237 策士

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/21 20:00


(ドラウプニルっつぅのかあの腕輪)

「大臣、何をおっしゃっているのですか?」

少女?がわざとらしく小首を傾げる


「、、何を言っているのですか?」

大臣であるフォメットは少しだけ眉を寄せた


「バル王子?急にどうしたんですか?どこぞの王子がどこから沸いて来たのでしょう?」


「巫女、いえメイデン、貴女が先程会わせたいと」

「この男は一般市民ですが?」

巫女シエルは間髪入れずに言葉を遮(さえぎ)ると形相を変え睨みを利かせた



・・・



「ふむ」

間をおいてからフォメットは右人差し指を上げてみせる

「いえね、巫女と共に行動していると言う噂を耳にしてましたので  ね」


「それだけでこいつがバル王子になるかよ、誰も名乗ってねぇだろが」


「イニシアチブ、主導権を取りたいのかと思うのですが口が悪いですよメイデン、慎(つつ)みなさい」


「はっ、巫女様に説教とは随分とお偉いんだな」

「特徴がそっくりじゃないですか、間違えてしまっただけですよ?ちょっとしたミステイク、ミスアンダースタンディング、あるでしょう誰にでも?そういった勘違いや誤解なんて」

今度はフォメット側が被せるかの様に台詞を羅列する


「、、あ~はいはい、そしたらよ」

シエルは一息だけ、ほんの一呼吸だけ思考を整え



勝負に出る



「なんでこのわっかがドラウプニルなんだ?」

いつも通り「ぁ?」とでも言いそうな口調でバルの腕を持つ

「これは手作りしただけの木のバングル、来る途中に削っただけのもんだ」


「、、木製?そんなバカな?ソレはまさしくドラウプニルでしょう!」

大きな声を上げた後に苦い顔をするがすぐに気付いた様に撤回を始める

「いえ、いえいえ王子が持っていたと思い込んでいたので見間違えたのですよ、良く見えなかった、そうですね正に木製だ」



「馬鹿か?どう見ても木じゃねえだろが、嘘だよ、ドラウプニルで合ってるっつの、、やっぱりあっちとこっちで上手い事連携取れてねぇんだな」


「なんの真似ですか!?そもそもですが!そんなものどちらでも、分かっているのですよ?偽物の王子がまず目の前に来た段階で何かをしに来た事は疑って掛かっていましたからね!」


「驕(おご)ったな」


「貴女の推理?とでも言うんですか?正直雑だと思いますよ?何か情報が欲しいと言うのならもっとディテール、細部に拘(こだわ)るべきですね、お話になりませんよこんなもの私に押し付けてどうしたいというのか」


「もはや苦しいっつ~の」

シエルは言訳の様に早口で捲くし立てる大臣に向かい

やれやれと首を振る


「な、なんですか?」


「なんでバル王子が偽物なんだよ」


「自分で一般市民だと言っていたではないですか!」


「コイツはな?」


「またそんな事を言っても誤魔化されませんよ?バル王子は亡くなっている筈です!もうこんな問答に意味を見出せませんので私は帰らせてもらいます」


足早に立ち去ろうとする後ろ姿に


鋭く


止めの様に



「死んだなんて情報どっから聞いたよ」



一撃が入った



「ソレ知ってんのはそっち側の奴だけなんでな、、何でも良かったんだよ、解(ほつ)れりゃ」


巫女は後ろの大勢に聞こえる様に少し声量を上げる


「覚えとけ、この世は嘘の情報ばかりだ、自分で確かめない限り信じるもんじゃね~ぞ!」


何の言い合いだったのかも全員には聞き取れていない


恐らくは何が何だか分からなかっただろう


だが


少なくとも


白銀の巫女の方が正しいのだという空気感だけは伝わった




のだが




「ふぅやれやれ、小癪(こしゃく)な、本当に生意気な」


「観念しろ、てめぇの目的はなんだ」


その言葉にフォメットは振り返り


まるで何の問題も無いかの様に、悠長に


再び話を始める


「繁栄ですよ?あなた方、こんなにも大勢な者達がそれ以上は知る必要の無い事です、国の運営と言うのは知らない方が良い事も多いのですよ」



そして



「これ以上は面倒です、やってしまいなさい」



この場でこの上無い程








「レッドナイト」



怖い者の名を呼んだ


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