112 裏技
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
8/29 15:30
「カセン!」
「ジーン」
赤鬼が公園から手を振り駆け寄る
「はぁ、どっち はぁ どうすれば良いかな?」
「方角は見てたな?」
「近くの 目立つ建物は はぁ、チェックした」
三十路の男は膝に手を置き肩で息をする
「お~やるのぉ、じゃあそのまま巫女の方に向かうんじゃ」
「あ、あぁ分かった カセンは?」
「あっしは近くのラフィに会ってから合流する、危なそうなら待っとくんじゃ」
「了解、そっちも 気をつけて」
一度深呼吸をし、息を整える
「なぁに心配いらんよ、ジンが着く前には追い付くじゃろ」
赤鬼はにひひっと笑い盛られたツインテールを一つにまとめ
二人は逆方向へと走り出す
(あのシエルが合図を送ったって事は恐らくターゲットを見つけたって事だろう)
はぁ、はぁ、はぁ
(ラフィは、、変態とかになんかされてなきゃ良いけど)
はぁ、はぁ、はぁ
(それにしても 来て 早々 じゃね~か~あ~くっそおおお)
ジンは走りながらも綺麗なジャケットの袖を折り、胸元のタイを緩める
20分は走っただろうか
ぜ、ぜは ぜは
「あ~、しんどい」
誰が聞いている訳でも無いのだがついつい言葉が出る
湿った上着となった物は既に脱いで抱えている、、そして
(後で丁寧に洗濯してやるから許せよ?)
豪快に顔の汗を拭い腰へと巻き付ける
(よっし! 確かこの辺だったはずだ 高めの、尖った 青い屋根? 何かそんなのがあったはず ん?)
ふと路地の方を目にすると二人の男がコソコソと話している
(体格はあんま変わらん、、明らかに怪しいけど、聞いてみるか)
「う、うん すいませんが!」
声を整え、胸を張り 少し低めな太い声でのチャレンジだ
「え、、なんだよ」
感じは悪そうである
「この辺りで小さな銀髪の少女を見かけませんでしたか?」
「な!? あの娘の仲間か!」
(ビンゴ)
「えぇ、そうですそうです~ ってあれ?」
男達はひそひそと耳打ちを始め
「俺は知らせて来る」
一人は逆側へ走り出し
「くっそ、折角捕らえたんだ足止めしてやる」
一人は懐から刃物を取り出す
「ええええ、ちょっと 待って!」
咄嗟にジンも距離をおき、頭を回転させる
(捕らえた? わざと? 怪我なんかしてないよな いやいやいやまずはコイツを! バルに教わった事を思い出せ)
8/27 18:40
「あああ、えっとジンさん!まずは木剣振り回すより少しお話をしましょうか」
対面であ~でも無いこ~でも無いと構え直す喫茶店のマスターにバルが苦笑いを浮かべる
「あぁ型とかある?やっぱり」
「いえいえそうじゃなく、、そうだなぁ ジンさん、基本戦うとはどういう事でしょう」
「戦う、えっと~? 懲らしめるとかやっつけるみたいな?」
少し首を捻るが当たり前の事しか出て来ない
「えぇまぁそうですね、懲らしめると言うのが無力化だとするとやっつけると言うのは制圧や痛めつける、もしくは 殺害 と言う事になりますよね」
「、、物騒だけど、そうだよな~」
分かってはいる
自分にソレは出来ないであろう事を
「コレは所謂(いわゆる)攻守で言う攻って事になりますよね? これって普通の人がちょっとやそっと何かしたくらいでどうにか出来るものじゃないんですよ」
「お、おん?」
「なのでジンさんは守の戦い方を学びましょう」
「あ~、、盾を使うって事?」
「いや得物の話では無いです、盾でも攻撃的に使う様な、、そうですね~カセンさんが盾持ったらどうでしょう?」
「あ、あぁ ハハ そうね、ぶん殴りそう」
分かりやすい説明にイメージが沸く
「そういう感じです、ラフィなんかもきっと向いてないでしょうね 守の戦い方と言うのにも二種類あります、何かを守る戦い方と自分を守る戦い方」
「単純に何かを守りながらってのは一番大変そうだよね? 会話でもそうだし」
「そうですそうです、何かを守る場合攻めに転じながらで無いと守り切れません、、あともう一つ大事な事なんですが ジンさん、魔物と会ったらもう戦おうとはしないで下さい」
「逃げられれば逃げたかったんですよ?」
「そうそう、その通りなんです これは対人戦でも言えるのですが『殺意』を持った者は字の如く加減が無いので遭遇したら逃げて下さい」
(少し気付いてきたけどこれは褒めて伸ばしてくれてる感じだよね、、嫌いじゃない)
「お、お~ん~?じゃあ俺が戦えるのは殺意の無い 人、くらい?」
「それでも相手が何か武器を所持している場合はこれまた逃げて下さい」
「戦えね~や~つ~じゃん!」
「はい、兎に角逃げる! と言う頭を持って下さい それでも戦わないといけないのであれば、武術や経験よりも」
「奥の手です」
そう言うとバルは半分にやけながら
裏技を教えてくれた
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