200 責任

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/9 19:30


「フェリ~スご飯にするよ~」


「オォ ワカッタ!」

掠れた声が部屋中に響く


「フェリス!シーもうちょっと小さい声で シー」

眼鏡をした優男は人差し指を立てながら薄い壁の狭い部屋に入る


「ア アアオウ ワカッタ シーダナ シー」

同じく人差し指を立て、同じポーズをするが声のボリュームはそれ程下がっていない


ここはとある研究施設の小部屋

青年は仕事前に質素な食事を摂る所だ

狭い部屋で大きな尻尾が床を掃除するかの様に動いている


「キーロ ウマイカ?」


「、、うん、美味しいよ?」

覗き見る犬耳を軽く撫でながら微笑みを浮かべる


「ホントカ?」


「うん、美味しい美味しい」


「ホントカー、、ソウカー」

一度だけ溜息を吐き

一気に茶わんを掻き込み、隣の汁物で流し込む


「あっちのご飯が美味しかったからね、もう少しだけ、、何か付け合わせでも持ち込めば良かったね」

苦笑いを浮かべもう一度大きめの耳を撫でる


「オレ アレガタベタイ」


「ん?お肉?」


「チガウ! アレ アカイヤツ」


「赤いやつ!?赤いやつなんかそんなに食べたっけ?」

思わぬ色の食べ物に青年は首を傾げる


「アレ ウマカッタ」


「赤いやつか~、もう少しでお休みもらえるから色々と買って来るね」


「ホントカ!!?」


「シー! フェリス シー!」


「アア シー ナ シー」



(きっともう少し)



(もう少しだから)







12/15 10:00


『あの日』


ルイを見捨ててしまった次の日

代表キドナは大王ディーンと軍師レイ、ニールを含めたメンバーを迎えて報告を行った


謝罪をし、ありのまま

何一つ誤魔化す事もせずキーロから聞いたままに


次の案として、まずは原因追及を行いたいので直接森に出向きエルフと接触を試みる事

可能であればルイの亡骸の回収及び解剖を行う、と提案をしたが即時に却下された


「危険過ぎますね、それにラボや研究所の管理はどうされるおつもりですか?」


「キドナには他にもやってもらいたい事が沢山ある、こんな所で失う訳にはいかないのでね、分かってくれ  それよりも・・・」


軍師と大王は従者を見ると従者ニールは手際良くキドナの前に何枚かの書類を置いて一礼をする


「一段今回の件は忘れてもらって構わない、エルフとは我々で蹴りを付けるとするよ それよりもレイの持っている施設側でトラブっていてね、『優秀な人材』がいないものかと探しているのだ、当てはまる様な候補者を何人かあげて欲しいのだが」


「トラブル、えぇそれは起こるでしょうね?あの様な事ばかりしていれば、内容は、、なるほど」

キドナはささっと書類全体に目を通してから眉を寄せる

「コレは、キーロが欲しいと言う事で良いのかしら?」


「そう言う事では無い」

「少しやり方が回りくどい様に思うのだけれど?」


間髪入れずに、珍しく感情的なキドナを見るとレイが話を始める


「指名制度で良ければキーロ君でも良いのですが、ここの人達は仮にも貴女の部下ですから?私達には適任者が分からないのですよ」

軍師が眼鏡を外し胸元へとしまう

「それに、、許可はいるでしょう?」


・・・


「適任でしょうね、私は構わないわ、でも勤め先を決めるのは本人次第でしょう?」


「そうか、であれば」

大王が早々に立ち上がる


「待ちなさい、私が言うのもどうかと思うのだけれど一つだけ、条件があるわ?」




「あぁ」




「構わないよ」





・・・・・・





コンコン



「え ぁ、は、はい! あ!ちょっと、少々待って下さい」


急な来客にバタバタと


目元を強く擦り、重みのある扉の方へと向かう


「どなたでしょう、か!?」



扉の向こう側の人物



壁の様に大きな大王を確認した青年はそのまま



床に頭を擦り付ける

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