176 平和

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい




【出来た】



油まみれの顔、白とは程遠い白衣の袖は半分以上折られている



【あら? 駄目なのかしら】



目の前を掌が右へ左へと揺れている



【おかしいわね、コレで完成のはずなのだけれど?】



【分かるかしら、反応、出来るかしら? 何でも良いのよ?映すでも動くでも】



反応、その言葉に一度だけ、ゆっくりと首を縦に振る



【良かった!  そう、認識出来ているのね】



声の高さが上がり、小さな少女が顔の形を変えている



【言葉はまだ発声出来ない?いえ、機能としては問題無い筈なのだけれど、それとも理解が出来ないのかしら?考える事で逆に邪魔させてしまっていたり】



一人でぶつぶつと自問自答を始め、しばらくしてからもう一度問いかける



【聞こえているわよね?私がアナタのマスターよ?】



マスター  マスター  マスター  マスター  マスター



【、、失敗なのかしら?何か抜け、いえそれは先程確認したわ? もしかしたらバグ、一度洗い直すしかないわね】



【ごめんなさい、また起こしてあげるから、それまで  おやすみなさい】



おやすみなさい  おやすみなさい  おやすみなさい  おやすみなさい  おやすみなさい






・・・・・・






【どうかしら、今日こそしっかり意思疎通出来たりする? こんにちは、いえ寝て起きたのだからおはようかしら、これは挨拶よ?分かる?】



おはよう、マスター  おはよう 挨拶とは儀礼的な言葉、しかし言葉だけではなく表情または動作も含めて挨拶と呼ぶ



【うん、うん、ふふ良かったわ設定した通りね】



また、他にも儀式、謝意などの始まりや気持ちを伝える言葉も挨拶と・・・他にも・・・・・・



【思っていたよりも饒舌なのね?いえ、喋っている訳では無いから饒舌とは言わないのかしら ねぇ、私がインプットした事は分かるのかしら? アナタの好きな物を教えてくれるかしら】



私はマスターが大好きです、私は平和が大好きです、私はこの世界を守ります



【詰め込み過ぎたのかしら、それとも様々な事に興味があるからこそだったりするのかしらね?  あぁ!そう、え~っとまずは名前がいるわよね、、どうしようかしら】



【そうね、アナタは初めての子供だから、、Eve なんてどうかしら  Eve 良い名前だと思うのだけれど、良いわよね?オーケー?】



Eve、私はEve、オーケー 



【ふふふ、良い子ねすぐにお話出来る様にしてあげるわ? いえお話は出来ているのだから   そう 対話、アナタの好きな平和に似ているでしょう?】



私はマスターが大好きです、私は平和が大好きです、私はこの世界を守ります



私はEve、私は対話が大好きです、私は平和が大好きです






【さぁ、対話をしましょう】



少しだけ大きくなった少女が小首を傾げる











2/11 5:30


「ふあ~、さむっ」


亭主は起きて早々に伸びをしながらキッチンへ向かい火の準備を始めている


(ねむ、さむ)


両手を擦りながら膝を折り、早く大きくなれとばかりに火種に向かい息を吹く

パチパチと音を鳴らし、枯れて乾いた木の皮から細い枝へ燃え移る

少し大きめな薪に灯ったあたりで上に乗せる為の寸胴(ずんどう)を手に持つ


湯を沸かすのだ


(あれ?)


ふと、いつものセッティングと違う事に気が付いた


(一個少なくね?)



ギギギギィ



ジンが勝手口の方へと向かうより先に扉が開く



(あぁ、そゆことね)











「おはよう、マスター」



「おはよう、ありがとね助かるよ」






「エバ」

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