31 機械

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/14 14:50


王都から北へ出るとディーン国へと繋ぐ一本道の街道がある

街道は広大で見通しが良く、行商人が良く使う通りなので危険性は無いだろう

王都から出て左手側には延々とエルフの森が広がっている



(大分時間かかっちゃったな)

キーロは一人馬車を走らせる


(まぁヒントもヒントだし   いたずらって事もあるけど、、、あ あった)

作業小屋の様な廃墟が森と同化する様にポツンと立っている



(う~ん)



(虫とかいそうだな~)



少し離れに馬車を止めるとゆっくりと廃墟へ向かう


(誘拐とかの可能性もあるし何か武器みたいな物持ってきた方が良かったのかな)

作業ズボンのポケットを漁るが一番使えそうなものでドライバーしかない


・・・


(ん でも、、あれ?  これって)






ギギギギギィ


腐った木のドアを軋ませながらゆっくりと押す



「だ、誰!?」


女性 いや、少女の声だ



「え~と、救難届を頂きまして~       ん、ん? 開かない」

ドアが開き切らずにキーロは詰まっている


「そのまま! 開けないで!!   答えなさい 救難届って何? 撃つわよ!!」


「え?」

(撃つの? 何を!?)

ギギギ

咄嗟に押していたドアから手を離す



・・・



・・・



「何人いるの?」

ドア越しに警戒する声が聞こえる


「え?一人です、怯えないで下さい、どういう状況なのか詳しくは分かりませんけど!  思っている人達とは違いますから」


「そう言って研究所の連中なんだろ!」


(研究所?)

「いや~、えっと~今両手あげてはいるんですけど見えないですよね」



・・・



・・・



「とりあえず見えるようにドアだけ開けて良いです? 開けたら動かないので   どっちにしろ人数いたら状況変わらないですよ?」



・・・



・・・



返事が無い



「あ、開けますよ~? 救難届も見せますから 撃たないで下さいよ?」

ゆっくりと腐った扉を押す


ギギギチチギチ


やっと7割開いたくらいか

影で暗く見えないが一人横たわっているのだけは分かる


(やっぱり)

「これですこれ   って言っても暗くて見えないですよね  どうぞどうぞ! それ!」

黒猫の咥えていた小さなメモを放る



「本当に一人 なんだ     何?  何の用?」


「いや、だから助けに来たんですけど」

キーロはここに危ない連中が、、少なくとも複数人いないと確信していた



「どっちみち    どうにもなんないし   あたしに関わらない方が良いよ」

今にも泣きそうな声だけが聞こえる


「馬車を止めてあるから!  とりあえずここから出よう」

キーロは一歩二歩と歩み寄ると廃墟の隙間から入る光が反射する



「え?」


少女の足を照らす光がくっきりとその姿を現す




両方の足

太ももから下が全て銀色の機械で出来ている


義足?

にしては考えられない程一つ一つの部品が圧縮され精密に出来ている様に見える




「動けないんだよ!!   もう、動かないんだこの足   気持ち悪いだろこんなの!?」

悲観的な声を上げる少女




だが




「いや!  えー!!凄い!!  ちょっと見せて!!  詳しく見せて」

キーロの探求心の方が強く、その場を白けさせる

「何?この部品   凄い、何で出来てるの? 材質の名前とか分かる?」


「え、、えぇーー」


「動きが悪いんだっけ、僕ので良ければ調整オイルあるけど?」

キラキラした瞳のまま止まらない


「何?この輝き! すごいな~これは? チップ!?とか入ってるの! 接続部とかも是非見せて欲しいんだけど!」

意図せず少女のスカートに目が行く


「いやああああ」

自然な反応だ


キーロの左頬から良い音が鳴る




ピシャアアアアン





クリーンヒットしたビンタはキーロを壁へと遠ざける







ごしゃああ



「う、うぅ いってて   あぁ!そっか  ごめんね~機械の事となると  うぅいたた」

壊れた壁からの光が伝い少女の顔がはっきりと分かる














「え?」
















「アイ リ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る