118 肉屋

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/29 16:30


「ほれ一部始終話さんか さっさとせんとコヤツみたいに圧し折るが? どうするんじゃ?」


赤毛のメイドが両腕の折れた男の足を持ちながら小柄な男の前で壁ドンしている


「てめぇ喋りやがったら後で覚えてろ!」


「ひ、ひぃ」


「お~こんな状態でも威勢だけは良いんじゃな?」


カセンは掴むソレに容赦無く横から足をかけ本来曲がるべき方向と別の向きに畳む

綺麗にパキンと言う音を鳴らした後は力無く、ぺたりと地に落ちる


目の前のメイドが涼しい顔で行うその残虐な行為に小柄の男は声も出せずに腰を抜かしている



「えげつないな~」

(足一本しか動かせないとか流石に可哀そうじゃね?)

ジンが横で痛々しい顔をしている


「何を言うとる こやつらは人売り、誘拐グループじゃぞ?」


「あ、あぁ そうだ けど」

(分かってはいるよ)


「お前らの場合主に狙いは女子供じゃろ? 何人犠牲にしとるんじゃ?」

赤鬼が腰を抜かす男の肩に足を乗せる

「あっしはの お前らみたいなモンは人、人間として見ておらん 魔物以下じゃ 情報収集と一つの国の中じゃから?一生懸命加減をしておるだけじゃ」

見下すその薄紅色の瞳は生物を見る様な視線では無い


「ぁ、ぇ あぁぁ すいません! すいませんでした」

小柄な男は肩に乗せられた足を両手で触れながら震えている


「はよぉ言わんか」

罵声の様に声を荒げず、いつも通りの口調だ


本気なのだろう、本当に何も感じていない様で逆に怖い


「ああああはい! すいませんすみませんんん」




銀髪の小柄な少女、巫女シエルを誘拐したのは一時間ちょっと前

一度10人程の男達で取り囲んだが悉(ことごと)く叩き伏せられていったので先程俺がのめした男とこの二人の三人だけで一度その場を後にしたらしい

要するに一度逃げたのだ


他の連中がやられた頃を見計らい地下から、マンホールを使って巫女の後ろに出ると毒を吸わせた

そしてそのまま袋に入れると急いで顧客先の人買い、ブッチャーと言う男に売ったとの事


ここで男の肩が踏み抜かれた


人間の肩が潰れると言うのは初めて見たがなんとも嫌な音がした

女々しくギャーギャー騒ぐ男を余所にカセンはもう片方の手を引き歩き出す


小柄な男の腕が引き千切れるのでは無いかと思う程



乱暴に





















「う~む」



・・・・・・



「肉屋なんぞどこにもないぞ~」


露出の高い服装のエルフがキョロキョロと辺りを見渡している


「そもそも人がいないでは無いか お肉屋さんと言うのはもっとこう、賑やかな所にあるのではないのか?」


ラフィはぶつぶつと呟きながら困った顔で地図を何度も見返している


「うぅ、しかしなんだ? この辺の臭いは酷く キツイ」


!?


「だからか?だから人が寄り付かないんじゃないのか?」

と言いながらクンクンと鼻を効かせ臭いの強い方へと向かう



のだが



「むぅぅ」



日頃自然しか無い様な森林地や人里離れたギルドに慣れてしまったせいなのか



「う、うぅぅ~っ」



食べた事の無い海産物を口にしたせいなのか



「、、、うっぷ」



はたまた人混みを越えてからの妙な臭いに目を回してしまったのか
















オロロロロロロ・・・







エルフ達の間では姫と呼ばれる者の醜態である





「う、うぅなんなんだこの臭いは」


涙目で駆け込んだ路地裏


「ぅっ、、ぷ」


薬物やアンモニア、死臭の様な

、、腐敗臭だけでは無い

息を吸い込むだけで頭が痛くなる、首元が痺れるような臭いが充満している


!?


エルフは奥へと進んだ先の汚い看板に目的地の単語を見つける



『町のお肉屋さん』



「お! こ、ここかぁ?!」


入口の扉を強く押すが簡単には開かない

ガラス越しにバリケードの様に何かが積んであるのが見える


「やって ないのか? お~い、誰か~いないのか~」


エルフは鼻を抑えながら扉をノックし続ける

すると別の箇所にある窓が開き、声がする


「お客さん?」


「亭主か? お尋ねし、、」

開いた窓の方へ向かうと同時に強い血の匂いがラフィの足を止める


「あ~、ごめんね~ 今 捌いてたから、そっち開けるね~」


「そう  か あぁ、すまない」



少しだけ時間が経った



「あれあれあれ~? キミ、エルフ だよね?」

皮のエプロンをした巨漢の男が扉を開く








「可愛いね~可愛いな~」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る