215 大蛇
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
2/10 22:10
「ギャン」
フェリスの横腹に大蛇の突進がめり込みそのまま跳ね飛ばされた
壁に叩き付けられ、立て続けに二、三、四と別の頭が降って来る
「アウッ アァ! ウッ」
大木の様な太さのソレは撓(しな)りを加え上から、横から、斜めからと降り止まない
殴打と言うよりも重みでの圧力、その衝撃に耐え切れず壁には亀裂が走る
「ウッグ ウガアアアアアアアア」
ドカン!
と一撃、蛇では無く壁目掛け拳を打ち込むと爆発したかの様に隣の部屋へと貫通した
すぐに退避を試みるが衝撃の雨は止まず、弾かれる様な形での脱出となった
「アッグ、ウッ ウゥ イテエ ウゥ」
よろよろと四つん這いで地を這い、次の攻撃に備え身を構え直す
「大丈夫~?聞こえる~?死んで無いよね~?」
元の部屋からは機嫌の良さそうな少女の声が聞こえる
「おいおい蛇ちゃん、お前もやり過ぎるなよ、、って言っても分かんないかな?いや、それくらいは理解出来るよね」
大蛇の腹辺りをペシペシ叩くと奥の方からも引き摺(ず)る様な音を立て
うねり、蠢(うごめ)く頭が合計で九つになった
いや
フェリスを追って隣の部屋に入った頭の先が切断面を表しながら靡(なび)いているので一つ減って八つとなった
「へ~凄い凄い!そんな事も出来るんだ?やっぱりただの犬じゃないんだね~」
「フー!フー! キーロ フー! キーロー」
荒い息を整える様に名を呼ぶその姿
それは先程までの愛らしいフェリスの手とは打って変わり
肘から先、両腕が極端に肥大化している
先端には巨大な鎌の様に鋭利な爪先が並び、大蛇の血液が滴り落ちている
「ガアァ!」
涸れた声で威嚇をしながら大きな腕を振り上げる
「大丈夫だってそんなに焦らなくてもキーロ生きてるよ?」
!?
「キーロ!? アグッ」
気が緩み、青年の方を振り向いた所に向かって来たカウンターが決まる
フェリスの身体はまたも跳ね飛ばされるが学習したのか咄嗟に自らの尾に頭を埋め身体を丸める
「ガッ ウガァ ゥ」
ボールの様に勢いよくバウンドすると少しよろけながらも頭を振り態勢を立て直す
「あは!あははは良いね面白いよ、そんなにコロコロ表情って変わるんだね?」
「コッ ノォ!」
地に手をやり、伏せる様に一度屈(かが)み込むとバネを使い高く飛ぶ
再び向かって来た頭部の上を弾丸の様に通過
すると蛇の頭はいくつかに割れた
「ふふ、凄い凄い!頑張れ頑張れ~ あぁ、キーロなんだけどね」
少女は嬉しそうに手を叩き
「ゆっくりと」
「じっくりと」
「血を抜いてるだけだよ」
不敵に笑みを溢す
「オマエエエエエエエ」
フェリスは牙を剥き出し
吠えながら
ただただ前へと進む
いつの間にか聞こえなくなった合図の爆発音
擦れた怒号と這いずる蛇の音が響く中
この場に似合わない音が聞こえ始める
ペッペッカペッペカペッペッペ
ペッペッカペッペペペッペッペ
「此処まででニ百、、ん?何この間抜けな音、アラーム?」
「ゼハ ゼハ ハァ ハァ」
もう何匹、いや何百やっただろうか
部屋中には落とした首や破片がごろごろと転がっている
少女は暇を持て余したのかソレを丸太の様に並べ数を数えている
フェリスは三十分間ひたすらに迫り来る大蛇を裂いた
致命傷だけを躱(かわ)し、爪が何枚剥がれようが懸命に
だがそれはまるで意味を持たず
いまだにすぐ隣の部屋にいる青年の安否を確認出来ずにいた
「ウゥ アアァア˝ キー、ロ˝ォ」
見えるか見えないかの位置、もどかしさに涙が溢れる
そんな事などお構いなしに次から次へと
終わり無く再生する化物が大きく口を開ける
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