214 鼠伏
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
2/10 22:05
ペッペッカペッペカペッペッペ
ペッペッカペッペペペッペッペ
首から下げた小さな板、そこから間の抜けた音が聞こえ始める
「イッカイナッタライチジカン」
大きな尻尾を一、二と横に振り、約一時間前に言われた通りの言葉を復唱する
つい先程の事
フェリスは何も無かったかの様に自室に戻ると毛布に包(くる)まり、ピクリとも動かず床に耳を付けている
ペッペッカペッペカペッペッペ
ペッペカペン ペッペカペケペンペンペンペン
そんな面白可笑しい音よりも
「ゴフンガゲンド ゴフンデサガス」
忘れない様に
「ニカイメダメ ニカイメオシマイ」
間違えない様に
そして、祈る様に
「ジュップンサンカイ ニカイメナル」
何度も復唱する
少しも似合わない
小さな声で
ペッペカペ ペッペカペッペッペー、、
素っ頓狂(すっとんきょう)な音程のアラームは狙った様な所で止まり、再び合図の時を無音で刻み始める
機械音が無くなり静かに戻った部屋
ブツブツと擦れた声だけが響く
・・・
その静寂は急に破られた
バーーーーン!
バーーーーン!
ビリビリとした衝撃と爆発音
一気に身を起こし
「ゴフンダ」
薄いドアを開け廊下を駆ける
ドン!
バーーン!!
キドナの思惑(おもわく)通り施設内の空気が変わって行くのが分かる
視覚や嗅覚、触覚とも違う『肌感』と言うやつだ
五感で言うならば聴覚が近しいのかもしれない
所狭しと野次馬が醸(かも)し出すのは混沌
帰りがけに仕掛けた発煙筒が煙を撒き、ざわざわとした悲鳴やら不安、危機感が建物中に広がる
がやがや、わーわーと
ある者は我先に駆け出し
ある者は音の先、窓を開け空に撒き散らばった大輪を見つけた
歪な閃光、連投された花火は徐々に勢いを増す
ドン!
ドン!
ドン!
バン!
バーン!!
バーーン!!
普段ならば目立つ筈の大きな尻尾は見向きもされず
思っていたよりも簡単に匂いの方へと潜入出来た
一番見たがっていたモノ
大きな花を見る事は叶わずに
「キーロ キーロ」
決して大きな声を出さずに
声を殺しながら
されど急ぎながら
慎重に進む
「あっはは、本当に星を落とそうとしたのかな!? はははは、面白いね~でもぜんっぜんだよ、あんな火薬なんかじゃダメダメ」
聞き覚えのある、だが少し甲高い声が聞こえる
「でも凄いじゃん?へ~、アレがこういう事出来るなんてね、やっぱりもっと色々やるべきじゃないかな~? 元が僕と一緒なんだきっと、、いや、アイツはオリジナルになるのか? はは、ふふふ 別に?妬ましくなんかないよ僕の方が結局優秀なんだから そう思わない?」
フェリスはゆっくりと
声の方へ、少女の声がする方へと進む
「ねぇ、ねぇってば」
「キーロもそう思うでしょ?」
!?
身を支えていた棚がガタリと音を立てた
「ふふ、ははははは!馬鹿だね~こっちからは見えてるんだから出て来ちゃって良いのに、って言っても分かんないか? そこのネズミの事だよ?おいでおいで~」
少女は楽しそうに、不敵に、手招きをする
観念したかの様に出て来た犬耳は目の前の情景に慄(おのの)き
目を見開いた
「キー、ロ!?」
声が出たのも不思議なほどだ
真っ青な青年の姿に見開いた瞳は一瞬で血走り
目の前の少女へと飛び掛かる
のだが
「残念でした」
少女の首元に爪は届かず
巨大な蛇の頭が次々とフェリス目掛け襲って来る
スピード違反の自動車が壁にめり込み大破するかの様に
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