216 契約

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/12 23:00



ペッペッカペッペカペッペッペ



ペッペッカペッペペペッペッペ



首から下げた板から間の抜けた音が聞こ始める



ペッペッカペッペカペッペッペ


ペッペカペン ペッペカペケペンペンペンペン



そんな面白可笑しい音が





呪いの様に聞こえた





「ア˝アァァアア˝! ガァアア!」



暗い部屋の中で一匹



「ヴヴヴッヴグゥ  ア˝アアァァ˝」



火が付いたかの様に獣が泣く



「ア˝アァ! ァァ   ア˝ァ˝˝ァ˝ァ˝ァ˝」



聞くに堪えない悲鳴の様な奇声、例えるのなら断末魔


とても煩く不愉快な


声とは呼べない音


それに伴い漏れる息は熱を持ち、共に血と泡を吐き散らす




肥大化、凶悪な見た目であった筈の肘から先

今は見る影も無い程細く、酷く化膿し爛(ただ)れている

手首の皮膚、毛皮は剥がれ削がれた肉からは骨が見え隠れし、右腕に関してはもう千切れかけている


糸、ワイヤーの様な物に絡まった獣はそれでも牙を剥き

喉からは雷の様な警戒音を鳴らす











提案されたのは一昨日の事


「飽きちゃったからゲームをしようか」

大きな口を開けた蛇、その前に出た少女はパンパンと手を叩きフェリスの前まで歩いて来た


好機


(コロシテヤル)  と頭をよぎる  が心を読まれたかの様に



「そんな事したらキーロ死んじゃうよ?」



と一言


ピタリと止まった息巻く犬耳を軽く撫で

少女は話を始めた


「三日間、死んでしまわない様に血液はゆっくり抜くんだ 趣味とかじゃない、ちゃんと意味があるんだよ」

ソイツは目を見開き、続けた

「キーロは中々面白いやつでね、僕も本当は死なせたく無いんだ   他にもっと効率的に出来ればな~って思ってる レイ達の目的はグングニルだ、もしかしたらキミの魔力量でなら助けられるかもしれない」


わざとらしい言い回しではあったがフェリスの頭の中は一つだけ


(キーロが助かる、助けられる)


「ワカッタ」

悩む事は無く二つ返事で返答した


どちらにせよ大蛇を何とかする術(すべ)を持たない以上その提案に乗る他無かった

満身創痍(まんしんそうい)からのソレはまるで




悪魔との契約




「さぁこっち、おいでおいで」

少女は手招きをする


獣は青白い顔の青年を目で追いながらもその小さな悪魔の元へと向かう



奥へ


奥へと



一時間ちょっと歩いたか   その日が終わる

時刻は十二時を回る頃、青い扉が開いた


「生成は昨日から始めたから残りは丁度二日間って所だね、良い?今からこのアラームが~ ふふ、どうしようか」

少女は楽しそうにフェリスの首元の機械を弄(いじ)る


「じゃあ一時間にしよう 48時間ね、48回鳴ったらアウト それまでにキミが石の代わりを作れば良いだけ、この珠(たま)に魔力を注ぐからちょっと縛らせてね?」

吊り下がった糸の様な物で手足を拘束された

「この糸が君の魔力を吸ってそれがこの珠に入って来るって訳、分かる?」


「、、ワカッタ」


「あは分かったんだ?ふふ、はははは 偉い偉い」

大きな尾に触れ

「じゃあ頑張ってね」

他人事の様に部屋の外へと向かった



それからはありったけの力、魔力を注いだ



眼を血走らせ、耳鼻から血液を垂れ流し



二十四時間が経過した





「うん、うん凄いじゃん 良いね」


「キー、ロ     キーロ」

薄れる意識の中、辛うじて希望の名を口にする


「あ~うん大丈夫、まだ生きてるよ?ねぇ、そんなことよりさ?」





「もう一個くらい作れたりする?」





ガラス玉の様なソレをポケットからもう一つ出す少女

流石に獣の頭でも気が付いた



(ダマサレタ)



バキンと奥歯から音を鳴らし


「オマエェッ!!」

時たま痙攣(けいれん)する眉と頬が怒りで震える


「、、なぁに?」


少女は悪びれる様子など無く


無邪気な笑顔で小首を傾げる

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