227 揚物

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/20 20:00


「うぅ~ごめんなさい」


「カカカカ、なぁにこんくらい大丈夫じゃよ、いきなりこんな量を持たせる方が悪い」


「そうですよ? 仕事は失敗して覚えるものですから」


「あぁその通りだ、これくらい何の問題も無いのだぞ? む、うむ?そうだな、ジン殿が良くないな」


ぶちまけたモノの破片をエルフ達が片付け、従者が熱湯をかけながらモップで拭いている

、、赤鬼だけはそんな事お構いなしに自分で持って来た瓶を一人傾けているだけだが



「ズルくない?あの言い回し、俺絶対勝てないじゃんってか俺が悪いまで言われてんじゃん」


「う~ん、大人なのでしょうがないって事ですよ」


軽く頭、顔を濯(すす)ぎ、服を替えて洗面所から出るとバルがドリンクを作り直してくれている


「まぁ大人ですけどもさ、え~一番がロゼなんでしょ?んで二番目に年上の奴がアレよ?もう訳分かんないな」

目線の先は勿体無さそうに破片の残りを摘まむ巫女だ


「ははは、あ、でもそういえばカセンさんだけ年齢不明じゃないです?アルが前に聞いてみるとか言ってましたけど」


「ん?あぁそういえば確かにね、勝手に二十歳そこらだと思ってたわ」


「知識も豊富ですし、もしかしたら一番上だったりして」


「、、あの喋り方だしありえるかもね、ここにきて本気のロリババアか!?」

(いやロリでは無いからロリババアはロゼになるのか?)


「ジンさんなら聞いても問題無いのでは? っと、出来ましたよ~」

全員分のドリンク(ラフィにはノンアルコール)を作り終わり、バル自ら配りに向かう


「おおぅありがたいけど全部やられちゃうと俺の出番なくなっちゃうじゃん、、しょうがないつまみでも作るか」


皆のお気に入りとなった例のヤツ

簡易的だが専用の網まで作ってしまったのでもはや得意料理?と言っても過言ではない


アレである


大量に皮を剥き、刻み、油を熱してから投入する


揚げ時間を利用し、保冷庫から冷えたのを持って来たので逸早(いちはや)く揚げたてを味見する


(うん、やっぱ揚げたてのコレとキンキンのコレ、、ヤベェな)

一回目の物を皿に上げながら早々に一杯目が空く


「ほいよ~誰か持ってって~」

何も考えずにとりあえずな感覚でカウンターに置いた


その声に反応したのは


「あ!私が」



お嬢だ



「んんん~ぁ、うん!?」

透かさずトレイの上に置き直し、カウンター上からテーブルの方へと一段降ろす


「お~ジン特製のヤツが揚がったのぉ」

(ぁ、やっぱり止めないんですね)


「お嬢様、ゆっくりで良いですからね」

(そうですかそうですよね)


「今度は大丈夫だから」

(うん、巫女の目付きが怖いから絶対にやるなよ!?)



・・・



「振りじゃ、ないからな?」(絶対だ!絶対だぞ!?)

ロゼがトレイを持った瞬間ポロっと本音が出てしまう


「へぁ?」

勢い良く振り向いた


その反動で幼女の手元から揚げたて薄切り芋が宙を舞う











前に











「うわぁっち、あっちゃちゃちゃ」

エルフの男がトレイ、皿を囲う様に覆い被さる


「お、初めて良い仕事したね」

「あれくらいなら食べれるか」


「大丈夫だよ!俺の手汚くないよ!?ってかもみちゃん酷くね?そこそこ良い仕事してるぜ俺」

苦笑いを浮かべるギャル男


のズボンを幼女が握る


「あ、あの、その、、」


「ん、あぁお嬢は火傷っつか怪我しなかったか?」


「そんなの、私は、、ぁ、ありがとぉ」




(ちょっと待って!?ええええええ!なんでそういうトコおおおおおおお前持ってくのおおおおおお)


亭主の心の叫びは届かずに


「うんうん、スティル!頑張った、凄いぞスティル、あっぱれだ」


だっさい族長の台詞だけが耳に残った

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