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本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/14 9:30


「難しい言葉ばっかりだけど、討伐依頼っぽいな~、、あ~ダメだ二日酔いで頭回らん」

マスターはサインを済ますと何枚かの書類に目を通し要約しながら専用の依頼表に書き写す


「なんなら僕やりましょうか?今日明日休みなので全然時間ありますし」


「おっほぉ、マジうちの店はキーロとバルで回ってんな!?  頼んだ!!」

半分ソレ目当てだったのだろう

すぐに依頼表と書類を青年に預ける


「いや、少しは躊躇(ちゅうちょしましょうよ?本来は重要書類ですし金額も乗ってるのでダメなんだと思いますけど」


「い~のい~の、利益も別になんか言われる程抜いてないし」


「はぁ、えっと? 罪人の討伐みたいですね」


「討伐? あれかな、カセンの評判でも聞いて手紙くれたのかな」


「大活躍でしたし王都以外からも噂を聞き付けて来るかもですよね、え~と、、、盗賊団とかそういうのかと思ったけど」


「ん?」


「、、女の子、相手は一人みたいですよ?」


「え~騎士団様から娘っこ一人?  ま~たカセンみたいな規格外のやつなんじゃないの~? やだよ?俺そういうの~  怖いな~怖いな~」

ジンはもうカウンターに突っ伏して目を閉じながらふざけ半分の応答をする


「人に仕事任せたと思ったら発言がもう軽いですね~   はい!とりあえず書けましたよ? 報酬はいくらにします?」


「ん~? いてて、見して  オッケーオッケー金額わ~   はああああ!?」


「そうなんですよ  どうします?」








【討伐後  生け捕り5000万  首のみ700万】









「ん~でも騎士団が頼むくらいだろ? どっちみちこんなヤバそうなのやるとしてもカセンだろな~ 巫女様達とまとめて行ってもらって安全第一ってとこか?分かんないけど」


「じゃあ、報酬等はジンさんが口頭で伝えて下さい」


「そうだね~、言うてもまぁ~    明日だろうね」

二人合わせてまだ目を覚まさない三人に目を向ける




「にゃあ」

黒猫がジンの視界に入って来る


「おぉ、そういえばそうだ  ルトなんか食うか? 待ってろ~なんか残ってたはずだわ」

ジンは立ち上がり保存庫へと向かう



「にゃあ」

次はキーロの顔の前に来る


「本当に何か言ってるみたいですね~」

頭を指で軽く撫でる



(なんだっけ? いらい おおと さたのこや たすけろ  なんだろう全部平仮名だったな子供が書いたとかかな?)



「あにゃ~ん」

再び小さなメモを咥えキーロの側に持って来る


「え、本当に頭良いな~  え~と?ルト?  キミの依頼だったりするの?」


「にゃあ」

しっかり返事をする子猫相手にキーロは少し昔の事を思い出す

(あのこ達も良く動物と喋ってたっけ ウルなんかもこんな平仮名の手紙だったなぁ、、、)




【「ちーろにいちゃんへ」】 左利きでよく書き間違えてた

「ち」 じゃない 「さ」  いや、、「さ」 でもなくて 「き」 なんだけど


帰って来る度に何回も教えたっけ




!?




「きたの   北の小屋か!!」


「にゃあ!」

返事をする子猫を抱え壁に掛けてある地図に駆け寄る


「王都の北はディーン王国  国同士を繋ぐ街道のどこかの小屋か?」


「んにゃあああ!!」


「、、、分かった  行ってみるよ」

キーロは急いで支度を整える



「ほ~れかつお節だぞ~  ってあれキーロどっか行くの?」


「この依頼、いや救難届の場所が分かったので」


「マジで? 一応助けろってあるんだし気を付けろよ?」


「えぇ、急ぎかもしれないのでとりあえず行ってきます」

子猫をカウンターへ置くと急いで店を出る



「お? 抱っこされてたのか  ほれ」

ジンは小皿を子猫の前に置き 騎士団からの書類を片付ける



(しっかしキーロもあんなに熱いやつだったっけか)



バサバサバサ



書類の束から何枚かが地面に落ちる




「ちょ  あ~あ~あ~  細かいのも入ってんのかい! キーロちゃんさてはO型ですね!? 全部目~通さないとね~」

自分の事を棚に上げながら残りの資料に目を通す


(ほぅ! スリーサイズまで乗ってんのか?詳しすぎじゃね?  163cmね~、、って写真もあんじゃん)









「え」







一気に身の毛がよだつ












「アイ  リ?」







写真にはギルドの旧建物

食事処の娘アイリにそっくりなツインテールの娘が写っている







ジンはキーロの記載した依頼表をゆっくりと片付け




我慢できずにトイレへと駆け込む


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