180 遠征

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/12 20:00


「じゃあ行って来るから、なんかあったら店の事は良いから身の安全を第一に考えて動いてくれよ?」


「はいはい、分かってるって~」


「エバ、アルの事頼むよ?」


「ソレあたしに言いなさいよ!」


「いえ、何も間違ってはいないと思うのだけれど?」

ドールは不思議そうにアルを見る


ギルド一行は荷物やエルフを積み、ディーン王国目掛け出発する所である


「カカカ、ジン一人置いて行く時よりよっぽど気分が楽じゃな」

赤鬼が砲台を乗せ終え、運転席で酒瓶を開ける


「ポンコツ人形もいるしな」

巫女も荷台に乗り込むと早々に飲酒を始める


「ポンコツ、人形、、それは私の事なのかしら? ポンコツでは無いのだけれど、何を言っているのか分からないわ?」

「良いから、シエルの言う事は大体が反対の意味だから」

「そうそう!気にすんなって、あ、そうだルトのご飯も忘れずにあげてな」

めんどくさくなりそうだったので透(す)かさずアルとジンが間に入る


「ま、まぁ実際アルは運動能力も高いけど無理はしないでね、よし、じゃあ行きましょうか」



空気を読んだバルがささっと会話を締めくくり、一行を乗せた馬車が出発する



今回は以前のおとり作戦の時とは別で森には入らずに北東へと向かう

こっちにエルフの族長が居ようが(寝ているが)夜道で森に入るのは危険との事だ

少し時間はかかるが見通しの良い道を選んで進む



「ったく、俺の事はネタにしても良いけど出発前にめんどくさくすんなし、あと今後ポンコツは止めてやってくれよ」


「ぁ?」


「エバも日々成長してるんだよ、シエルだって見てて分かんだろ?」

説教などをするつもりは無いのだが、少し真剣な声が出た


「そうじゃな~表情は動かんが最近じゃ~何かこ~健気って感じもするしのぉ」


「そうですね、実際シエル様より可愛げがあああああ」


「あ~はいはい、分かった分かった、もう言わね~よ   すまなかったな」


巫女は従者の目を一突きした後、眠るエルフを枕代わりにして横になる


「カカカ不貞腐れおった」


「あいててて、寝っ転がって溢さないで下さいね?全く~ あ、そういえばジンさん、来る前にこの砲台の事エバに聞いてましたよね?」

従者が巫女の足元に散らかる荷物を整頓しながらコンコンと砲台をノックする


「ん、あぁそうそう」

そう、以前カセンから耳にしただけだったので準備がてらの調理中に直接聞いてみたのだ


「言ってる意味分かりました?」


「いやっもうそれがさ、さっぱりし過ぎてたのでもう少し漬けた方が良いかな~と思いました」


「漬け物か何かなんです?」



雑談をくれたのにつまらないノリにしてしまい、挙句フォローまでさせてしまいシフには申し訳ない事をしたと思う!

のだが


エーテル体がなんちゃらかんちゃらで

ソレはエネルギーと言う概念とかでは無くて?とかなんとかで

と言う具合に小一時間延々喋られたのだが


うん、、まぁ、良く分からなかったのだ


分かった事と言えば、いや、以前カセンが聞いた事とそれ程変わらないのだが

この砲台の名前はグングニルと言うらしく、今ここにあるコレは本体をベースにエバが作った物で試作品なんだとか

弾丸となるのは俺、と言うかキーロにも反応したので転生者って所なのだろうか

エバ自身もコレが反応する存在を始めて見たらしく「色々と調べさせて欲しいのだけれど?」とか言って来た

もしかしたら、やっと俺の中の秘められたパワーが!? と思い一応微かな希望を抱き「また今度ね?」と言ってある




2/13 4:00


「もうちょいで王国付近じゃがどうするんじゃ~?」

カセンが荷台に声をかけてくれる


「あ、もう一度馬を休ませてつつ着替えておきましょうか」

バルが荷物から何枚かのローブを出す


「ん?変装する感じ?」


「見つかっても言い切りますが見つからないに越した事無いですからね」


(まぁ、そりゃそうか)


「ほら、ラフィ起きて」

エルフの頬を強めに揺さぶる


「ん、む~?だおずぴだ起きてる」

起きている訳が無い


「はいはい起きてないでしょ、良いからラフィもコレ羽織って、ってかだおずぴって何?」


(あ、一応そこツッコんちゃうんだ、ってかラフィ寝過ぎじゃね?)

昨日しっかり調整し昼過ぎに眠った筈なのだが道中一度も起きていない



「ここからは警戒して行くぞ」

逸早(いちはや)く従者に羽織らせた巫女は偉そうだ


「えぇ、何時 攻撃されるか分かりませんからね」

いつも温厚な従者が張り詰めた表情を浮かべている


「あ、あぁそうだよな、俺も気を付けるよ」


「なぁ~に、ジンは黙ってあっしの隣に居れば良いんじゃよ」

強引に肩を組まれ、胸が当たる

(アラヤダイケメン)




その後一時間ちょっと馬を休ませ


南門の関所を通り


何事も無く東側の関所を抜けた



途中しっかりとキーロ宛の荷物を届けながら

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