189 秘密

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



はっ はっ はっ



(あぁ、痛い)



はっ はっ



(熱い、痛い  痛い)


(息も、もう 上手く 出来ない)



はっ はぁ はぁ



(いや)


(駄目だ、まだ  まだだ)



【や、ぁぐ ぞぐ】



【ば  ぁもる  ばぼ  だだい おおぉ】







2/13 12:30


「ん、うん?」


眼を開けたそこはどこか見慣れた感じのある天井だ


胸周り、いや喉から腹部にかけてジワジワと温かみを感じる


(あぁ、きっとこれが例の)

身に覚えのある事だが初めての感覚だ


そしてすぐ隣からは様々な声が聞こえる



「お~本当じゃ、気が付いたみたいじゃの」


「良かった、心配しましたよ」


「いやマジで止めて、ほんっと心臓に悪い」


「ちっ、なら先に言っとけボケが!」


「まぁまぁ無事で何よりではないか」


ギルド一同は部屋でゆったりとくつろいでいる所だ


「今ジルバさん色々持って来てくれるってよ」

ギルドの亭主が部屋の入口の扉を指差す


「え~と、すいませんご心配をかけまして、まずはどこから説明しましょうか? と言うかどこまでお聞きしました?」

流石にまだ動けずに従者は口だけを動かす


「てめぇが吸血鬼の眷属(けんぞく)になってたとはな」

巫女は明らかにご機嫌斜めだ



まぁ、それもそのはず



半年近く前の夏

ギルド一同がディーン王国の誘拐事件、おとり調査に向かっていた時

シフは一人この館を訪れていた

なにやら関りのあった吸血鬼と契約をしたとかなんとか


その効果、能力を使う為なのか先程の老紳士が携帯していた何かをシフに飲ませた

もちろん巫女の治癒もありきなのだろうが腹部の傷は見る見るうちに塞がった



ジルバさんは勧めなかったらしいのだが「今後の戦いの為だと聞かなかった」と言っていた



「申し訳無いです、時が来たらまとめてお話する予定でしたので」


「けっ、やけにそわそわして、おかしいと思ったんだ」

まだ顔色に血の気が戻らない巫女は不機嫌そうに椅子を蹴る


「お~あっしらにはそわそわしてる様には見えんかったがのぉ」


「良いから、横やり入れんなってシエルとシフの関係でしか分からない何かがああああああ」

フォローを入れたつもりなのに横突きが見事に入った


「ま、まぁ詳しくは色々と聞けて無い所もありますしジルバさんを待ちましょうか」

やっぱりバルが空気を読んで畳んでくれる


「うむ、早く来ないものだろうか私も喉が渇いていてな、助かるぞ  そういえば主も呼んで来ると言っていたがあの爺様がここの主人では無かったのか」


「あ、えぇジルバ様はここの執事です  と言うか皆さん全然リアクション無いんですね」


多少、自分でも気にしていたのだろう、が


「いっつつ、むしろ普通の人間なんて俺くらいなもんじゃん今更驚かないよ ってか執事?シフみたいな従者とは違うんだ?

でも良いなぁあ~ゆ~シュッとした老紳士執事」


そこまで考え無くても良さそうである




コンコン




「失礼致します、シフは眼を覚ましましたでしょうか?」


「ジルバ様~先程~」

シフは横になりながら手だけを上げている


「そうですか、それはそれは良かったですね」

紳士はニコリと笑い一度下がるとワゴンの様な物を押して来る

上には綺麗に並べられた高そうな食器類やらティーセット、ケーキに軽食としてサンドイッチ


それと



「え?あれ?」


「お~お~来たんか~」


幼女だ、さっきの居眠り幼女が人形の様にすまし顔で座っている


「ふおおおお、な、なんだあのちっちゃ可愛い、可愛い!」

エルフも赤鬼同様大喜びである


「おい、なんだあのちんちくりんは、行儀悪ぃだろう」

巫女は食べ物と一緒に運ばれて来たのが気に入らなかった様子だ

(おま! それシエルが言っちゃう?)


「な、ちんち!?」

幼女のすまし顔は一気に崩れた


「すいません、まだそちら見れないのですが~お久しぶりです、お嬢様」


シフの声に気を取り直したのか幼女はワゴンの上に立ち上がる


「あ、うう˝ん クックックようこそ我が暗黒の  いやダーク、じゃなくてブラッド、、血塗られた館へ」



・・・・・・



なんかめんどくさいのが来た

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