366 生死
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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バタン
いや、ドカンと言う方が近い
押し退けられた扉の上ではガラン、ガラガラと乱暴な音でドアベルが揺れる
正に正々堂々とは呼べない強襲
騎士としては道を外している攻め方
老将は一番近くの影へと勢い良く振りかぶる
「 え?」
そんな
ツインテールでは無い少女の後ろ姿を確認し
「待って!」
魔女が背中へとしがみ付く
「ぬおっ! 何 を?」
勢いがそれで止まった訳では無いのだが
少女の前に出た紳士と眼が合い
自然と動きが止まった
「これは、どういった状況ですかな?」
止めた腕に力を入れ直すまではせず
槍を構えたまま、意外な程俊敏に三歩程下がった
「驚かせてしまった様で申し訳ありませんがこちらも一刻を争う状況で、、王都からの使者とお見受けします、外の彼は残念で御座いますが脅威は去った跡です ので」
槍先をズラし
「どうぞ武器をお納め下さい」
状況が見える様に脇へ反れると厨房の奥へと急いだ
少し
呆気に取られた将軍は武器を下ろし
「ふむ? ん? なんだあれは?」
集められた椅子やら棚、その破片等をゆっくりと確認し始める
それを
「みんな!!」
勢い良く突き飛ばしシャーマンが駆け出す
のだが
前の少女を見て 目を見開き 足が前に進むの止めた
「チエさん!」
振り返った少女
ケイが抱き抱えているのは
ぐしゃぐしゃの
太い腕
「 ケ、ケイ ちゃん?」
空いた口を強引に、噛み締める様に閉じながらよたよたと歩み寄り
「ケイちゃんは? 怪我 無い?」
血塗れの、自分より背の高い少女を抱き
周囲を見回す
「私は大丈夫です!それよりも!!」
目線の先
「っぐ、姉 さん? 良い 所に」
声の方へと急ぐ
「スティル!」
「俺は 良いから こっちを」
「カエデ!? 何処?何されたの?」
「腹 血ぃ 止まらねぇんだ 」
震える声に息を飲み
体中の毛が逆立つのを感じる
「、、分かった、ちょっと診るから 他は?」
膝を着き
脈を取りながらも即座に腰元の薬品を床へと広げる
「うぅ、オルカさんも意識失っちゃって ラフィさんも目、覚まさなくて」
後ろからの情報を懸命に脳が消化する
「そ、そっか その腕はオルカの、、 ケイちゃん、辛いかもだけど今はとりあえず、まずはお湯、お湯を沸かしてくれるかな? それと確か換気庫の端っこ、脇に多分色々置いてあると思うからその辺の、私の道具、全部持って来てくれると助かる」
しっかりと伝えられたのかも分からない
だが自らと指先の脈、それと今からスベキ事を確認する様に言葉を羅列する
「わ、分かりました!」
「、、ふむ、処置を優先する為に奴を逃がしたばかりです、居ないとは思いますがその道具類は私(わたくし)が持って参りましょう お嬢さんは湯の準備を」
老紳士が破片にまみれた族長を発掘し終え
ゆっくりと魔女の見える位置へ寝かせる
!!?
「っっ」
娘の
酷く腫れた頭部を確認し
涙を堪え
歯を食いしばり
「 お願い しますっ!」
先に脈を取り終えたカエデの衣類を剥ぎ
治療へと移る
「ごっぷ、はぁ はぁ ぐ、ぐ ぅ」
口、耳鼻から泡の様に吐き
胸に空いた穴からの流血が特に痛々しい
「はぁ ま、まさか『本物』のお出ましとは はぁ」
大量にビシャビシャと振り撒き
ひたすら逃げる様に走る
(撤退だ! 逃がされたのは、、何時でも捉えられると判断されたからだ、こんな近く、もはや森なんぞに隠れていられるか)
先程までとは別の意味で血色を変えた吸血鬼は出来る限りに足を動かし
凄まじい速さで森を掻き分ける
(こんな事なら奴らに住処を提供させ、、いや、隊長と名乗る者があのレベルだ、意外に王都側へと向かった方が?)
身近な生物を鷲掴みにし
「ちっ、贅沢言わずに男でも啜(すす)るべきだったか」
生きたままに齧り付く
傷を癒す時間も惜しい
(朝を待たず、王都に潜伏が無難か? 我らが吸血鬼だ、六人も居ればどうとで、、)
「 え?」
住処へと戻った孤高の吸血鬼
バミー候の喉から
らしからぬ声が漏れる
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