ なんだ~焦った~」
飛び出して来た三十路は確認出来る距離まで来ると一気に速度を落とした
「なんだって事無いでしょうよ?」
確かにその通り、失礼でしかないのは分かっている
だが真逆の様な存在である踊り子ギャルかと思っていた為、オジサンに対しての安心感が半端ないのだ
「サーセン」とばかりに軽く会釈(えしゃく)をしてから肩まで吸った呼吸を一度整える
のだが
「これ!ロゼちゃんの荷物ね」
その台詞に
「っ! ロゼになんかあったんですか!?」
再び息を呑み、反射で大きな声を上げた
鬼気迫る様な焦りと不安
恐らく瞳孔(どうこう)まで開いていたので多少迫力があったのだろう
「おわ、え、いや!ただ暇だったからさ でも途中で置いて行かれちゃって」
後退りをし、逃げる様に
「あ、それよりこっちの子」
後方に居た者を盾にする
それは
言わずもがな
大きく口をひん曲げた
エルフの族長である
先にキウエさんの話を要約すると
何てことない、騒ぎ立てる程の事では無く
、、いや、本来の目的を知らない人からすると「昨日国中であんな事があったんだから一人じゃ心配でしょう?」と言うくらいには大それた話ではある訳だが
(でもそんな事言う割に幼女を見失ってから放っておいてるんなんだよな~)
素性を多少知ってはいるものの 適当な人だなぁとは思ってしまう
まぁ、寧ろ
一人にしておくと心配な方を連れて来てくれたので有難いってもんだ
それに完全なる勘違いで大きな声なんか上げたもんだから少し申し訳無い気持ちもあるので
「良かったら食事してって下さいよ、今カセンが配膳やってるんで~」
とか適当な愛想笑いをして手荷物を受け取った
そして
本題の
間抜けな顔の方へと目を向けた
「う! ぁ ジn どuぉのぉ」
独特のイントネーションから入ってくる辺り流石過ぎるのだが
「多分俺呼ばれたんだよね? すぐ迷子になるのに一人?で来たんだ? ご苦労さん」
今は広げ過ぎずにおこう
「う、うぅむ」
「 皆、無事?」
なんて言葉を安易に出せたのは
この娘の出す空気感に当てられたからだろう
生真面目だからこそ今も
「あ、あぁあの あの ぬ あのの」と、まるで笑わせに来てるかの様な波打つ口元
ソレを
何時までも閉じきれないでいる
(良かった 間に合ったんだ)
「す! すまぬい」
充血させた瞳を忙しいくらいに右へ左へと動かしていたと思ったら
いっつも急だ
「うぇ? え な、どした」
噛み倒しながら、肩を抱かれたのでつい
こちらが目線を逃がしてしまった
それは単純に恥ずかしいというか、ビックリしたから、とかでは無く
儚(はかな)げな表情に変わったからだ
正に壊れてしまいそうな、、
だが
力強い声で
彼女は続けた
「すまない!あれだけ偉そうな事を言っておきながら ジン殿の、大事な店を守れなかったんだ 本当に申し訳無い」
「え?ソコ!? だけでは無いんだろうけど律儀と言うか何と言うか~ま、まぁ店なんて物はまた作り直しゃ良いんだから大丈夫だy」
「剰(あまつさ)え!私の迷いだけで仲間が、みんなが 全員!死んでしまう所 だった」
・・・
気の利いた台詞が出て来ない
それどころか、咄嗟の言葉すらも出て来ない
割って入られたままの間抜けな口元が何時までも閉じきれないでいる
やっぱり無慈悲な世界
それと少女の少ない言葉だけで
腹の底が焼けそうだ
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