389 紅涙
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
3/7 19:30
冬だからこそ真っ暗で
温度的にも外に居たく無い、そんな気温
そんな
本来の種族ならしっくりする筈の『似つかわしくない』時間帯
「ジーン、帰ったのよぉ!」
狭い住まいだったら迷惑な程大きな声量が聞こえた
それを待っていたとばかりに
「うおぉ~!おかえり~!」
らしくない感じに抱き抱えたので
「ふうぇ? うぉああー」
幼女は嬉しそうに
、、いや、それよりもまた三十路が泣きだすのかと思ったご様子で
「ど、どうしたのよー?」
焦り顔である
が
目の前のなんとも言えない表情
それと壁越しに聞こえる声を耳にし
黙って振り回されておく事にしたらしい
しょうがない
なんせ
今日一でほっとしたんだから
しょうがないじゃないか
現在、シエルの部屋を使わせてもらい
イケメンカセンちゃんがエルフの対応をしている所だ
(まぁこれもしょうがないじゃないk)
至って真面目な話
気休めでは無く確認も兼ねて
俺なんかからやっと出て来た言葉は
【 う ん、でも皆、生きてるん、だよね!?】
こんなもんだ
きっと酷い顔をしていたんだと思う
ハッとした様な顔で
【バ!バババ、ババァー様と巫女ぉどもも、おかげさまでだす】
なんて
逆に気を遣われた
こんな時だからこそしっかりしてあげたいんだけど
(言う方も辛いだろうに)
正直重たすぎて現状を聞き出すくらいしか出来なかった
(年長者の癖に、まだまだ駄目な大人で本当にごめん)
吸血鬼一体にやられた事
ジルバさんが助けに現れた事
チエさんが、シエル達が駆けつけてくれた事
悔しさ、憎さで胸が一杯だと言う事
そして現在進行形でケイちゃんが行方不明だという事
、、この辺りで様子見に来てくれた赤鬼がバトンタッチしてくれたって感じだ
薄情だなんて思わないでくれよ?
なんなら、頼りになれない事に申し訳無さはあるものの今回に関しちゃ自分が情けないなんて事は決して思ってもいないんだ
(一つは宛もあるし)
もう知っちゃってるから
そんな簡単に心をケアなんて出来無いって事を
おちゃらけてどうにかなる とか、そんなので良いんだったら何時間だってやってやる
スベろうが興(きょう)ざめされようが関係無い、例え詰(なじ)られようがしつこいくらいにサンドバッグにだってなってやんよ
それこそ
綺麗な物語の様に頭を撫でて抱きしめて、、とか、そんな事でどうにかなるんなら喜んで!
そんな生易しい
『何が出来るか』なんて
意味が無い
【あちらの王国に向かいこんな事をする意味を聞こうと思った、叩き切ってやろうと思った】
【私は 馬鹿だ! ジルバ殿に止められていなければ今頃!】
今だって壁越しに聞こえるんだ
「わわ、私は世界とか、そういうのは良く分からないがぁ!」
ドコゾノ議員さんの様に
「わ、わたし ゎ わたしわぁ˝!」
なんて言ったら失礼過ぎるのだが
「だいじょうぶ ぅっぐ だいじょうぶだから」
声を震わせ
「強くなるから うあ˝っワタシがぁ! 強くなってええ」
吠える勇敢な少女に
「み˝んなをぉ守る˝から˝ぁ˝!」
温い言葉は必要無いのだから
「ジン、ラフィ達はみんな無事だったって事で良いのよね?」
小声で幼女が囁くから
「ん、うん 大丈夫 大丈夫だった」
くしゃくしゃと前髪を撫で廻し
「ふふふ、なら良かったのよ!アルもね?エバも~元気だったし喜んでた!」
「 そっか そっかぁ 心配させただろうしな、報告出来て一石二鳥ってやつだったな~」
鼻と喉の突っかかりを誤魔化した
一度だけ眉間か目頭を強く押し
いつも長い事グズついてしまう自分なんかよりもよっぽど強い子達の為に今一度厨房へと向かう
大体の事は整理出来たし
今回は場所が場所なだけに
綺麗な懺悔で幕を閉じ
れる筈も無く
「だからねー、エバがね? 昨日みたいな時の為にってコレ!」
「え?」
「はい、ピンチになったら使えって」
無邪気な顔で
強引に持たされたのは
カチ カチ ゥィ ゥィー
今も微かに動く
「ほぎゃあああああああああ」
エバの片眼だ
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