168 料理

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/10 12:00


「ごっはん~!」


「寒い寒い、早くドア閉めて~」


「お腹空きました、今日はコレで美味しいの作って下さい」


「今日も人いないのね」


「暇そう」


五匹程がゾロゾロと、にゃあにゃあにゃあにゃあ言いながら店内に入って来る

中には失礼な事を口走っているのだが助かっているので下手な事は言えない


「お~今日も来たんか~」

赤鬼が手招きをしている


「いらっしゃ~い、今日はあたしが作ってあげよっか?」

ニコニコとツインテールが揺れる


「あ、あの! いや、あの美味しいのが食べたいので」

中間管理職の様な振る舞いをしているキジ柄に悪気がある訳では無い


「え!えぇ? でもでも~不味くは無いでしょ?」


「不味、、えっと美味しくは 無いです」


正直者と言うか無垢と言うか


猫にしては気を使った方なのかもしれないのだがその一言はアルにクリティカルヒットしたらしい

まるでボディブロウでも入ったかの様に「oh」または「うっぷ」とでも言いそうなまま、よろよろとスローモーションで座敷へと腰掛ける



・・・



(可哀そうだが努力と知識とセンスだからな、頑張れ乙女)



各個ばらばらと、それはそれは自由に我が物顔で座る猫忍達


コイツらはライア隊だ


食材が最小限しか無い為、直接材料の持ち込みをしながらお昼時か夕飯時にはこうして足を運んで来てくれる

それでいて手間賃はしっかり払ってくれるので正直ありがたい

ただ、本命の隊長ライア自体は何やら忙しいらしく最近はすっかり姿を見せない

元を辿ればここからの情報で森へと向かった訳で、、新しい情報が少しでも欲しいのだが、、、


「ごは~ん」

一番小さいのがカウンターに向かって来る


「あぁ、はいよ~とりあえずみんなでコレでも摘まんでて」


受け取った食材を片っ端からジュワジュワ言わせながらシエル宛に届いた野菜、白菜を漬けた物やブロッコリーを茹でた物等をカウンターへと乗せていく


「むぐむぐ、天下の巫女様に感謝しながら食うが良い」


パリパリと音を鳴らしながらちゃっかりと良い位置に陣取っている、恐らく猫達のご飯も摘まむ気なのだろう


「お~お~あっしの方にもつまみおくれ~」

赤鬼が意気消沈しているツインテールを撫でながらジョッキを振る


「待て待て、まずはちゃんとお金くれるにゃんこ達からだ、エバごめんだけど出来たのから運んでくれる?」


「配膳ね、えぇ良いわよ?出来た順番に持って行くのは良いのだけれど、誰にどれを持って行けば良いのかしら? それぞれ好物やアレルギーもあるでしょうしそれらを私はまだ把握し切れていないのだけれど」

「え~っとそっか、そうな~大丈夫、食えない物だけは俺が把握してるし後でメモって渡すから今日は奥から先で良いよ?」


「、、そう」

一番働き者のドールはお皿をトレイに乗せていく


(もうちょいだけ融通利くと良いんだけどな~)

理屈っぽいのは少々面倒だが覚えは早いし丁寧な仕事をしてくれるので本当に助かってはいる


(今度料理もやらせてみよっかな?)

とか思いながらもテキパキと、円滑に業務を遂行する




炒め物なんかをしているとついつい考えてしまう




王子を殺害したのは若い三人組だったと聞いた

エルフの様な見た目の子供と狼に化ける子供、それと


『義足の青年』


ずっと気掛かりなのがやっぱりキーロの事だ

その義足の青年は金髪だったとラフィは言っていたがこのタイミングで連絡が取れないでいるのも心配だ


(シエルはキーロなら何となく辻褄が付くとか言ってたし手紙も送り返して来ないしな~、、ん?)

ふと手元を凝視している視線に気づく


「うおっ!え、何 どうしたよ」


「ねぇジン」


未成年者の顔が近い


「な、なんでしょう?」


「料理!」


「あ、あぁ、ちょい待ってろって」


「料理教えて!!」





「は?」





その発言に黒い子猫が反応し



キジ柄が椅子を鳴らした


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