363 堅持

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



3/6 1:30


「何? もう姫様寝ちゃってんだけど?」


「いやいやいや、姫様は大分前から寝てたじゃん ちょっと?こっちも地味に抓(つね)らないのっ」


「抓ってないよ引っ張ってるだけだよ、、さむぅ、明日早いって巫女様も言ってたのになんで俺らなの?」


「俺に言うなって、オルカもいるから多分留守番メンバーにって事なんじゃね?」


双子を女性部屋、、なんぞまだ無いので座敷から外へと連れ出し

八つ当たりを食らったばかりのギャル男が溜息を吐きながら保存庫の方を指差す



「来た来た、おやすみ前に申し訳無いです」


「あぁすまない、呼び出したのは俺だ、お前達にも共有しておこうと思ったのでな」


それは何処か不釣り合いな会合

片や中性的で柔らかな青年

相対するのは無骨で大柄の男


その二人が火を囲み、手に持った得物を眺めている


「仲良いね?まぁ連絡事項なんだったらしょうがないよ」


「ん、大事な事なんだろうし 聞いてから寝る」


「うおい態度の差!切り替え早ぇよ  ったくそういう所だよ?双子ちゃん、、はぁ~嫌な役回りばっかだな~おい」

分かり易い対応をされ、面白くなさそうな表情を浮かべながらも薪を一つ足し

「明日の朝でも良かったんでないの? シフちゃんよぉ」

エルフに囲まれた従者を見る


「あはは、いや~もうすぐ自分は王都へと向かうのでそうもいかないんですよ~」

いつも通り

何でも無いとでもいった表情のままくべられた火へと小さな鍋を乗せる


「は?こんな深夜にぃ!? さみぃし止めとけって」


此処でいつもなら即座にツッコミが来るのだろうが


「、、馬鹿っ  分かってる癖に、巫女様の指示でしょう?」


「流石だよね 比喩(ひゆ)じゃなしにシフさんは凄いと思う」


二人は少し違う反応を見せる


それもその筈だ


先程までの司会進行から皆に対しての的確な説明も然(しか)り

アノ巫女相手への助言

只の従者では無いという事はこの短時間だけでも十分理解出来た


何せ、彼女らはソレ専用に動いていた訳で、、


魔力と言う力

その考察力といい、単純に主への気配り、情報量、対応力


完全に仕える者として勝てないと感じた


悔しさ半分 憧れも半分



なのだが



「けどよぉ、仕える先が巫女様だったからってだけで~姫様だったらまぁたシフちゃんも違ったんじゃね?」


「、、いえいえ、まぁラフィも可愛らしいですけどそもそもシエル様以外に『仕える』意味を見出せないと思うんですよ、そこは人それぞれなのでしょうけど、そうだ試しに一日中シエル様を観察してみて下さい、きっとお守りしたくなりますよ?小さな口でモグモグした後に「美味い」と偉そうに言うじゃないですか? なのに顎(あご)に卵の黄身付いてたr etc」


・・・


「お、おん」


「あー、ん でも 分からなくも無い、、確かに巫女様小さいし、可愛いし」

「抱っこしてみたい気はする」


違う意味での憧れも半分


といった所で

「両人共に主を好きなのは分かったから、本題に戻すぞ?」

湯を人数分注ぐマッチョがギャル男の肩を叩く



スティルが「なんで俺に振った?」とブー垂れつつ

本題へと戻すとシフからの追加提案が行われた


【ジンさんが攫(さら)われる時の話ですが、ラフィ達が吸血鬼を確認しています  推測するにあちら側の中でまだまだそういった種族の者が居る筈、、ですので今の武器を改良する必要があります】



【方法は3つ、王都で新調するかドワーフ族に作らせます  もしくは個々で魔法等の契約を結び強化する等】



【結果論ですが今は時間がありません、、ですからコレを食糧庫に置いておきます、使って下さい】




【自分はドワーフからの手土産がありますから】











3/6 20:38


「ちぃ  通らねえか」


庇ったカエデを飛び越え

スティルが放った一撃は首の皮一枚で止まった


「ク、クックック それは只のファルカタ、特別なモノでは無いのだよ」


刃先を掴み、強く引き寄せられた


そのままに



ドス!



手刀が肩へと刺さった


「っぐぁ ぃ ぅが」


「ふっ、コレなら傷くらい付くと思ったか? 自分で握り潰さない様にと頑丈な物を使っているだけd !!?」


引き抜いたと同時


スティルから手を離し後ろへと飛んだ



鼻先に



グオォン と空を切った大剣



眼光鋭く



「やーぬxぎ ゃべ ぅ˝お˝おおぉ」


ヤメロと叫び

奪う様に抱え込むと回転しながら左腕で二振り目を放ち

自らの右手を噛み、反動で二人が落ちない様にと固定した



「なっ!いつの間に、剣 を?」


「貴˝様˝ ぁ、、うぅ ぁ う˝ ぅううぅ」


「くっ! だが狭い店内、全力では振れまい」

と言いつつも

もう一度、二歩、三歩と後ろへ仰け反り注意を払う



そして



「お願いします!」


鞭の先に巻かれた何かが吸血鬼の後ろへと放られた


「おおおおおおおおおおお」


「当たれえええええええええええええええええ」


少女の懇願




見事に貫通したのは









従者達の一撃

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