365 予知
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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「・・・って感じでしてなぁ、ん˝っんがぁ、、っぷ ああ˝ぁ最近は不出来な者が多いので吾輩も中々引退出来ないでいるんですわ~」
がっはっはと豪快に笑うのは還暦を過ぎた老将
ギルドへと向かう馬車の中、今も運転席で紫煙を燻らせ少し下品に痰を絡ませてはいるが王都ではソコソコに名の知れた人物だ
その人柄、一言で言えば喧(やかま)し、、基 実力がある分、人に厳しく、友好関係を築くのにはかなり人を選ぶこの男
若い部下の間では口煩い程度の『ミツ爺』で通ってはいるのだが古株連中からは『ヤの者』として恐れられる程の猛将
元々は師団長として活動していたのだが現在は一個隊長として王に仕えている
「若い中にはソコソコの者が居ながらも何せやる気が薄い!いや、あれはもうやる気が無い、死んでいると言った方が良いくらいボーっとしおってからにぃ! 指導が行き届いていない癖に中堅の奴らと来たら欲深くて困る、、隊長格になろうがまだまだ小童、全く困ったもんったら無いですよーわっはっはっは」
軽快に疾走する馬のおかげで煙は後方へと流れる
そのままついでに
(話も流れて欲しいんだけどな~)と脳裏に浮かぶ
投げ掛けられた言葉に半分上の空、小言も小言、身分が違う全然関係の無い話で身にも入って来ない
なんせその助手席に座っているのは
「えーそうなんですねー あはははは~」
目線を合わせているのは大きな帽子を被った淡い色の魔女だ
眠気に揺れる体に抗い
わざわざ運転席を視ず、深く被り直せば少しくらいストレスの軽減にもなるのだろう
だが知っての通り素直な性格が原因だ
「王都の将軍様はやっぱり大変なんですねー じゃあ若いみんなの為にまだまだ頑張らないとですねぇ」
限られた情報を手繰(たぐ)り口を動かした
そもそも本日は早起きだった事もあるのだが治療の後だ
日頃そこまで動かないシャーマンからしたら病み上がり?の様な感覚 眠くてしょうがない
「なぁに、頑張るも何もそんじょそこらのもんには負ける絵が見えんですよ」
だが意識を飛ばさぬ様
「凄いですねぇ! あ、じゃあカセンちゃんとかはどうなんですー?」
懸命に話を繋ぐ
「う、ぐぬぬ、あんな小娘なんぞ、、アレには一度言って聞かせ無いとイカン 邪(よこしま)な者では無いにしろ、、」
これだけマシンガンを口から溢し続ける老将だが出発時には【寝てても良いのですぞ?】と気遣いもされた
だが、、
「あ~やっぱり頑張らないとじゃないですか~、あはは、応援しますから百歳を目途に引退までファイトですよ」
そうもいかない
ピリピリと痛む蟀谷(こめかみ)
後頭部にまで重く 沈む様な情景
残酷な壁画の様に
『視えていた』から
本日の出来事をその瞳に映した事があった
王都の方では無い、、
短編的にではあるのだが、あるからこそ!
(今日だったんだ、、)
キーマンはこの老将だ
送迎を申し出てもらえた時に視えてしまった
急げ
急いで
スティルと瘴気の調査に向かった時にはその後の出来事も視えた
あの子じゃない
ラフィも問題無い、最後の戦いまでは、、あの娘は無事な筈
表情が崩れそうで
強風に帽子を押さえる振りをして深く被り直した
決めたんだ
運命を変えられるのなら
私は抗う
お願いだから
無事でいて
・・・・・・
「ん、あぁん? 馬ぁ?」
もう何本目になるか分からない煙草を潰し
老将は目的地よりも少し前で速度を落とした
「こりゃまた随分と立派な、先客ですか な!?」
毛並みは只の運送用とは思えず、競技用とも思えない装飾
その鼻先
随分と冷えきった生首が転がっている
「、、お前、何故 こんな所に、、あれ程、、、 ばか者めがっ」
恐る恐る、だが抱えはせず、、照らしてから歯を食いしばり
周囲を警戒する
「え、ぁ うぷっ」
ムラサは口元を押さえつつ建物を見る
(監視が誰もいない? やっぱり!?)
「みんなを あの子らを助けないと」
「ホリィ、、いや、コイツは現役の隊長でしてな、コイツが簡単にやられてるんじゃ怪物がいると見た方が良い」
そう口にすると少し弱弱しく荷台へと回る
「でも、だからって 私h」
「だからこそ! カーッペッ!」
「アンタは下がってなさい」
老将は二本の短い槍を肩に乗せ
我先にと先陣を切る
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