139 心慮

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



12/13 23:00


リッツは夕暮れと共に仕入れがあるらしく港の方へ

ラフィとバルは床に就き、アルは今日も今日とて赤鬼に連行され風呂場に

ライア隊は明日に備え  いや、夜行性のにゃんこ達の習性を利用してなのか先程遺跡の方へと向かった

食べた分のお代はテーブルに置いて行くのに酒代だけはカセンの奢りだと思っている辺りちゃっかりしている



そして



「なぁ」


巫女がグラスを傾け中身を飲み干すとこちらを見ずにそのままカウンターへと置く


(きっとおかわりの要求なのだろう)


いつもなら「ちゃんと言いなさい」の流れなのだが大事そうな話が出て来そうなので無言でグラスを変え、新しい物の用意を始める

(そう、まるで大人のお店の様にな!)


『あの一件』以来巫女は俺のいる前でも情報を隠す事無く晒してくれている、、と勝手に思っている



「どう思う」

少ない言葉で隣に座るくせ毛の従者に問う


「それだけだと候補が沢山ありませんか?」

ツッコミでは無く単純に返答に困って、では無さそうだ

「どれの事でしょう ディーン王国とエルフ、バルと破滅、破滅とキドナの三本! と言ったところでしょうか」

(アンパ〇マンかな?)


抜け目が無いと言うか流石と言うか、何をどう聞いても拾えるし説明も出来る

シフは一般の俺から見ても仕事が出来る種類の人間だと素直に思う


のだが


「めんどくせぇ、さっさと言え」


コレですよ


(上司に恵まれていないと思うのは俺だけじゃないと思うんだよな~)

新しく入れたウイスキーをロックで巫女の前に置く

内心、未だに小学生の様な見た目の少女?に出すのは気が引ける



「え~では、僭越(せんえつ)ながら、あくまで自分の中での見解ですが」


シフはちらりと俺を見て軽くだけ微笑み、話を続けた



まず

1 ディーン王国がエルフ達と争う理由が見つからない事

領地争いならあの機械王国がわざわざ森から広めないだろう、もちろんエルフ側が長のラフィを保護観察と言う名の軟禁をしたくらいで戦争を起こすなどあり得ない、争いが本当なのだとしたら他に何か重要な事柄があるのではないか


2 何故バルが『破滅』と言う事項を知ったのか、ソレを確実だと思って動いている様にしか見えない事

今までの働き、それと性格を見ても悪人には到底見えない、それどころか一冒険者である彼の善意はまるで英雄の様にも見えてきてしまう為 逆に深読みして色々と怪しく思えてしまう


3 『破滅』があるとして、バルの言うキドナが本当にターゲットなのかと言う事

これはシエルを救ってくれた事が大きい、不謹慎ではあるが、もし彼女が『破滅』を望む黒幕なのだとしたら巫女を何故生かしたのか?

次に、自然と巫女暗殺を企む者は別人となる、、それと、遺跡で出会ったドール・エバの発言

彼女が嘘を言える存在だとも思えないのでこれまた謎である


と思っているらしい



(あぁ~うん、なるほど ね?)

遺跡で俺が寝落ちした後にみんながエバと話した事はカセンから掻い摘んで聞いてはいた

だがそれよりも仲間のバルが怪しいと言われているのはなんだかモヤモヤする気持ちが生まれてしまう


とりあえず話終わったシフにもサービスとばかりにお酒を置くとしっかり目を見られ、会釈が返って来る

本当に何でもお見通しの様な雰囲気はなんだかな~とは思うが「分かってたぜ」と言う顔だけはしておく

「んな事分かってる、それだけか?」


知ったかぶりだったのだが代弁されたかの様なスピードで被せて来た巫女が従者を流し見ている

(え、これでもダメなん?)


「あれ~?お気に召さなかったですか~」

シフはジンの入れたお酒に手を伸ばし眉だけを困らせている


しかし、それが本当に困っている様子には見えなかったのだろう

気を悪くしたのか巫女は眉を細めると従者のドリンクを奪い取り一気に飲み干す


「え~」


「え~」


ジンの口からも思わず声が出たと思ったら


「え~?どうしたの~シエル~?」


「お~?飲んどるんか、あっしらも混ぜい」


良い匂いが横切り


髪を降ろした二人が湯気を出しながら巫女を囲む

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る