163 苦言
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
12/14 16:30
(しかしアルちゃんも難しい子だったんだな~、いや、虫の居所が良くなかったの、、!?)
茶髪の青年は見知った顔を見つけると荷物を足元へ降ろし一礼をする
「お久しぶりです! こんな所でどうしたんですか?」
「あれれ!リッツ君じゃない元気だった?」
魔女の様な大きな帽子を支えながら少し上を見上げ明るい声が響く
ここはディーン王国内の賑わい所
辺りには屋台の様な店がそこそこ並んでいる
「奇遇だね~仕入れかな?」
「あ、逆です逆 港方面からの海産物を! 重いんですよね~」
足元の木箱を見ながら額の汗を拭う
「馬車で近くまで来れば良かったのに~?」
「いや~食べ物扱ってる屋台ばかりじゃないですか、嫌がられるんですよ~、お客さんの嫌がる事には目を光らせておかないと!」
「へぇ~気が利く事、流石だね~」
「いえいえ、貫禄も無いのでこっち側でアピールしないと相手にされませんからね」
ふふんと少し自慢げになってしまうのは年相応、まだ若いからこそだ
「、、、でチエさんは? 珍しいですね~こっちの国まで商売ですか?」
「別の国では凄い売れてるって聞いちゃったからね、でも違うんだ~」
どこかの赤鬼の様に「くふふ」とも「ひひひ」とも取れる笑みを浮かべながら手持ちの地図をリッツに渡す
「此処に行きたいんだけどどうにも辿り着けなくてさ」
その地図の目印であろう赤い丸が書き加えられているのだが
「コレって」
「分かる~? 連れて行ってくれると助かるんだけど、何ならそこのイカ焼きくらいは奢るよ?」
「今から売る商品じゃないですか!」
「あっはっは別に仕入れて売ってから買っちゃダメとか無いでしょ~」
「問題は無いですけど、と言うか別に道案内くらい無料でしますって、日頃からお世話になってるんですから」
「本当?」
「あの、でもですね~この地図なんですけど」
「うんうん」
「王都の地図です」
やっちまった、プギャーとばかりに、からからと笑い声が響く
・・・・・・
「しかし、困ったな~せっかくここまで来たのに」
「ディーン王国は初めてなんですか?」
二人はイカ焼きを手に近くのベンチに腰を掛けた所だ
「そうなんだよ、まぁ あまり来られて欲しくも無いんだろうけどね」
・・・
「お子さんとかですか?」
らしくない話っぽかったので当たらなくも遠からず、おふざけにも出来そうな話題を選んだ
「あはは 娘? 孫かな、そんなのはいなくもないけど逆かな~父親みたいな恩人、かな」
大きな帽子を軽く撫でてから手持ちの食材を頬張る
「お孫さんいらっしゃるんですか!? あ、う~ん、、お名前とかも分からないですか?」
「むぐむぐ 可笑しな話でしょ~そうなんだよね~、占いであまり良くない結果だったからさ忠告、、いや苦言、してあげたくてね でもでも!自業自得だから、しょうがないんだけどね」
眉を下げニコリと笑うと迷惑そうにちらつく雪を見上げる
「特徴でもあれば少しは検討付くかもですよ、何か目立ったりする種族とかではないですか? 角があったり、羽があるとか! あとは、あ~!髪が黒いとか」
某喫茶店のマスターの顔が浮かぶ
顔は広い方だという自負はあるのだが正直、場所も名前も分からない相手を探せる気はしない
ヒントの一つくらいは欲しい所だ
「特徴、特徴う~ん 困った事に姿を変える事も出来るんだよ」
「え?なんですかソレ、変装名人なんですか?」
「変装と言うか、魔法だね~ あ!!そうだ、隻眼(せきがん) 彼は片方の瞳を失っているから別の姿になっていてもそこは変わらない筈だよ」
「片目の男、、すいません、顧客の中にそういった方はいませんね」
少し考えるも大事な客の顔を忘れる訳も無く、すぐ答えに辿り着いてしまう
「そっか~、しょうがない出直してみるとするよ」
食べ終えた串を備え付けの箱へと放りパンパンと手を叩き立ち上る
「いえいえ、お力になれずにすいません」
「こっちこそなんかごめんね、じゃあまた春先にでも」
「はい、また商品買わせてもらいますね」
リッツも立ち上り、仕事の続き、交渉先へと足を向ける
が
「リッツ君~~~~」
すぐに後ろから声がする
「え? あ、はい!?」
「森の方に行くにはどっちに行けば良い!?」
(この人は、、本当に商人として大丈夫なのだろうか)
青年は営業スマイルを浮かべると足先を変え、丁寧に案内へと向かう
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