147 誘導
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
12/14 7:30
「う~寒い寒い、二人共大丈夫?」
ガタガタと震えながら火に薪をくべているのは金髪にしたての青年だ
「オレハゼンゼンヘイキダ」
「大丈夫って、昨日も思ったけどキーロが一番ダメそうだよね」
エルフにも見えるオッドアイがジト目で青年を見る
「ヨル スッゴイダッコサレタゾ」
「うぐっ! 面目ない」
昨日は朝に出発し一日中歩いた
ディーン王国から森まで馬を使っていないどころか研究施設からずっと徒歩だ
大きなリュックに食料から水、簡易テントや寝袋を詰め込み
真冬、粉雪のチラつく中、慣れない外での就寝
今にも風邪をひきそうだ
自分だけであったなら
本音を言えば
すぐにでも帰りたい
のだが
「スゴイナ ソト! タノシイ」
「うん、でも、、本当に 大丈夫なのかな?」
ルイは昨日から何度もその言葉を吐き出している
それはそうだ、不安でしょうがない
【どうしたい?】と聞かれ、キーロの提案に乗ったルイとフェリス
幼い二人からしたら答えなんて決まっていた様なものだ
二人はこの森で生きて行く事を選んだ
「大丈夫だって、エルフは賢い種族だからね」
「でも、王子様を攫(さら)ったんでしょ?」
「それはそうなんだけど~、その辺の真相も突き止めないとね?」
(殺害では無く、誘拐をしたって事は目的がある筈なんだ だからこそ)
「あ!スープ温まったよ!」
(僕も上手く入り込まなきゃいけない)
「サムイカラナ キーロイッパイ タクサン クエ」
(でも)
「そうだよ、キーロいっぱい食べな?」
(単純に)
「あああ、うん食べるから、二人も食べて」
(一人だけで王子を連れて帰れるだろうか)
エルフと接触して内部に入り込む、その後に王子を救出する
作戦としては軍師のレイ様も「悪くない」と言っていたのだが実際に動いてみて分かった
(僕はどうやら体力が無い、、過信していた訳では無いのだがこれ程までかと)
しかし、この時思った彼の感覚は少し違っている
確かにキーロはそれ程体力がある方では無いのだが当たり前の話である
常人の人間、ましてや登山経験すらも無い彼には酷過ぎる状況だ
まぁ、、それだけでは無いのだが
「ドウシタキーロ クッタノニ サムイノカ」
「逆に何で二人共平気なの~?」
キーロは食事を終えても火の前で暖を取り、手を擦る
「夜みたいにフェリス抱っこしたら良いん!? キーロ 誰かこっちに来てる」
ルイが茂みの奥を見つめながらキーロの傍へと駆け寄る
「テキカ!」
「静かに、フェリスは変身して? エルフだったら目立っちゃう」
フェリスはすぐに姿を変え、三人は火の前で気配の方を見つめる
ガサガサ ガキガキ ギリギリギリ
ガチャ カシャ カシャカシャカシャカシャ
木々を掻き分ける音と聞き慣れない音
ギギギ ギギ ガチャ! ガチャン
こちらへ徐々に近寄って来ているのが分かる
そして
茂みから『顔』を出したソレ
蟷螂(かまきり)の手、それと蜘蛛(くも)の足を持つ者と目が合った
「何 あれ」
ルイが瞳を大きく見開く
「あ˝ あ˝あああああぉ きぃぃあああ!!」
その不気味な姿をした、少し高い位置にある人間の顔部分が雄叫びの様に奇声を上げる
「異 形? に、逃げるよ!」
咄嗟に火の付いた薪を放り、キーロはリュックとルイの手首を掴む
キーロの投げた火はソレの顔に当たった
威嚇だったのだが運良く目の部分にクリーンヒットしたらしい、異形は一歩二歩と後ろへ下がった
「ぎゃあ˝ ぎゃぎゃあ」
蟷螂(かまきり)の様な手首がバタバタと藻掻く様に周りの木々を薙ぎ倒す
「急いで! フェリ ス!?」
残した狼に声をかけ振り向くのだが
「グゥガァアアア!!」
バタつく異形に飛び掛かる
「フェリス! 駄目! 危」
ドン!ゴジャ ガシュ
二人が止めるよりも先に
ゴギ バギン
ブヅッ ブシャビシャア
酷い音が聞こえた後に
赤い噴水が立ち昇る
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