364 衝撃

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



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キラリと輝いていた銀色の刃は勢い良く突き刺さった

背を破り、深く、鈍く色を変え

先端からは真っ赤な血液を滴り落とす


「ぐぅ ふ、、こっちは フェイクだったと言う事か」


目線の先


「へっ へ  ざまぁ」

床へと転がったギャル男は折れた剣の欠片を掴むと隣の黒い方を抱き寄せ

上下の衣類と共に


抉られた患部を強く押さえる


懸命に脈、体勢を整え

滲(にじ)み出る赤を苦い顔で睨み  心で願うのだが






「夜の王を舐めるなよ?」






重い小言が響いた



「姫っ!!」

咄嗟に白い方が手を伸ばすも


止めとばかりに男へと切りかかった族長の剣は再び空を切り


ファルカタの柄、持ち手部分がラフィの頭部を襲う



ドッ



叫ぶ声すら無く


確認が取れたのは



ガッジャャァン



と食器の破壊された音が聞こえてからだ


ダーインスレイヴが宙を舞い

目線の先、厨房の奥に吹き飛んだラフィの体は棚を破壊した


呆気なく崩れ


一秒  一秒  と ぐったりとしたソレから止まらない血液が床を汚す



「   え?」


自身の後ろから聞こえた音へ目を向けるケイ

それと

「なん だと?」

切り取られた部分を押さえる大男は目を見開き



絶望を垣間見た



「はぁ  はぁ、ククッ、残念だったな 昼間、、いや 他の者ならまだしも  ぐぅ ぉ がああぁ」

男は自らの胸を貫く刃を掴み

「か ぅ はぁ はぁ、これくらい、即死には程遠い」

逆向きのファルシオンを血肉ごとに引き抜く



「そんな」


漠然と


「マジ かよ」


エルフらは虚空に呟いた


「ふん、我(われ)がバミー侯 ぐっ、、只の吸血鬼では無い、偉大なる 伝説の吸血鬼 だ」

決して余裕がある様には見えはしないものの



勝ち目は無いだろう



男はゆらゆらと歩き出す


目線を動かし

まずはと標的に決めたのは意外性を考慮され、無傷のケイ




では無く




ビュンッ!と矢を放った


もう一人無傷の白い方へと首を向ける


「まだやる気か  !?  ふっ、ふふふ なるほど」

近距離からの矢を掴み、握り潰し、納得した

「毒矢を傷口目掛け、、か?  今も真面目に勝機を伺っていたとは」


(もう一度)


今度は別の小瓶を選び、瓶を丸ごと短弓で構える


「お前達は本物の戦士なのだな」


「死ねぇ!」


「だが 運が悪かったな」


放たれた小瓶は


前に飛ぶ事無く



ボキンと音を立て



「うぅっ ぐぁああああああああ」


右手首ごと別を向いた


「相手が悪かったのだ、仕方が無かったのだよ   ふむ、混ざると気化でもする劇物だったか?」

ポロリと落ちたソレを確認する事無く踏み潰し、空いた左腕を掴む


「ぐっ モミジぃ」


「モミジさん!」


周囲からの声はとても無力で



どうする


どうする!


どうする!?


どうする!!?



巡る思考達は


首筋に立てられた牙を見せつけられ





停止した





「森の民よ 良くやったと称えてやるぞ? 血肉となる事はむしろ誇るべきだ」







大事な人

代表の安否も確認したい所なのに、体が動かない

脂汗が止まらず

兎に角、口に溜まるだけの生唾を飲む


嫌な空気


何も どうしようも無く

吸血鬼が加速し


覚悟が


全てが吹っ切れる










瞬間










「下品では御座いますが、扉では無い所からお邪魔致します」


少しだけしゃがれた声がした


後に



バヂン!



と高い音がした




俊足




いや




音の方が遅れた様にも感じた為

光速と言った所か


左の手でモミジを掴む腕を握り潰し


「ぬ˝っぶむ˝ぅ ぐ  貴」

右の手で男の顎を捉えると

「申し訳御座いません、先にこちらへと足を運ぶべきでした、、残りの連中へも手は打ちましたので諦めて下さい」



ドゴン!!



店の床が破裂したか如く飛び散り、地震の様な衝撃が走った



「ごっ ぶふっぁ」



(見えなかった)



何が起こったのか理解が追い付いた者は居ない


そんな中


「しかし、バミーを名乗る者がこの様な下郎とは、、些か複雑な気分で御座いますね」

涼し気な表情のまま辺りを見回し



軽く衣類を叩(はた)き



老紳士は身形を整え直す

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