246 恩人
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
2/21 20:40
「コウさん、助かりました」
従者が駆け寄り、一度周囲を見回し
警戒しながら続ける
「ですがもうその手は離した方が身の為かと、、早くしないとまたニ、三発喰らっちゃいますよ?」
「あ~ん?シフ、お前が目ぇ放すからまたコイツ馬鹿な事しようとしてんだろ?もっとしっかり近くで見て、、っていてぇ、いて~ってば」
ジタバタする猫から攻撃されない様にと
小柄な巫女を天へと掲げていたのだが踵(かかと)が何度も腕に、顔に当たる
「放せコラ!隠居暮らしのてめぇが出る幕じゃねぇ、帰れ、死ね!」
「ほら、早く降ろした方が良いですって、シエル様はその辺のチンピラより狂暴なんですから」
「い˝っ、知ってるわ、お前も!本気で蹴んなって、助太刀相手に口悪過ぎだろ~ったくいてぇな~」
ゆっくりと、小さな少女?を地へと下ろし、先を指差す
「とにかく まぁ良かったな、、お前はもう少し勇気ある若い世代に感謝した方が良いぜ?」
「ぁ?」
態度も口も悪い巫女は差された方角に目をやる
「どうなるとかは予想外、分かって無かったのに勝負師だよな~、多分彼に商人としての才では勝てね~わ」
「全額持つんだとよ」
「カセンさ~ん!」
声と共に馬車が一台赤鬼の近くで止まり
若い商人が荷物と松明(たいまつ)を抱え足早に駆け寄る
「コレ使って下さ~い」
「あ~なんじゃリッツか」
赤鬼が振り向くその足元
彼女の周り、と言うよりは城周辺の床、、であった筈の石畳は雑に剥がされ酷くガタガタとした足場になっている
「おぅこれまた凄いですね~、凄い、何って言うか、球数の武器?を使ってますね?」
青年は無理に褒め、手に持つ松明でもう片方の手に握った筒へ火を灯す
「、、ですが致命傷にならないでしょうしコレをどうぞ!」
「お~? すんすん なんじゃぁ?こりゃ」
手渡された物に首を傾げながら観察し、匂いを嗅ぐ
「ええ!えっとそんな悠長(ゆうちょう)な! 急いで!急いでソレ投げて下さい!!」
「あ~、あぁ?」
言われるがままに放り投げた
その筒に大した重さは無く、恐らく対象へ当たったとして痛くも痒くも無いだろう
筒を簡単に放りながらもカセンは手を止めずに床を剥ぐ
乱れ撃ち、いや乱れ投げと言った所か
わっせわっせと懸命に投石を続けた
「カセンさん!駄目です、耳!耳塞いで!」
「んぁ?」
リッツがカセンに飛び掛かり覆い被さる形となった
その時
ボッゴオオオオオオドォオン!!
投石に混じった筒が化物であるフォメットの前で爆破した
けたたましい音を起こし
ボン!だかドカン!だか分からないくらいの耳を弄(ろう)する炸裂音
赤鬼は軽く目を回しながらも頭を振る
「ふぁ~、あぁ??なんなんじゃありゃ、しばらくはキンキンしそうじゃのぉおお~ぉお?」
舌を出し、両目を少し擦った赤鬼は標的を見上げ
にんまりと笑みを溢す
行商人リッツの手渡した筒
それは
ダイナマイト(dynamite)
現代人であれば
名前だけならピンと来る物であろう
雷管(らいかん) (わずかな熱や衝撃でも発火する、火薬を筒に込めた物)を使った
ニトログリセリンを主剤とする爆薬
[本作におけるものがブラスチングゼラチンなのか不活性物質である珪藻土(けいそうど)を使ったものなのかは不明である]
「おお!あっはっはっは、すっごいのぉリッツ、大したもんじゃぁ」
「ふおぉぅぷふ、あ、ありがとうございまふ」
無邪気に片手で抱き寄せる巨乳
それだけでは決して割に合った金額にはならない
だがついついにやけてしまう
正に
ざるを得ない状況である
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます