352 鉢合
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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「わっ! ちょっあっぶっ いっつつ、ホントに 危ないから!転んじゃうから~」
折れた方の腕では押さえる事も出来ず
風圧で帽子が飛ばされない様にと目線を下向きに変え、懸命に足だけを動かす
引かれる腕の高さ、、今の場合は『低さ』の方が正しい様な気もするが
そのせいで魔女の腰や背中は悲鳴を上げ、分かり易い物理的被害で言えば今にも肩が抜けてしまいそうな状態だ
単純な話、幼女の短い腕ではお姫様抱っこはおろかおぶった所で地に足が着いてしまう、その為この様な手法でしかない訳で、、
きっともう少しだけでも背が高かったのなら態勢を崩した瞬間に膝あたりからいって顔をやった後、トドメとばかりに猛スピードで引き摺られると言う惨(むご)たらしい絵面になっていたであろう
低身長の部類で良かった、、
いや
どこぞの赤鬼と違い今は尚更に遠慮の無い吸血鬼
そのスピード、運動能力に手を引かれながらも付いて行けるだけで普通では無いのだが
そんな事に幼女本人が気付く筈も無く
「いた! シフ!!シーフーこっち、早く早くー」
前からの助っ人を発見した
のだが
「わああロゼちゃっ」
「へ?」
「急に止まらないでえええあああ」
ビタリと止まりピョンピョン跳ねるお嬢を巻き込む形で転が、、れず
衝突と同時、咄嗟に前へ飛んだ
「ふわあああああ」
走り幅跳びが如く超加速のスーパージャンプ
一番焦るのは勿論
「え、ええええ!?」
馬車で向かって来ている従者だ
必死に馬へと鞭を打ち
一度だけ荷台を振り返ってから
「ええい、儘(まま)よ」
両手を広げ迎い入れる
チュドーン
的な音では無いのだが分かり易い人間ミサイル
少し後ろへと飛び、衝撃を殺しながら団子状態の二人を抱き込んだ
見事に三人は荷台の中へとぶち飛び
中の酒樽(さかだる)を一つ大破させてから囲いまで転がった
バキン!ゴシャァ ゴッ! やらドン、ゴヅン
と鈍い音がしていたのでしっかりとダメージが残る程の被害を受けたのもこのお方
「う、うう いっっつぅ、これはじゃれ合いの比じゃないですよ~? お二人共お怪我は無いですか?」
下敷きどころか受け身も取れず、だが衝撃を殺す為に転がり自らをクッション代わりにしたイケメン
だがまぁ、、そんな事をした所でこの物語上大して報われる筈も無く
「おおぅ肩が抜けた~から両手ぷらっぷらだよ~ あ、けど爆発とか変な臭いはしてないから薬品関係は無事っぽい~」
「シフ!事故にならなくて良かったのだわ!」
十分事故なのだが
「でもそんな事より早く、早く行かないと」
彼女的には転んだ程度
『そんな事』よりも
「ジンが危ないの! わ、私じゃ 駄目だから、駄目みたいだからシフ 早くぅ」
「、、敵は何者で、何人いらっしゃいますか?」
従者は小さな頭を撫で
空になっていた運転席へと向かう
三人が作られたばかりのトンネルへと辿り着いたのは五分も経たずの事
付近の空に対象の姿は見当たらず
馬車のまま内部へと進行
少し進むと酷い臭いが風に乗り鼻を突いた
アンモニア臭と
血の臭い
「え? な んで」
魔女の声が漏れ
「あ あぁ うぐぅうぅ」
幼女の瞳が揺らぐ
「これは、、いえ、まずは 確認しましょう お嬢様はムラサさんと此処でお待ち下さ」
「いやああ、私も ジン探すのぉ」
衝動的に従者の腕へとしがみ付き
「わっ、きゃあ」
魔女が従者を越えて逸早(いちはや)く降り、、落ちた
・・・
「せっかく嵌(はま)った腕 無事ですか?」
シリアスシーンだろうと関係無いのが良い所であり悪い所
と、言うよりも幼女の事が心配故(しんぱいゆえ)に傍で肩を抱いていた絵面的に自然とそうなると言うものだ
武術の心得がある訳でも無いので
「いったぁ~い、今日絶対厄日だぁ」
顔を守った手の平と肘周りが酷い事になっている
「ご、ごめん なさい チエぇ」
「お! おぉお初めて名前で呼ばれた気がするね! 大丈夫、これくらい!消毒しとけば治っちゃうんだから~」
周囲の血生臭さや屍骸を無視し
急いで鞄からソレと化膿止め辺りを漁る中
前方向から足跡が聞こえる
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