267 明暗

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/25 13:00


「も~なんでこんなとこまで、はぁ~」


少女の吐いた溜息は大きく、外気に触れると白く形を作った


「お!あったほらアル!あったあった」

先導していたエルフが何かキノコの様な物を片手に振り返る


「あ~はいはい良かったね、ねぇもういい加減帰ろう?あたし一応病み上がりなんだからね~?う~さむさむ」

ツインテールの少女は肩に力を入れながら両手を擦る


それを見てエルフは


「あ!ぁっあそそ、そうだった、あのあのあのえとえとえっとそのそのその」

焦る様に持っていた物を背負う籠(かご)に放ると駆け寄り

「すまない」


その手を優しく包む


「あ、温か、、ってぇ!こういうの良いから、ほらっさっさと帰るよ!」

払う事はせず、少しだけ照れた様子で押し返す



解毒草の採取に向かった少女達

無事お昼過ぎには『花』も『根』も摘み終え、先程遅れた昼食を食べた所

なのだが

「あ!あれは」とか「ついでに」とか「どうせだから」とあちらこちらをウロウロウロウロ

綺麗な髪には蜘蛛の巣が絡まり、美人な顔は泥だらけである

何度拭いてあげようが懲りない様子でニコニコと、今は小さな洞窟の中、固そうな菌類をゲットした所だ


後ろからは今もいつも通りに身振り手振りと忙しくしている


「それでだな、この辺りでは無いのだがスティルが言うには今くらいの時間でも見たらし」

「ラフィ!」

「く?」


「違う話にしよ?」

『嫌な顔』をしながら眉を下げ友人を軽く睨みつける


「う?」


「う?じゃないよ、ね? 明るい話にしてよ!  怖いのヤダぁ」


「むぁ、ああ!ふぉうだな、え~とあののの、、」

頬、口を軽く摘ままれた


本人も意地悪でそういう類の話をした訳では無い



何分




「あ、そうだ!  では今から明るい話を一つ! 松ぼっくりはな?」




何といっても





「火がつきやすいんだ!」





ラフィなのだ





すぅ



ツインテールの少女は大きく一息深呼吸をすると


残り少ない洞窟の道を一気に駆け抜け






「そういう明るいじゃねえんだよおおおおおおおおおおお」






響いて煩(うるさ)くならない様に配慮した辺り


ツッコミに、そして扱いに


慣れたものである











その後帰宅の道にはある程度の時間を費やした


具体的には二時間半程




徐々に見えて来たのは立ち昇る煙


木々の燃える臭いに二人は足取りを早め


激しい地鳴りと揺れがした時は焦燥感(しょうそうかん)が駆られ、次第に駆け足、全力疾走へと変わった


目的地まではまだ数百メートルの位置


大木の上、枝木に潜む者が構えているのにエルフが気付いた

「ソコの」と声を掛けた時にはもう遅く、キラリと光る何かが発射された



そして



「急げ!回収して撤退だ!!」



その声に駆けながらもラフィは弓を射った


ソレは一瞬で放ったにも関わらず弾丸の様に飛んだ

通常でも何百キロという速度の、ましてや名手の放ったモノ

目で追える速度では無い



のだが



「なっ?」


放った矢はビタリと止まった

だらんとした大きめの裾から出た手、、グラブの類などもしていない、まさかの素手で掴まれた


「、、ちっ、あっちもこっちもクソ陣営が何も当てにならない」

そう捨て台詞の様に吐き出し、矢を下へと落とし

別の木へ飛んだ


「待っ」

「ラフィ!あんたはあっち」

ツインテールがエルフの尻を軽く叩き

「あたしが追う!」

走り出す、、が


「みゃ、駄目だ!  追うな!!」



スパン!


ズザッザザアアァ



手首を掴み損ねた  ので咄嗟に足払い



をされ草むらに顔から突っ込んだ


「ちょお、ぬぁあにすんの、、よ?」


即座に立ち上がり、少女は例の方角へと目を向け




真っ赤な瞳と目が合った




「アル一人で追っちゃダメだ、あの服装に身体能力そしてあの眼、恐らく巫女殿達が追っている連中だ!」




「アレは」











「吸血鬼だ」











「、、え、でもさ」


一度は止められた少女は頬を拭い


「アレは追わないとでしょ」


「アルっ!」


一気に加速する




もっと、先程の位置よりも高くを飛行する二つの影


それらに抱えられた店長を助ける為に


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