413 誠実
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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多少薬品臭い、、と言うよりも消毒臭のする部屋の中
「打身ね、何処かにぶつけた程度だから大丈夫よ、そんなに騒ぐ様な事じゃないしこれくらいなら放っておいても問題無いから気を付けて帰りなさい」
軽傷患者を診終わると直ぐ次に運ばれて来た男を担架から移す
「全く 此処は病院では無いのだけれど」
簡素なベッドに寝かせ
脳内で換算、シュミレーションする為に並ぶ者達をじっくりと確認する
のだが
「え、待って!」
考えるよりも先に口が動いてしまう
「先程D室に移送した人より先に出血の多い彼を優先してあげて? それと奥に居る子供達には念の為下で精密検査を受けてもらいましょう」
これは朝までの記憶が無い、もしくは薄い者が多いからこそ緊急で介抱していると言うだけだ
「うん うん えぇそう、今後影響が出るかもですから魔力検知してデータは残した方が良いと、、思います」
途中、我に返ったかの様
腕の時計を確認した
(歌が止んでから五時間程 か、流石にそろそろ動きが出そうだし、戻らないと)
少し疲れた表情を隠し
手早く『出来る事』だけを済まし
気付けば
二時間が経った
「えぇ、はい、救護班の方からも詳しい説明が入ると思いますが順に投与する薬剤のリストを簡単に作ってありますので はい では、お願いしますね?」
焦る事なんて何も無い
想定している事は全て起こり得る事、問題はどう対処するかだ
その時自分が取るべき行動をしっかりとイメージし
足早に出口へと向かった
大分汚れた白衣を放り
キチっとしていた格好さえも崩した女は括った髪を雑に解く
「ふう、証拠隠滅しなくても良いなんて随分と都合の良い魔法なのね、、民衆を騙す事でさえ遊びと同等なのかしら はぁ」
一人小さい悪態を吐くと深呼吸で整え
誰も居ないのを良い事に
「範囲は予想通り、効果も思ったより薄め、怪我人は少ないし死者なんて居なかった 恐らくは問題事にもなっていない筈、、成程、対処できないレベルじゃないわね? でも、国一つ分ともなると強弱が割れるだけなのかしら 」
考えをそのまま口に出し、一番近い給湯室へと足を向けた
その時
ドカン
なんて
本来聞こえる筈の無い音がした
在り得ない、此処は防音区域だ、もしそんな爆音がするのだとしたら
施設内
もはや侵入されていると言う事になる
(やはり私が居ないのを良い事に紛れて入って来たのかしら、だとしたら狙いは勿論)
脳裏に浮かぶのは柄の悪い連中、、では無く眼鏡の青年だ
「あぁやっと一段落しましたか」
ふと聞こえた優し気な声に
ギクリとした
状況的に予想外では無い
だが
「っ!!?」
身構えた
聞きたく無かった声が近くから
いや
目の前の給湯室から聞こえたからだ
「随分大きな音がしましたね? 考えている事は似た様なものでしょうに、、まぁ、何か気に入らないモノでも見つけたのでしょう、それよりもどうぞ お疲れだったのでしょう?」
呑気にトレーをこちらに向けたのは長髪の男
この国に居るのなら誰しもが知っているであろう有名人
軍師レイ本人である
その距離ほんの数メートル
とてもじゃないが逃げられる距離では無い
「 貴方が直接来ちゃいましたか、アポイントメント、、なんて言っていられませんね」
似合わない苦笑い
「ふふ、早い時間からお忙しそうで」
「えぇ、むしろ受付に居た方が貴方達を連れて街中までドンパチ騒ぎを起こせたかもなんですが」
似合わないはったりと用語
「、、随分と口が悪くなりましたね?」
想定内だからこそ
「用件をお聞かせ願えますか?」
少しでも時間を引き延す
「ふむ」
男は生返事をしながら溜息を吐き
「それはこちらが聞きたいくらいなのですが」
冷たい声が響くと
瞬時に空いた方の手でハルの細首を握った
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