362 敗者

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



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「あ  あ あぁ」


黒い方が弓を下げる中


「っ!」


白い方が近くに転がった双剣の片方を掴み


「死ねぇえええ!」





ギャァアン





剣先がブレる事の無い様しっかりと両手で握っていたのだが



叩き折られた



「え」


「な、な んで」




吸血鬼では無く




「姫様?」


鞘から抜かれた大剣は振られたのでは無く

単純に握った刀身だけを横から、、いや、上から突き刺し? あくまで『叩き折った』のだ


衝撃は無く


大剣は豆腐を切るかの様に貫通すると地面に突き刺さった



「ふっ、ふはははは そうだな、そんなナマクラでは傷一つつかぬ  雑魚共は引っ込んでいろと言う事だ」

スティルを踏み付けたままに目線は多方面を確認している

「それとも?人質を増やし自ら姫の足を引っ張るか? 役立たず共が」


弓を構え直したモミジを嘲笑(あざわら)うと吸血鬼は足の力を入れ直す


「ぃ ぅぐあ  くっぉぁ」


「なぁに簡単な事だよ 戦姫の命まで欲しいって訳でも無い、ソコの大男だってまだ助かる!此処に居る者達全員が救われるんだ!」


要求など


聞くまでも無い


「分かった、分かった からその足を除けてくれ  さぁ早く、モミジはオルカの止血を、カエデは腕を氷に」

今にも泣き出しそうなエルフの代表が的確な指示を出す



「そうか、では   頂くとしよう」




!??




刹那


投げられた得物を避け  切れず

掠めたラフィの左肩からは血液が噴射する



「なっ!」


「姫ぇ!!」


「姫様!」


「ぐっ、大丈夫だこれくらい なんて事は無い、、何をす r」

霧の様に散る飛沫を右手で強く押さえた所に



強烈な前蹴りが入った



抑えた腕はパキンと音を鳴らし


軽い体はそのまま横へと反転、テーブルを巻き込んでから壁へと叩き付けられた


「クククッ、何って?取引通りに血を頂こうと思っただけだが、、駄目だったかな?」


「ラ、ラフィさん!」

厨房に身を伏せチャンスを伺っていた少女が飛び出し


ラフィの上半身を起こす


「ほう、もう一人いたか」


「う、うぅケイ 平気だ 下がっていてくれ」


「ふふふっ、なぁに悪い暮らしはさせんよ?  馬鹿だとは思ったが見た目は美しい、我が妻として生涯その血を供給してくれるだけで構わないのだ」

至って真面目な表情


狂った様な発言に曇り等は無い



だからこそ



「な? ぇう ぉ  え?ちゅ、ちゅま」

今の今

言われた通り『馬鹿な』エルフは信じられないとばかりに赤面を始める


「この場を収めるのには安い物だろう?  そうは思わんか?」



その返答


大声で返したのは



「ぐっぎぎ、ざっっけんじゃねぇぞ!姫様の枷(かせ)になるくらいならなぁ  はぁ 俺らは 舌噛んで死ぬっつーんだゴラァ」

歯を食いしばり


チャラ男と呼ばれる男が顔を上げる


(怪力だけじゃねぇ、速さも別格だ、、けど)

片手に今も握る自らの剣に目を移す

(見えはしなかったが剣に刃毀(はこぼれ)は無い  って事はだ)


確かに届いていた


だが


強度が足りない


単純に吸血鬼を切断出来る代物じゃなかっただけの事


息を飲み



チャラ男は





ツインテールでは無い少女に目配せをする





「ふぅ、今良い所なんだよ、邪魔だと分からないのか?  そんなに死にたいのなら」

「ま、まt」

「死んでもらおう」



ドン!







力を入れ







抉った







黒い方



カエデの腹部を犠牲に



「うおおおおお」



ケイが放った吸血鬼の得物



ファルカタを握り



スティルの一撃が首を捉えた







ビシャビシャ



床を汚す血は







血は







「う、うあぁあ あ˝あ˝あああぁぁぁぁ˝」





白い方   モミジが膝を着く中





狭い店内


「やーぬxぎ ゃべ ぅ˝お˝おおぉ だんでだぁ˝ なんで ぇ 」


血塗れの左手で剣を振り回すのは


カエデとスティルを折れた腕で抱え、、いや    自らの指を噛み  引っ掛け 抱き抱える



族長だ



負傷の腕で大剣を握り


涙を流し


「貴˝様˝ ぁ、、うぅ ぁ う˝ ぅううぅ」

震え 動かない腕、咥える自らの口を 緩め


「ひ め 」

「ごふっ  ぁ ケイ ちゃ   」



仲間の声を聞き取るよりも先に



動いたのは


「お願いします!」


ツインテールでは無い少女



もう一つ放ったのは



「おおおおおおおおおおお」


片腕の男が掴み



「当たれえええええええええええええええええ」



直線場のヴァンパイア


その胸を貫通したのは




銀色の




ファルシオン


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