235 薄氷

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/21 17:30


いつもなら

いやいつもと呼べるほどでは無く時々か、偶(たま)にバルやカセンに引率を願い木材の調達や木の実などの採取をする事がある


ギルドから徒歩で北へと約一時間

目的のエルフの森へと到着するのだが




はぁ  はぁ  はぁ



「でね!その時にはラフィがね?」


「うん、うん」



ぜぇ  はぁ  ぜぇ  はぁ



「必殺技で一回私を、あ、いや違う我を、我を一回斬るの、でね?そしたらね」


「必殺技、う~む必殺技か~」


「ねぇ  まっ、ちょ はぁ ちょっとまっ」


前で盛り上がっている幼女には悪いのだが後の事を考え、早めに凡人が声を上げる


「まっちょ?」


「む?」


スキップをする幼女と引率の先生の様な美女は足を止め、同時に三十路の方へと振り向く



森への侵入はまだ浅く、最悪店に戻れる程の距離

まだまだ険しさの無い道のりで入ってから一時間といった所なのだが


違う、そうじゃない

体力無いな~とかそういうアピールじゃない、そうじゃないの、聞いて!?


本日は森まで来るのに30分から40分程だった

いや、早歩きでまぁ?最近体力付けて来てるから問題無い筈だったさ

ちょっと疲れたけど違うんスよ、まぁ聞いて?


ロゼが森に入るや否や

「この虫見た事無い」

とか言ってカブト虫かの様にアイツを鷲掴みして目の前に持って来やがった


そりゃ~走ったよ?めちゃくちゃ


全力疾走、足がもつれかけるくらいの


、、で!

その反応が楽しかったんだろうよ?

追いかけてくるのよ


ニッコニコで

「ジン~ねぇ~ジン~」とか言いながら!

軽々と追い付かれたさ、流石?の吸血鬼だよ、マジでヴァンパイア怖え




その後はちゃんと幼女の手を消毒液まで使って綺麗にもしてやりましたとさ




そのまま何事もなかったかのようにペース落とさずの一時間


これくらいにはなるってものだ



「ジン殿、気が利かなかったな少し休憩するとしようか」

美女が申し訳無さそうな顔で寄って来る


「ごめんな はぁ けど先も長いだろうしさ」


「うむ、すまないバルからも言われていたのだがな、私も少し楽しくなってしまっていたのだな」

先程はプギャーとばかりに指差し爆笑していた残念美人


ニコリと微笑んでから首元のタオルを解(ほど)くと躊躇(ちゅうちょ)せずに額、頬 と優しく拭ってくれる


(ふおおおおおおこんなん惚れてm、、ん˝、う˝ん ドキドキしてしまうってものだ)


咄嗟に息を止めながらロゼの方へと視線を逃がす


「クックック、人間はやはり虚弱なのだな」

(誰のせいだだ~れの、だけどなんかちょっとありがとうございます!)


ラッキースケベでは無いしGの事は許さない


だが楽し気なキャンプはまだ始まったばかりだ











同時刻、


「んっくんっく、、しっかしジンを店から出したは良いが樹海巡りなんぞ耐えられるんかのぉ」


「え、あっちの人員配置やっぱりわざとなんですかね?」

バルは後ろで早々と横になっている少女?をちらりと見る


馬を休めるついでに早めの夕飯を済ませた王都組一行

従者は近くの川へ水を汲みに、赤鬼は三十路の亭主を心配しているかの様な台詞を吐きながらも飲酒を始め、にしし顔である

一方、今更到着時の『策』を説明されたバルは必死に台詞を考えている所だ


「あ~どうじゃろなぁ?ま~でもほれ、狙われる可能性は大いにあるじゃろ?」


ジンが皆に見せた薄い板、スマホで見た情報が脳を抜ける


「旧都で殺されかけたのも恐らくじゃが、ソレが狙いじゃろ」


「色々繋がっては来ましたけど   !?  もしかして、あぁ、そうか」

バルは少し考えた後に気付いた


だが閃いたにも関わらず嬉しそうな表情にはならない


「じゃろうな、ジンを殺すだけなら一瞬、数秒もかからん筈じゃ」

赤鬼はやはり鋭く汲み取る


「、、賢者の石」



(殺すには惜しかったからか)



「本来なら誘拐でもされとったかもしれんのぉ」


「猫忍が救った訳じゃなかったと?」


「あ~いやそこはももがおったからこそと思うんじゃがな」


「じゃあ、急ぐ理由があった?、、って事は?キーマンはもう一人担いでいたって言う」


「そうじゃの、ジンが見たって言う特徴通りであればあのわんこである可能性が高い、、ソレを抑え込む為に急いだ、とかそのへんじゃないかの?何分アレは」




「あるべき生物のソレでは無いからのぉ」




らしくない赤鬼の表情を察した、と言う訳では無く


「てめぇがそれ言うか?」


単純に聞き捨てならん!とばかりに後ろから声が上がる


「なんじゃまだ起きてたんか」


「   寝る」


「カカカ、余裕じゃの~」


バルからしてみれば(飲酒してるお前が言う?)と思いたい所なのだが


緊張感の無いメンバーを乗せた馬車はそれから二時間程で王都へと到着した


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