188 紳士

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/13 11:00


「はぁ  はぁ うぅ、うぶ、、はぁ  はぁ ご、ごめんね~」


「何を言う、ジン殿のおかげで私は今元気ピンピンなんだぞ!」


「はは、いやそれ使い方としてどうなの」



アノ後、エルフがしばらくの間亭主の背中を擦っていた所だ



「ほれ、馬車は一切手付かずで無事じゃ、後から追加でなんかが来る事はないじゃろ  ゆっくりすると良い」

赤鬼は少し困った顔で、それでも軽く微笑みながら予備のリュックをジンの足元に置く


「あ、う˝んありがと」


「あ~まぁ慣れなくても良いもんじゃから、こういうのは」


「そうですね、俺も対人間って言うのはやっぱりどうにも抵抗ありましたし、今回のは特に」

バルも今まででの経験上今回の様な事は無かったらしい、とてもではないが良い血色とは言えない



それはそうだ


複数人の亜人、人間が目の前で破裂し辺りに散らばったんだ



衝撃、臭い



見てしまったとかそういうのでは無く


嫌悪感なのかはたまた憎悪と言えば良いのか分からない


とにかく



何度吐いたか




『普通』でいれる訳が無い




申し訳無いのだが供養などしていないしする気も無い


酷い光景と臭いの中部屋を移して情報をまとめようとしたのだが



巫女シエルが発光したまま一言も喋らない



飛び散った何かが撥(は)ね、多少掠め当たったのだろう


模様の様に高そうな上着に跡が付いている


何度も声を掛けたのだが返事どころか表情も動かないので意識があるのかどうかすら分からない



「はぁ はぁ も~くっそ 大丈夫、俺はもう大丈夫だから  多分」

自分に言い聞かす様に足元のリュックに手を伸ばし、水筒を勢い良く開ける


(シフ   大丈夫なんだよな?)


水筒の中身は単純に水だ、口に流し入れそのまま顔、頭を雑に濯(すす)ぐ



・・・



意識の無い相手を治療している所を見た事が無かったから、なのか


こっちが不安でしょうがない


もちろん俺だったらダメだったのかもしれないけど


少しでも変わってあげたい


治るんだし、俺だったら良かったのに、と意味不明な思いがこみ上げて来る

もちろんドエムとかそういうのでは無いのだが




「誰かと思えば」




!?




聞き覚えの無い、しゃがれた声が聞こえた


その方向を向いた時には既にカセンとラフィが戦闘態勢に入っており、バルは回収したライフルを構えている


「おっと、これはこれは」

見事なまでの白髪、眼鏡をかけた老紳士が両手を挙げる


「爺、何者じゃ?」

赤鬼はすぐにでも叩き潰すかの様な体制をとっており、砲台が正しくない角度で振りかぶられている


「、、ふむ、なるほどなんとなくですが状況は理解しました」

スーツにシルクハット、似合わないエコバックの様な物を肘に掛け辺りを見回す

「そんなに怖い顔をしなくても大丈夫ですよ、敵ではありませんから」

ニコリと皺(しわ)を増やしながら砲台に軽く手をやり敵意が無い事を示す


「しかし、友人様がいらっしゃるのなら前もって報告を頂かなくては困りますよ?」


身分の良さそうな格好をした紳士は巫女の前で足を止める


「シフ」



「んだコラ?」

当人では無い巫女が動かないまま口だけを動かす


(あれ?反応するジャナイデスカ)


「そのお姿、身形、、巫女様ですね」



・・・



「初めまして話はお伺いしております、 私(わたくし)はジル、通称ジルバで通っております」



・・・



無視!!


巫女は容赦無くシカトを決め込んでいる



「ふむ、誤解があると他の方に暴力を受けそうなので皆様に聞こえるくらいの声で失礼致しますね」




「今すぐに治療を止めた方が貴女の為ですよ?」




「え」




どういう意味だか理解が出来なかった


一気に鳥肌が立つのが分かる


と同時に胸を潰されるかの様な感覚が、動悸が、、



「どういう意味だ?消し飛ばすぞ」

前を、老紳士を睨み付ける巫女の顔色は真っ青である


「そのままの意味で御座います、とりあえずすぐそちらの部屋にベットがあるので場所を移しましょうか」


そう口にしながら



奪う様な形では無く



馬乗り状態の巫女を乗せたままシフを抱き抱える


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