247 役目

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/21 20:45


「ぶあああああ、ちぃぃ!くそぉくそぉおお˝」


煙の巻く上空から汚い声が再び聞こえて来る


「お~お~お~そんな姿でまだやるんか、タフじゃのぉ」

赤鬼は溜息を吐きながら茶髪の青年リッツの前へ出る


「貴様ら!!!もう少し!!もう少しだけ今後を見通せていたのであれば『知らぬ存ぜぬを貫いておけば良かった』と悔やむ事になるでしょうね」


長い台詞を吐く怪物だが決して余裕がある訳では無い

咄嗟に爆破物を払った右腕は何処かへ吹き飛び、胸から腰付近までの『肉』が焼き爛れている

上頭部にある悪魔の様な角も片方が微かに欠け、額からも流血しているのが確認出来る


それでもまだしつこく翼を羽搏かせ宙に浮いている状態だ


「そろそろ吐いたらどうじゃ?国絡みで手~組んで~、狙いやら企みは何なんじゃ?」


「ふん!私にとってあっちの王国なんてどうでも良いのですよ!ただ、中々に、お互いに!得があっただけ、利害の一致と言うだけの事」

大臣であるフォメットは本来であれば致命傷である筈の部位を残った左手で押さえ一人喋りを始める

「私はねぇ、しっかりとこの国の繁栄に努めていたのです!私が居なかったらここまでしっかりとした基盤を作れていませんでしたよ!?」


その声は周囲を取り巻く者達に聞こえる様な演説の様にも聞こえた


「なのに!この恩を仇で返すような!!」


「けっ、勝手な事を」

「聞こえていますよ!巫女!!いつもいつも貴女は邪魔をする、だから始末しようとしたのですよ」

少し遠くにいるシエルの声にも反応を示す

「私は貴女を王都(ここ)から排除したかった、ディーンは貴女が欲しかった、だから情報を流した、それだけですよ、、まぁあちら側には別の思惑を持つ者がいるみたいですがね」



・・・



「は?」

急な、意味不明な告白に

巫女の口から素直な疑問形が出る


「私としてはディーンらとの繋がりを作ってくれたゼブラ神父、王都の希望であったゼブラ神父にはこれでも感謝していたんですよ?しかしね、貴女は別だ巫女シエル、勝手に動くでしょう?本当に邪魔で邪魔でしょうがない」


「いや、そこじゃねえんだが」


(なんであのおっさんが私を欲しがるんだ?)


「折角ここまで作り上げて来たものを、、はぁ、残念ですがもはやこれまでですね、、、私はね? 裏切り者、言えば魔族の中でのポジジョンはこれに当たるんですよ、食料であるアナタ方みたいなモノの、一つの国の重役ですよ?馬鹿な者達からすると面汚しやら裏切者やら思われるでしょう?ですがね、、魔族にも領分と言うものがあるのですよ」


「そんな、家畜みたいに、、飼育か何かのつもりだったと?」

「黙れ人間!身の程を弁(わきま)えなさい」

「ひっ」

被せて来る辺りやはりダイナマイトを持ち込んだリッツの事は目の敵にしている様子だ



「あ~まぁ?狙いはどうあれやる事はやってたみたいじゃからのぉ、不思議なもんじゃな、、人間でも同じ様な事をする輩もおるじゃろう、分からなくはない  のかのぉ?」


「、、ふむ、中々に物分かりも良い、レッドナイト 貴女は何者なのですか?  当初から貴女が居なければどうとでもなっていたというのに、ただの鬼では無いのでしょう?もしなんなr」

「ま~た話を逸らして、、理由は時間稼ぎ  か の!?」


カセンは上空へと再び投石を始める


「ちぃ、流石良く見ていますね  しょうがない」


フォメットは一度舌打ちをすると飛礫(つぶて)を躱(かわ)し


城へと向かい飛翔する


「お~立てこもりでも決め込むんかのぉ? リッツ、さっきのもう一本持っとるか?」


「えっ!お城を爆破とか、、不味くないですか!?」


「つべこべ言ってられんじゃろ?」


「いやいやいや、流石にそれは駄目ですよ!」

従者が駆けて来る


「お~?後ろの連中は良いんか?」


「えぇ、後方で暗躍しようとしている者もこの状態だと出て来ないでしょうから、念の為コウさんとバルが警戒してます」


「ほう、んじゃ、、追うか?」


「ですね」



フォメットは窓を突き破り城へと入る中


赤鬼と従者は堂々と正門から潜入する

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