379 伝言
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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「さみ~ うは~ やべ~」
黒髪黒眼の純日本人 亭主の新島 仁 (にいじまひとし)三十路
通称ジンはキッチンの火で暖をとっている
場所自体はいつものしがない喫茶店
店名は「ギルド」
カウンターの端にはクマのぬいぐるみと兎のぬいぐるみ
その二匹にファンタジーな本と物騒な名前のラクガキ帳が立て掛けられている
季節はまだまだ冬
、、じゃねえよ! あ、いや、冬だけどそうじゃなくて
今居るのは最近使われてなかった『綺麗な』大聖堂の厨房
そこで早朝から湯を沸かし
惨めに
自己嫌悪の真っ最中って所だ
ついさっき、、
帰って来たばかりだと思われる巫女と従者を叩き起こした
なんで?って そんなの、ギルドへ向かってもらう為に決まってる
マジでどんだけ働かすんだよって 俺だって思ってる
けど彼女らは言葉一つで
「ちっ、クソ 急ぐぞ」
「ジンさんも引き続きお気をつけ下さいね」
なんて
一言だけ溢し、急いで店へと向かった
この情報が本当かどうかも疑わずに
こんなの伝言役って思えば自分を責める所じゃねえんだろうけどさ
じゃないのかも だけど
「あぁ˝ だ~も~ 飯 の準備するかなぁ!」
凹みを無理矢理飲み込み
腹に決めた事を念頭に
しっかり実行へと移す
事の経緯を辿るには三十分程遡る
「おはざーす!」
咄嗟に画面をタッチした電話の向こうから声がする
「ん ぁ お、おはよう ございます」
昨日の疲れにも関わらず、いや、疲れていたからこそだろう
久しぶりの職業病
つい何も考えずに反応で出てしまった挙句の敬語だ
「へへっ、寝てました?寝てましたよねぇ~起きて下さ~い ぷふ、それにしてもおはようございますはねぇっスよ ウケるぅ」
開口一番から変わらずのテンション
ギャルの温度に付いて行けず
「え、え な?何ぃ?」
寝ぼけながらの問答を繰り返す
「あははは、早く起きてぇ~ じゃないと」
「お店に居るエルフが死んじゃいますよぉ?」
瞬間で鳥肌が立ち
文字通りに叩き起こされた気がした
「 どういう事?」
息を呑み
見えない相手に目を瞑り
「カー、毎回毎回テメェはソレばっかだな?」
恐れながらも
「なっ! そ、そうだけどよ、こっちからしたら何が何だかがずっと続いてんだ!ってかそっちから掛けて来たんだろ?」
状況把握に努める
「へぇ、言い返して来やがるとは意外だな?弱い奴は逃げちまうもんだと思ってんだが」
「あ、あぁ、居るよな怖いとか気まずい相手の電話出ないとか、、」(正直俺も逃げてぇっつの)
「ソコまでカスじゃねえってか?」
「いや、カス とかそういうのは内容にもよるかなぁ!? あ~まぁ業務上でもソンナ事やってるのも居たし、中にはオイ!って人も存在はしてるけどさ~」
「 ケッ、ハハハハ!」
一瞬
一瞬だけ空気でも読んだかの様な間があったのだが
「バカが!内容なんか関係ねぇっつの!逃げ出す奴は何があろうが全員クズよ! 例え、、どんな事があってもだ、テメェだって何(いず)れはなぁ!」
その火は消える事無く勢いを
「ハイハイハイ!ほんっと今そーゆーの良いんで! 毎回絡むの止めたげて下さいっス」
増せず
愛想の良い声色へと変わった
「ケケケ、目の前に居なくて良かったなぁ?おっさんよー だがまぁ会った時も言葉選ばずにその足りない頭のまま喋ってくれよ なぁ」
「殺しても問題無い奴のままで居ろや」
「っだぁ!うっせぇっんスよ もぉ~ お兄さん、もう今日はコイツ電話に出さないんで、サーセン」
「ん、あ あぁ何なんだよって言いたいけどよ~」(こえぇっつうの)
「え? 言ってますけどそれは良いんスか?」
「、、思ってる事と逆に出たわ」
・・・
こうして
何処からか伝わった情報を逸早くヴェヌが掬(すく)い、何故か俺へと伝えてくれた
だから
聞いた側は「兵士さん達がさっき来てさ!」と嘘八百
巫女達に急いでもらった訳だ
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