193 少年
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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これも、聞くに堪えなかった
皆良くもまぁ平然と、では無いのだろうが
常人の俺以外は皆凄まじい生き方をしてきたのだと改めて考えさせられた
いや、それが悔しいとか羨ましいとかでは無い
腹は括った筈なんだ
自分に出来る事
転生者の俺に提案、力になれる事が無いかを考える、、のだがつい先に言葉が出てしまった
「ロゼはさ?嫌、とか、じゃないの?」
一斉に視線が集まった
「あぁ、違う! その、役目?とかを否定とかそういうんじゃなくて、単純に、、すまん解決方法なんか分かんないのに余計なお世話かもなんだけど」
「カカカ、ジンは優しいからのぉ」
赤鬼が立ち上り俺の頭をこねくり回してから新しい物を手に取る
「クックック、貧弱な人間の子供よ、、いや、子供では無いのか 人間の、、と言うか貴様は人間なのか? と言うか!今ロゼって呼び捨てにしたわよね」
幼女がベットから地に足を着け顔を覗き込みに来る
「おまっ、口調よ!ちょこちょこ思ってたけど設定ブレブレじゃねえか、あとロゼッタって言ったとしても呼び捨てだからな?」
覗き込んで来たその小さな頭を両手で鷲掴みにしてから一撫でする
口元からは八重歯がチラリと見える当主のお嬢様
ロゼッタと始めて会った小さな植物園の様な部屋は『祭壇』と呼ばれていた
そこの特殊な植物らに少しづつ瘴気を吸わせ、大気中に薄まったソレを「お嬢様が浄化しております」
と言う言葉にはつい「は?」と口から漏れた
吸血鬼だから大丈夫とかなのかは分からない、だが要するに
毒を吸う係と言う認識を受けた
ロゼッタ本人は「ゾンビパウダーを生み出してしまった代償だ、仕方あるまい クックック、我は不死身だからなぁ!」とか言っていた
次に例の『その方』なのだが、結果から言うと残念ながらお亡くなりになっているらしくもう会う事は出来ない
その能力を狙ったディーン王国に誘拐されたのだとか
シフが語ろうとしていた事と繋がるのだが
今から計算すると12年くらい前、『その方』を救出する為にシフは潜入捜査の如くディーン王国の兵士として志願した
ジルバさんの訓練が身になっていたシフは新兵の中でも頭三つ分は秀でていた為即採用
忠実で賢く真面目な性格だ、淡々と任務をこなし二年するかしないかというくらいで近衛兵(このえへい)に任命されたらしい
とある午後の日
王子バルが弓の稽古をする為狩りを行うと言う、大王ディーンも一緒だ
勿論護衛もかなりの人数がいた
だがそれは
間違いなく
逃せない
千載一遇(せんざいいちぐう)のチャンスだった
将としても噂に名高い大王
卑怯な手ではあるが不意を突く為、すぐに侍従(じじゅう)としての役割を買って出た
始めて目の辺りにする復讐相手に救出と言う目的はすでに頭から消え
気付いた時には大王の首を撥ねた後だった
怒号と共に向かって来る騎馬隊と矢の雨
森の中へと駆け込むが簡単に逃げ切れる筈も無く
ボロ雑巾の様に轢かれ、刺され、射抜かれる
だが、『頭さえ無事なら死なない』少年、彼の思考は護衛達には理解が出来ない異常な行動だった
追い込まれた少年は自ら、馬が下れそうにない崖を転げ落ちて行ったのだ
傷だらけの少年が初めて
王都の大聖堂を訪れたのはその数週間後の話だ
「ですが大王ディーンは今も生きている、そしてバル王子の幽閉されたタイミング、、まだまだ真相は分かりませんがその時からもうお嬢様と契約しておけばもっとやりようあったのかも知れませんね?」
と従者が言い出すと巫女には本気で睨まれていた
一通り話が終わった辺りでエルフが自分の服に手を掛け出した為慌てて阻止をする
そんな落ち着く暇も無く、トドメを刺す様に
聞き覚えのある声が廊下の方から聞こえる
「シエル!」
「はぁ はぁ 早く!」
ジルバが何事かと扉を開くと汗だくの、人の良さそうな神父が肩で呼吸をしている
「ゼブラ様!?」
「ぁ?なんでジジィが」
「逃げてくれ! 皆も早く!!」
只事では無い悲痛な声にエルフもぼんやりと酔いを覚ますのだが
一同含めて状況が理解出来ずにいた
神父の右手に握られた機械を見るまでは
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