148 住民

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



12/14 9:00


「フェリス!」


声が森の中で反響する


「キーロ待って、ちょっと待とう」


「でも!?」


「大丈夫、だと思う」


ルイが前を遮るので足を止めた



少しすると音は止み

犬耳が茂みから顔を出す


「キーロ オレヤッタゾ」

ニコニコしながら大きな尻尾を振る


「怪我は!?」

すぐにリュックを探り、タオルを取り出す


「ヘイキダ」


真っ赤に染まった体をブルブルと振るわせると飛沫が周囲の雪を染める


「そっか、良かった、、ルイこれお願い」

タオルを隣のルイに持たせるとキーロは火の方へと向かい湯を沸かし始める



「エライカ スゴイカー!」

顔、体を拭かれながらもドヤドヤと尻尾が止まらない


「ちょっとフェリス、もう、動かないで」

やかましいとばかりにモコモコした尾を脇で挟むが先端が暴れまわっている


「凄いけど、心臓が止まるかと思ったよ 魔法が使えるとかは知ってたつもりだけど、、今度からはもう少し大丈夫そうか様子を見てね?」


「アンナノ コロスノ カンタンカンタン」


明るい声で、笑顔でそんな言葉を吐く


青年は何も返せず、只々困った様に眉を下げる事しか出来なかった




お湯が沸くか沸かないかというくらいだ


「こっちだ 誰かいるのか!?」


声がした


「テキカ!」

今度はフェリスが逸早(いちはや)く感知し構える


「待って」

構えるフェリスをルイが上から伸し掛かり

「フェリス、変身」

小声で告げる




「大丈夫か? 異形の討ち漏らしが来なかったか?」

体格の良いガッチリとしたエルフだ


「あ! えっと えぇ、そこ  に」

自然と声をかけられ、コミュ障の様に小さな声で指を指す


「まさか退治したのか!? 子供のくせに凄いな? そっちのは人間か?  みんなーこっちだ!」

男は後方にいるのであろう仲間を呼ぶ


(えー、速攻バレた!金髪にした意味!)

「あ、えぇ保護者の様な者です」


「商人か何かか む?  その狼は、、狩ったのか?」


「あぇ、いや、このこは えっと   ペ、、ペット、、で   す」

咄嗟に、モゴつきながらまさかの言葉が出た


どこに狼を飼う種族がいるのだろうか

ルイの下敷きになった血塗れの狼がジタバタと藻掻いている


「ペット、、血?怪我をしているのか?」


「ぁ、いえ あの」


「ふむ、なんならすぐそこに集落がある、美味い物でも食べて休んで行くと良い」


何かを察してくれたのかルイの頭を軽く撫でキーロの方を見る


(あれ?)

「ありがとうございます、ルイ連れて行ってもらおう 森に入ってからもうヘトヘトでして」


「大変だったな おい!早く来い!」

後ろを振り返り少し強い声で叫ぶ



「ちょっ! はぁ バカじゃん? はぁはぁ オルカに付いてけるのなんていないっつの」


今度は若い感じのエルフが息を切らしながら駆けて来る


「バカはお前だ何度も言っているだろう! 姫様がいないんだ、俺達がやらねばだろう」


「ぜぇ はぁ やるよ、やるけどさ~お前程体力無いって ん?あれま随分可愛い子だな、ははっ!姫様が好きそうだ   それと?また人間?最近多いな」

ルイを見た後にキーロをちらりと見る


「そうだな 俺はこの者達を連れて戻る、スティルは処理を頼む、それと他の連中にはこの辺を警戒させろ」


「へいへい、その火はもうちょい焚いたまんまにするから~」


「あぁ、では行こうか」


「あ、うん いこ? キーロ」


大柄のエルフが早々に茂みの方へ入り、「こっちだ」とばかりに二人を見て頷くので足早に追う






「え、ちょっとまてよ」

スティルと呼ばれた若めのエルフは異形の処理を始めようと茂みを漁るのだが


「コレ」

一気に血の気が引くのが分かる




(やったのどっちだよ)




転がる異形の残骸


ソレはとても人間業とは思えない程に


文字通り


八つ裂きに引き裂かれていた

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