236 計略
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
2/21 19:40
「 ル」
「エル 」
「シエルさむぁっふっ!」
揺さぶり過ぎた従者の頬、、いや
顳顬(こめかみ)から頬骨辺りを斜め上からグーで殴りつけられた
「mgyaぁあああ」
「お~お~お~ありゃ~痛そうじゃのぉ」
「、、巫女様はアレですか?体術も使えるとかなんですか?」
此処に被害者である従者を特別本気で気にする者など勿論いない
小生意気なツインテールやお喋りなドールが居たとしても恐らく同じリアクションであっただろう
逆にこういう場面ではあっち側に向かった天然エルフかお子様吸血鬼の方が心配してくれたのではないだろうか
不機嫌に起き上がった少女?は一度袖で顔を拭うと前に転がる従者に容赦無く追撃の蹴りを入れる
「ちょあっぶ、酷い!」
蹴りを間一髪、掴んでから立ち上り
「いたたた、大丈夫ですよ!敵じゃないですシフですよ? 寝ぼけてたりしません?しっかり起きて下さ~い」
頬を擦りながら煽るかの様に巫女の顔へと寄る
「ぁ? あぁ、そうか」
寝起きでも判断は出来たのだろう
半目のまま眉を寄せ
従者の頬を軽く、優しく、一撫ですると
ゴリッ
と音をさせてから馬車を降りる
・・・
「く、ぷふふ、カカカカ!なんじゃシフはやっぱりドエムなんかのぉ」
「あの芸風、本当に真似出来ないですよね」
敵地かもしれないというのに何を見せられているのか
地に足を着けた巫女は少し赤みがかった自らの額を擦(さす)ってから伸びをする
ここは王都城前関所
馬を置き、徒歩10分程すると城内への入口に辿り着く
時間も時間こんな所通常であれば集う様な場所では無い
入れ替わりの数分、何かのイベントでも無い限り本来であれば引継ぎ業務くらいの静かなやり取り場だ
「おおおお!巫女様だ!」
「カセン殿もいるぞ!?」
「巫女様~~~!」
「白銀の巫女~」
そう
白銀の巫女(プラチナシャインメイデン)
それとレッドナイトの帰還
それだけで辺りは騎士達で溢れかえっている
人は縋(すが)る生物だ
国宝である神父ゼブラを失ったばかりと言うのも大きいのだろう
人が人を呼ぶ様に、あっという間に大盛り上がりである
一人だけ
馬車の中で眉間を抑え悶える従者だけを余所に
「あたたたた、酷いですよ~まったく~」
従者の小言は掻き消され、勿論巫女には届いていない
(思ってたよりも凄いな、この人数がプラスとなるかマイナスとなるか、どちらにせよ注意しておかないと)
木を隠すなら森の中
従者は『居る』であろう相手を警戒し、気を引き締め直す
のだが
気が緩む様な人物の声が聞こえて来た
「城の外、エントランスから少しノイズが騒がしいと思い出向いて来てみれば、これはこれは、こんな時間に如何しましたか?
白銀の、いや プラチナム シャイン メイデン!」
少し溜めてから軽いドヤ顔をするのはスキンヘッドの大臣
フォメットである
(プラチナムって、、)
「えぇ、この度は確認したい事、いえその前に会わせたい者がおりまして」
目を瞑るシエルが後方に顔を向ける
と同時、一歩前に出てから膝を地に着けたのは
「多少のレガシーは重ねて来たつもりですが、正式なハウトゥーではタイムロスが生じる為、直接馳せ参じました」
難しそうな表情をしたバル王子だ
!!?
「ぷ、ふふ」
巫女と従者が懸命に堪えているにも関わらず赤鬼が軽く吹き出し、斜め前のバルを見る
(何言っとるんじゃ?)
と噛み締めながらよくよく見ると
(自分でも分かんないです)
とでも言いたそうに口元がヒクついている
それが返って赤鬼を苦しめ、肩を震わせる
そんな中、前方から返答が返って来た
「貴方は」
都合の良い事に松明(たいまつ)の照明は多少距離があり、大臣が居る距離からは『ふざけている』様には見えなかったらしい
いや、それだけではない、単純に
「もしや、いえ、もしかしなくても、バル王子ですか?」
大臣の感覚がズレているのだろう
・・・
いや、それも違う
バルは分かり易く腕を捲(まく)って
見せている
「それは、なるほど ドラウプニル そうですね」
大臣フォメットは「良いですね」とばかりに顔を斜めに向ける
その前でゆっくりと
巫女の口角が上がる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます